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Category: 夜の虹  1/2

夜の虹 【作品概要】

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「夜の虹」と言う、二つ名を持つ仙道月虹(せんどうげっこう)は、ホストクラブ「幻夜」の№1であり、辺りを仕切る鴨嶋組の組長代行でもある。男も女も夢中になる月虹の胸の中には、今はもういない大切な恋人が住んでいた。町で拾った家出少年、涼介は、いつもべったりと月虹に張り付いていたが、思いをなかなか口にできなかった。一流のホストとして何人もの女を抱き、組長代行としてシマを守る日々。いつも変わらない月虹に向けら...

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夜の虹 1

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事務所に張られた売上表に、従業員は揃って感嘆の声を上げた。「今月もやっぱり、月虹さんが断トツだ。」「一体、これだけの売り上げどうやって叩き出してるんですかね。忙しいのに。」「№2から№5までの売り上げ足してもかなわないってなんなんすかね。立場ないっす。おれ等、まじまずいっしょ。」「世辞はいい。」ふっと微笑んだ美しい男は、長い指で癖のある明るい色の髪をかき上げた。ホストクラブ「幻夜」の№1ホスト、仙道...

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夜の虹 2

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月虹が出会った時の涼介は、母親の再婚に反対して家を出て彷徨していた…と語った。貯めた小遣いを使い果たし、初めて迷い込んだ都会の繁華街の片隅で、肩がぶつかったチンピラに脅されて、残りの有り金を全てを奪われたのだと……。それは精いっぱいの涼介の嘘だった。月虹が声を掛けたとき、一目で家出してきたと見抜かれて、とんでもない男に売りとばされる寸前だった。チンピラに襲われた素人の家出少年に優しく声を掛けては、そ...

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夜の虹 3

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ヘルスの雪ちゃんに渡す、ご褒美の甘いお菓子は、いつも涼介が買ってくる。母親と二人暮らしの雪は、月に一度のご褒美に兎やの「きんつば」をねだった。月に一度と言うのは、月虹が集金に出向く日の事だ。「肉体労働しているとね、無性に甘いものが食べたくなっちゃうのよね。それに、母ちゃんもこれが好きなの。一緒に食べるんだ。」お金できたよ~♡とメールをしてきたファッションヘルスの雪ちゃんは、気の毒な境遇の女の子だっ...

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夜の虹 4

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月虹の弟分、涼介は、月虹の囲いの女たちに好かれていた。いつも集金にくっ付いてくる涼介を「国に残してきたやんちゃな弟みたい。」と、ホテトル嬢の実花ちゃんも言う。18歳ですと偽っているが、本当はまだ16歳の涼介の、丸いほっぺたをつついた。「涼ちゃんって、ほんと可愛い。月虹のこと大好きなのね。いつも一緒なのね。」「うん、好き。だからずっと一緒にいるんだ。」「くっ付いているからかしら。最近は顔まで似てきたよ...

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夜の虹 5

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仙道月虹が抱いた女は、大抵、今まで男運が悪かったのと泣いた。だがいつしか、月虹の紹介した女を抱くと、出世すると言う不思議な噂が立っていた。確かに、月虹に慰められた彼女たちは男にどん底から這い上がる力を与えた。不器量な女と客に罵られて泣いた実花ちゃんも、今やキャンセル待ちが出るほどの売れっ子になっている。誰もが羨む美貌の月虹に愛されて自信を付けた「情のある」実花ちゃんは、傷ついた男をレンブラントの描...

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夜の虹 6

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普段の軽薄な姿からは想像しにくいが、ホストの月虹にはもう一つの別の顔が有った。親父と呼ぶ高齢の組長と若頭、舎弟頭と舎弟の涼介しかいない小さな組の組長代行を担っているのは、この町では有名な話だった。それなりにちっぽけな組を支えている自負もあった。子組と呼ばれる月虹の小さな組は、シマも小さく組長は高齢で重要視されていない。潰されないためには、親組の元に月々かなりの額の上納金を修めなければならなかった。...

