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Category: 狂った夏 (続)狂った夏  1/1

隼と周二 狂った夏 1

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熱を持った床で、ぼんやりとした意識が戻ってくると、後頭部の痛みに襲われた。あちこちに、擦り傷が有った。「周二くん……?、周二くんは……どこ?」顔の側にある靴の持ち主を見上げて、思わず問うた。返事はなく、先の尖った靴が横たわった隼(しゅん)の脇腹を軽く蹴った。「周二ってやつなら、お前が傷つけた車の弁償費用を作ってるんだろ?」冷ややかな声が降って来る。「親父の外車は、特別仕様のだからな。ありゃ高いぜ」かけ...

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隼と周二 狂った夏 2

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明日もう一度そこにくる約束をして、二人はやっと許された。どこか現実とは思えない、今日の出来事。その日は、周二くんと一緒に帰宅した。ぼくの手を引いて、黙って周二くんは歩く。手首には、金属の枷で擦れた薄い傷が付いていて、鈍い痛みが事実だと告げる。眼鏡をなくしてしまったせいで、ゆっくりとしか歩けないぼくの目に、ぼんやりと対向車のランプが大きく滲んで見える。「大丈夫か?」目の前にかぶさって来た級友の心配そ...

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隼と周二 狂った夏 3

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授業が終わり外に出ると、校門の側にそこだけ違和感を持った黒塗りの車が横付けされていた。 関わりになりたくない生徒達は、物言わずに通り過ぎる。押し出されるように、二人が車に近づいた。「逃げなかっただな、感心、感心」若い男がドアを開けて、乗るようにと顎を上げて促した。不安げに隼が後ろを見やる。「周二くん……」見たこともない車内のシャンデリアに、思わず息を呑んで腕に縋った隼の背中に、周二がそっと手を回して...

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隼と周二 狂った夏 4

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沢木と言う暴力団担当の刑事には、さすがの木庭組の面々も揃って頭が上がらない。「署に何本も電話が入ったんだよね~。校門前で高校生を拉致してゆく所を見ましたって。……説明してくれるか?」来客用のソファに、言われずとも深く腰を降ろし、ゆっくりと周囲を見渡した。「ご丁寧にさぁ、警察にナンバーと写メまで届いてるんじゃ、来ないわけにも行かなくてね。ほら、一応、俺このあたりの担当だから」「そ……そうっすね」「連れて...

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隼と周二 (続)狂った夏 1

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毎朝、靴箱の前で隼(しゅん)と視線を交わす。目が合うと、ほんの少し口角が上がって隼の頬が薄紅く染まる。くそぉ、昨日も今日も殺人的に可愛いぜ、隼。あの日から(俺が騙して拉致した日から)隼と俺の距離はほんの少し縮まった気がする。「おはよ」小さな声ですれ違いざまに、俺にだけ聞こえるように隼がささやく。俺には他に連れが居るので、声をかけたりはして来ない。隼といちゃいちゃするのは、放課後、部屋に連れて帰って...

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隼と周二 (続)狂った夏 2

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守役の木本に連絡して泣きを入れた。「周二だけど。この際、ブスでも年増でも何でもいいから、女抱かせて」「わかりました。自宅に呼びますか?」「頼む……」このまま放精しないままいたら、下半身がガチガチで石になってしまいそうだった。まじ、死にそう……。公園に潜み、若いお姉ちゃんが通るたびに、粗チンで猛アピールする変態野郎の気持がほんの少しだけ分かる気がする。もう顔なんてどうだっていい、頼むから俺を「イカセテクレ...

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隼と周二 (続)狂った夏 3

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ポケットに入れていたのが落ちたのだろう、足元の隼の携帯が喚(わめ)く。受信中になっているのは、「子連れ大魔神」の二つ名を持つ隼の父親、沢木からのものだった。開くと「パパ」とディスプレイの表示が点滅してた。「ひ、ひぇ~、やばっ、やばっ!お前、出ろっ」周二は木本に携帯を放り投げ、守役は任務を忠実に遂行した。(かなり嫌そうではあったが)「木本です。ただいま救急車で搬送中です。かかりつけの病院に?わかりま...

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隼と周二 (続)狂った夏 4

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隼の病室の外、ぼんやりと佇んで、俺は入室許可が下りるのを待っていた。あれから三日目、やっと沢木が逢うのを許してくれた。仕事で迎えにいけないからおまえが行けと、退院する日を教えてくれたので、すっ飛んで来たのだった。「周二くん。久しぶりだね」「隼……もう、大丈夫なのか」毎日通ってきてはいたが、ずっと隼の部屋に入るのは許されなかった。余りにひどいことをした罰だと思って、じっと(妄想の中で隼をあんあん言わせ...

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