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Category: 変わらぬ想い  1/1

番外編 変わらぬ想い 1

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双馬杏一郎、17歳の春である。藩の重役、5人いる家老職の一人の娘、琴乃との婚儀が進められていた。国一番の美姫と言われる琴乃には、いくつもの縁談が持ち込まれていたらしいが、琴乃は双馬杏一郎さまをお慕いしておりますと、頬を染めたらしい。当の杏一郎はすっかり失念していたが、いつか雨の日に琴乃が神社へ詣でた折り、鼻緒を切ってお付きの者と二人で難儀していたのを、すげてやって以来慕っていたという。「父上。わたく...

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番外編 変わらぬ想い 2

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数日前、鶴千代は杏一郎に登城せずとも良いと沙汰を出していた。何を思ってそう告げたのか判らぬまま、杏一郎はじっと横顔を見つめた。「……若さまにお聞きしたかったのです。わたしは何故、お役御免になるのでしょうか。御伽小姓は、若さまの元服の年までお傍に居るはずです。何かお気に召さぬことが有りましたか?」「登城せずとも、杏一郎は父上の参勤交代に付いて江戸表へ行ってしまう訳でもない。後、二、三年もして役職に就き...

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