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夜の虹 7  

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最近、月虹は一人で出かける日が増えた。「ちょいと、出かけてくる。」「あ、おれも一緒に……」「仕事だ。」そう言われては、引き下がるしかない。姿のいいのはいつもだが、この最近はより気合を入れて良い匂いまで吹き付けている月虹だった。すっきりとした青いシトラスの、月虹に似合いの柑橘系の香りが漂う。涼介は月虹が細いコームを片手に鏡に向かう間、足元に跪いて革靴をぴかぴかに磨き上げた。「いつもながらいい男っすねぇ...

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夜の虹 8

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月虹がスナックに通い始めて、きっちり数えて20日目。涼介は族上がりの兄貴分、六郎と共に、月虹に言われた通りスナック「花菱」に嫌がらせにやってきた。段取りはついている。「店内で喧嘩して、グラスのいくつかも割ってくれればそれでいい。その後、難癖付けてママに絡んでくれればおれが出てゆくから。できるか?」「兄貴の為なら何だってやります!おれ、学芸会で桃太郎やった事あります!(`・ω・´)」「ぷっ。学芸会ってな...

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夜の虹 9

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明かりの消えた窓を、唇を噛んだ涼介が睨みつけていた。「あんな女とやるなんて……兄貴のバカ。」嬌声と共に、月虹の囲う女が一人増えただけの話だが、涼介は無性に腹立たしかった。スナック花菱のママは、苦労してきた雪ちゃんとも実花ちゃんとも違う。これまでみかじめ料の契約を引伸ばしてきたのは、結局、月虹を手に入れるために自分を高く売りたかっただけなのだと思った。月虹が女の思い通りになったのが腹立たしい。****...

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夜の虹 10

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看護師になりたかった雪ちゃんは、驚くほど手際が良かった。「きつくない?月虹。」「ああ。急に呼び出して悪かったな、雪。」「ううん。でも、このくらいの怪我で済んで良かったね。涼ちゃんは?」「あの馬鹿か。……そろそろ、来るころだと思うぞ。」「……ん?そろそろって、なぁに?」*****雪ちゃんがさらしをきつく巻いて止血したのと時間差で、所轄の刑事が覗きに来た。月虹の読み通りだった。「よぉ。仙道さん、いるかい?...

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夜の虹 11

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気の毒なくらいしょげ返って警察から戻った涼介は、六郎の背中に隠れていた。六郎のシャツの背中を掴んだまま、中々言葉も発せない。子供のような仕草に思わず六郎が「おい、涼介。一緒に詫びを入れてやろうか。」と笑いを堪えた。「兄貴……」その場にぺたりと這いつくばって額をこすりつけ、涼介は蚊の羽音のようなか細い声を絞り出した。「……迷惑かけてすみませんでした。謝って済むことじゃないと思いますが……詫び代わりに、エン...

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夜の虹 12

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月虹の初恋。それは、心の奥に深く刻み込まれていた。後悔を伴う過去の話を、月虹はこれまで、鴨嶋組長以外の誰かに話したことはない。思い出す度、今も失った者への想いが溢れ、胸が締め付けられるような気がする。「そいつの名は、沢登清介(さわのぼりせいすけ)……というんだ。」「沢登清介さん……」涼介は、じっと月虹を見つめた。*****高校生の頃、二人は出会った。出会ったのはもっと前だが、親しくなったのは高校になっ...

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夜の虹 13

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BL的性描写が有ります。ご注意ください。耳朶に甘く息がかかる。「なあ……清介。おれ等、親友だろ?」「う……ん。」「親友で恋人同士ってすごく良いよな。な、恋人同士、今から愛を確かめ合おうぜ。おれ、清介の身体が一番相性いいんだ。来いよ。」清介には、抗えなかった。生徒会長の特権を振りかざし、誰も入ってこないように入室禁止の札を下げると、月虹は本能の赴くままに清介のシャツを剥いだ。力無く拒む清介が、大勢の中の...

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夜の虹 14

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端的にいえば、惚れた清介の方が悪かったということなのだろう。好きになった相手が月虹でなければ、清介は恋人と映画を見たり食事に行ったり、二人だけの記念日には小旅行などもして、楽しい学校生活を送っていたはずだった。清介は思い悩んだ末に、月虹に想いを寄せたまま傍にいるのが辛く、逃げ道を探した。父の急な海外赴任にかこつけて、転校する道を選んだのは、好きだからこそ平気で他の者になる月虹を傍で見て居たくなかっ...

