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Category: BL童話  1/1

輝夜秘(かぐやひめ)

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昔々。竹取の翁(おきな)は十三年前、月光に導かれるようにして竹藪に分け入り、その子を拾った。幼い美童が、何故そんな場所に置き去りにされたものか、詳しいことは判らない。赤子でありながら、輝く美しさに翁は驚きその子にふさわしい名前を付けた。「珠のように、美しいのう・・・」「そなたの名は、なよ竹の輝夜(かぐや)じゃ。」翁の腕の中で、何もわからずすやすやと眠る輝夜は、男子であった。「輝夜秘(かぐやひめ)」...

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輝夜秘(かぐやひめ)・2

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竹藪で拾われたあの日より、美しいばかりに夜ごと売られる運命の輝夜だった。 男子でありながら翁に感じ易い身体に仕立て上げられて、いつか内面からも溢れでる色香をまとった美貌の輝夜の姿を運よく見たものは誰もが賞賛の声を上げた。 今宵も長い美しい艶のある黒髪をくしけずり、額には薄い置き眉を飾っている。 雅な十二単を肩口から滑り落とし、輝夜は毎夜、甘い息を哀しく吐いた。 「今日のお相手は、右大臣殿じゃ。」 翁が...

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輝夜秘(かぐやひめ)・3

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傷心の右大臣が去ったその後、輝夜は訪れるほかの求婚者と次々に閨を共にした。それぞれに無理難題を振っかけては、思いつめた彼らがまがい物を持参するのを、翁は待った。翁には、彼らが誠実だろうと不実だろうと、貢いで来る宝物が全てだった。翁の懐には、ずっしりと輝夜の一夜の代金が納められ、代わりに輝夜は重ねた衣の袖を抜く。絹の海に横たわる輝夜の滑らかな胸に、いくつもの鮮やかな吸痕を散らして、貴公子たちは感じ易...

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輝夜秘(かぐやひめ)・4

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誰かに夜ごと開かれながら、誰のものにもならない輝夜の噂は、いつか宮殿の奥の殿上人、帝の耳に届いた。どれほどの財宝を積んでも、つれなく貴人たちを袖にする輝夜というのは一体どのような者なのか。噂ではしなやかな竹のような滑らかな肌を持ち、銀盆の満月のように冴え冴えとした美貌であると言う。国中の男の内、金のあるものは一夜の代金を払い、貧しいものは屋敷の塀からのぞき、賤しきものは土壁をくりぬき一目見ようと工...

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輝夜秘(かぐやひめ)・5 【最終話】

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大納言の弟の成すがままに、転がされた真白い肌の輝夜を救おうと、翁は衛士の剛腕を振り切ろうと虚しくもがいた。翁にとって輝夜は、たまたま拾った赤子に過ぎない。運よく恵まれた美貌で、延々と金を生み出す打ち出の小槌となり、帝に捧げる貢物になるはずだった。翁は栄耀栄華を夢見て、ここまで手をかけて来たのだ。そう思いながらも輝夜に危険が及んだ時、思わず手を差し伸べた翁だった。「ええい!輝夜を離さぬか、間もなく帝...

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輝夜秘(かぐやひめ) 【あとがき】

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このお話の中に出てくる天孫降臨(てんそんこうりん)というのは、天照大神の孫である瓊瓊杵尊(ににぎ)という神が、葦原中国平定を受けて、国を治めるために天界から降臨した事を指します。日本神話の中のお話です。葦原中国というのは日本国のことなので、その国を治めるのは神の末裔である帝ということにしました。元々出雲の国取りとは、出雲族と天孫族が争ったというお話があるので、それならば和平交渉には時折確認が必要だ...

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プリンス・マーメイドの涙 前編【R-18】

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深い海の底。人魚の国がありました。王家の末の人魚、プリンス・マーメイドは、豊かな金色の髪をなびかせて父王のもとにやってきました。父王である海神に陸上に上がりたいと許しを戴きにきたのです。「誕生日の夜に助けた王子さまに、もう一度会いたいのです。」「何度来ても、その願いは聞けぬぞ。王子よ、人間のように不実な生き物は、海にはいないのだから、恋をするなら同じ人魚にしなさい。」「でも・・・わたしは、もう一度...

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プリンス・マーメイドの涙 後編【R-18】

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海の底の兄たちは、カモメたちに弟人魚の受難の話を聞くと声を無くし、遠くから愛する人の優しい愛撫にも応えられなくなった哀れな弟人魚のことを思って、涙を浮かべていました。弟人魚の願いを聞いてやったばかりに、とんでもないことになってしまったと、兄上たちは嘆きました。やがて、隣国の女装姫(男)が王子の舞踏会にやって来ました。傍に置いたプリンス・マーメイドの透明な白い肌が、羞恥から薄紅に染まるのを愛おしいと...

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