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夜の虹 15

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旅立つ前日。肩を並べて歩きながら、ふと清介は滑空する燕が雛に餌を運ぶのに目を止めた。すねたまま無言の月虹に、指して教えた。「ほら。あれが月虹だよ。巣の中に居て、口を開けて待ってるのが月虹の恋人たち。ぼくも、その一人。」「清介も燕の雛なのか?」「うん、そうだよ。ああしてね、月虹が来るのをひたすら待ってるの。あ、やっと来てくれたと思ったら、隣の雛に餌を取られたりしてね。あの雛は、ずっと……ひたすら親を待...

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夜の虹 16

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話を聞いて泣きじゃくる涼介に、月虹は胸を貸してやった。「兄貴……、泣かないでください。ううっ……」どこか、見覚えのある瞳だと思ったのはあの日の一途な清介のものだった。自分を好きだと言えなかった、おとなしい清介が、別れ際に自分の孤独を懸命に伝えた揶揄。清介の方が先に旅立ってしまった。今更ながらに、鈍感な自分に腹が立つ。目の前にいる涼介を失いたくない……と、思った。「ぴぃぴぃ泣いてるのは、涼介だろうが。」「...

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夜の虹 17

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BL的性描写があります。ご注意ください。「抱いてやる」と言われて、涼介は月虹に瞠(みは)ったままの目を向けた。何と返事をすればいいのか困惑していた。ごきゅ……と喉が鳴る。「彼岸に行っちまったら、会えるかどうかも分からないけど、おれはもう向こうでは金輪際、清介以外誰も抱かないって決めているんだ。まるごとのおれを清介にやるって決めてあるからな。今は世話になった親父の為にも、スケコマシをやめるわけにはいかな...

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夜の虹 18

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BL的性描写があります。ご注意ください。ひくひくと痙攣するように、耐えて身震いをする涼介のペニスをつつくと、月虹は何の躊躇も(ためらいも)なく口を付けた。腹を打つ涼介の持ち物は、張りつめて露を頂き零れそうになっている。今にも爆ぜそうで、涼介は泣きそうな顔を向けた。「だ……め。駄目です、兄貴。そんなことしちゃ……あうっ……うっ。」「流れちまえって、言ってるだろ。気持好いって、鳴いて見ろ、涼介。」「いやだ、...

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夜の虹 19 【最終話】

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翌日、月虹は様子を見に来た雪に、散々に叱られた。「どういうことかしら。患者さん?……昨日きちんと押さえておいた傷が、ぱっくり開いてるんですけど?」「ああ、すまん。ちょいとかる~く運動しただけなんだけどなぁ。」「寝る前に、抗生物質を飲むようにって言っておいたはずよ。それも袋のまま置いてあるのね?」「あ~……、忘れた。」「すみません!……雪ちゃん。おれのせいなんです。おれが考え無しだったからいけなかったんで...

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いつもお傍に 【作品概要】

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「夜の虹」の番外編です。仙道家に代々仕える執事、金剛氏郷(こんごううじさと)は、母親の元を離れて仙道家にやってきた月虹の教育係になっていた。今は亡き月虹の父親、仙道冬月(せんどうとうげつ)と金剛氏郷は、主人と使用人という立場を超えてひそかに愛し合っていた。冬月に託された愛息の教育と、垣間見える愛する人の面差しに、執事の胸は騒ぐ……月虹の幼いころのエピソードです。三話完結の短編です。しばらく更新できま...

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いつもお傍に 1

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それは、月虹が華桜陰学園初等科に入学する前年の話だった。6歳になったばかりの月虹は、本妻の子供よりも出来が良いとの理由で、母親から引き離されて一人、仙道本家に引き取られて来ていた。父の早逝で、母親と別れる日は早まった。あの日、母と暮らしていた小さなアパートを引き払って以来、月虹は母に会ったことはない。幼い頃から、いつかはこの日が来ることを、母親に言い含められてはいたが、たまに顔を見せる父親の家に行...

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いつもお傍に 2

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次期当主に選ばれた月虹は、執事の金剛を相手に、護身術の練習をしていた。仙道家の跡取りともなれば、誘拐の危険にさらされる確率も高い。自らの身を守る護身術は必須だった。「悪を野放しにはしないぞ!とぉっ!変身っ!」「よし、来いっレッド。」まるで戦隊ごっこの延長のようだが、金剛は月虹が日々の遊びの中で、無理なく色々なことを覚えるように苦心していた。怪我をしないように床一面にマットレスを敷き詰め、大広間に飾...

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いつもお傍に 3

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金剛氏郷の忠誠は、月虹が成長し華桜陰学園高等部に進み、初めて真実の恋を知っても変わることはなかった。奔放に育った月虹の全てを受け止めて、金剛氏郷は常に無償の愛を貫いた。恋人を失って泣きぬれる月虹に、氏郷は最後の指南をした。「月虹さま。いっそ仙道家を出て、広く世間をご覧になってはいかがですか?」「ぼくに……家を出ろと?高校をやめて?」「はい。月虹さまには、客観的にご自分を振り返る時間が必要だと、金剛は...

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いつもお傍に 4 【最終話】

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数年後、月虹が身を寄せている鴨嶋組に、尋ね人があった。「仙道月虹さんをお願いいたします。」「は……い?え~と……?」舎弟の涼介は、慇懃に頭を下げた背の高い男に、思わず反射的に頭を下げた。「お初にお目にかかります。わたくしは、こういうものです。」差し出された名刺には、仙道家筆頭執事、金剛氏郷(こんごううじさと)と書かれてあった。涼介の知らない月虹の顔を知る男だった。「兄貴……の家の執事さん?」年齢は40歳...

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優しい封印 【作品概要】

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仙道月虹の舎弟、川口涼介は月虹に出会う前は、どこにでもいる普通の少年だった。*****涼介が家を出る前、母が涼介に紹介した男は、間島求(まじまもとむ)という母よりも6歳年下の男だった優しい再婚相手と暮らすうち、涼介は初めて父親の温もりを知ったような気がしていたが、許しを求めに行った田舎の両親に、二人の結婚が祝福されることはなかった。散々に侮辱された妻を、間島求は庇い、全てを捨てて共に生きると誓う。...

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優しい封印 1

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どこにでもある話だと思う。父と離婚後、苦労して自分を育ててくれた母親が、あんたに逢わせたい人がいるのと打ち明けた。「それって、母ちゃん。再婚したいってこと?」恋をした少女のように、頬を染めて母は肯いた。「その人とは仕事先で知り合ったの。涼介の事話したら、仲よくできると嬉しいなって言うの。再婚とか堅苦しく考えないで、自分と友達になって欲しいなって。」「いくつくらいの人なの?」「母ちゃんより6歳年下な...

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優しい封印 2

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母の恋人は、間島求(まじまもとむ)と名乗った。「求でいいよ。お母さんと結婚するけど、涼介君に無理やり「お父さん」なんて呼ばせたくないからね。いつか、自然にそう呼んでくれたら嬉しいけど。」無理強いしない間島に、涼介は直ぐに懐き、しばらく経つとごく自然に「お父さん」と呼ぶようになった。父親と暮らした記憶が、ほとんど皆無だったのもあったかもしれない。涼介が何気なく初めてお父さんと呼んだ時、求は驚いたよう...

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優しい封印 3

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そんな会話を涼介が知る由もなかったが、学校から帰宅したとき、何もない部屋で母が一人泣いていたことがあった。「え?母ちゃん、泣いてんの?どうしたの?求さんと喧嘩でもしたのか?」「ああ、涼介、お帰りなさい。あのね、求さんのご実家に、ご挨拶に行って来たの。あたしは、結婚なんて形はどうでもいいって言ったんだけど……でも、あの人はご両親に別れる気はないって言ってくれたの。それがすごくうれしかったの。涼介……求さ...

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優しい封印 4

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母を送った後、作り置きのカレーで夕食を済ませ、涼介は塾へ向かった。「涼介君、帰ってきたら思いっきりゲームな!」「うん。母ちゃんがいないから、やりたい放題だな。おやつと夜食、買っといてね、お父さん。思いっきり夜更かしするから。」「よっし!今夜は寝かせないぞ~。」「なんだよ、それ。使い方を間違ってる気がするぞ。つか、おれもうすぐ受験だけどいいのかな~。」「たまには息抜きも必要だって。」二人、どこか弾ん...

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