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隼と周二 お仕置きの夜と朝の間に 1 

隼のパパ沢木から「お仕置き依頼」の電話を貰って、守役の木本は呟いた。
「さて、どうしたもんかな」
月に代わってお仕置きしてやってくれと、セーラームーン(沢木)からの電話に返事はしたものの、すっぽんぽんに剥かれてそこに固まっているガキは、正直言って木本のタイプではない。
成長途中のせいか、身体は殆ど筋肉も付いてないほど細すぎるし、手足は長すぎてバランスが悪い。
何がうれしくて、こんな頭でっかちの尻の青いガキをしつけねばならんのだ。
「ああ、面倒くせぇ!」
心の声が、ダダ漏れしてしまう。
顔色をなくして、そこに正座する周二の学校の生徒会長に、木本はどうしたものかと考えあぐねていた。
失礼しますといって、松本が入ってきた。
「あ、そうだ」
思いついて、振ってみた。
「おまえが、客の前でこいつを抱けよ。元々、おまえが初物は見せれば金になるって俺に教えたことだし」
まじっすかと、松本がいやそうに呟いた。
「なんかさ~、こいつに一生怨まれそうでやだなぁ。ほら~、頭のいいやつって、根に持つっていうじゃないっすか」
「そうか~?人によるんじゃねぇか?まぁ、言っておくけど、おまえのでかチンいきなり入れんなよ。前にやったヤツはぶっ壊れて、一ヶ月も入院させちまったんだから」
ひっと小さく悲鳴を上げたきり、生徒会長は身体を丸めて嗚咽を零すとその場にうずくまった。
床に丸くなった生徒会長は、あっさりと引き剥がされてテーブルに張りつけられた。
「や、や、やめてください。」
さすがにもう、顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
縮こまったものを、やわやわとあやすようにくすぐってやる。
顔を近づけて、木本は聞いた。
「ガキ相手に酷いことは止めてやりたいけど、止めたら沢木の旦那が怒るんだよ。お前さ、一体何やったの?」
「何って」
「沢木隼に何やったか、聞いてんだよ」
「閉じ込めていたずらしようとしました」
ははっと、二人は顔を見合わせた。
「うわぁ。命しらずだな、お前。いや、むしろ命いらずか?」
「あの……あの……沢木の父親は一体、何者なんですか?あなたたちがいう事を聞くなんて……」
何も知らないらしいので、二人は懇切丁寧に教えた。
多少大げさに色をつけて、死にたくなければ黙って言いなりになるしかない、と耳元でささやいた。
あいつは、そんな恐ろしい男だと。
満更、嘘でもない。
そして、ついに聡明な生徒会長は震えながらも自分の愚を認め、男らしく決意を固めた。

「ぼくを、す、好きにお仕置きしてください。責任は取ります」
「お~。男らしいじゃね~か。これで、何やっても愛情の延長、合意の上ってことだな」
「おにいさんは、乳臭いションベン小僧でも、潔いやつは結構好きだぜ」
くしゃくしゃと髪を撫ぜてやったら、喉の奥で噛み殺した嗚咽が零れる。
見上げた目から一筋つっと涙が伝って、柄にもなく木本は心臓が跳ね、そんな自分に一瞬動揺した。
木本は、思いがけず泣きわめいたりしない少年を見直していた。
「で、お前、名前は何て呼ばれたい?人前に出るならションベン小僧にも、呼びやすいあだ名付けてやらねぇとな。Bitchてのはどうだ?どうせ、犬みたいに突っ込まれるんだし、似合いだろう」
今の状況が信じられないといった風の蒼白の顔に、悲しい決意を浮かべ、涙ながらに彼は語った。
「雌犬なんて嫌です。あと、ぼくの名はションベン小僧じゃなくて、樋渡蒼太(ひわたりそうた)です」
木本の表情がふいに柔らかくなった。
「蒼太ってのか。俺は、木本というんだ」
「木本さん?」
「蒼太か。いい名前じゃないか」

木本は思わず、蒼太に腕を回して浅く口を貪った。
先日失った恋人と同じ名前だと聞いて、ほんの少し見る目が優しくなったかもしれない。
囚われのこちらの蒼太は、思ったよりも柔らかな物腰の木本に、必死で救いを求めていた。
「き、木本さん、お願いです。家に帰してください。あの……ぼくは、普通の高校生です」
「あいにくだがな、普通の子は何も知らないガキを攫って、手篭めにしようと思いついたりはしないのよ」
「魔がさしたんです。ぼくは沢木のように、華奢でも綺麗でもないし、おっしゃるような、お金をもらえる見世物にはならないと思います」
「必死だな」
くすくすと、木本がわざと冷酷に見えるように、片方の口角だけを上げた。
「これが意外に、普通ってのがいいらしいんだよ。おまえは、結構可愛い顔をしているし。世の中、綺麗なものを汚してやりたいって歪んだやつは、ごまんと居る」
唇をかんで、俯いてしまった生徒会長、樋渡蒼太(ひわたりそうた)は悲壮な顔をし全身をかたかたと震わせていた。
どんな嘆願も無意味なのだと、理解したが、あまりに非日常的すぎた。
「舌先三寸で乗り切ろうとするところ、俺に似てるな、お前。諦めて覚悟決めるんだな。しっかりと「愛」を教えてやれって言われたんでね」
落城した城から落ち延びる途中で囚われた、自尊心の高い城主か若様だな……と、いじめっこ木本の頬が緩む。
木本は陵辱されても泣くまいと歯を食いしばって耐える姿に弱い。
優しくしてやり、相手が心を許したその土壇場で腹黒く裏切って、悲嘆の余り絶望の涙がほろほろと溢れるのが大好きという、根っからの困ったサディストさんだった。
「木本さん、あの、お、お金で何とかなりませんか?」
「ならないねぇ。仕置きは迅速に、的確に行うのがセーラームーン(沢木)の決め事だからな」

そんな会話をしながら、いつしか一糸纏わず剥かれた生徒会長は、木本の腕の中で、とうとうしくしくと鼻をすすって泣き始めた。
木本は、この光景を楽しんでいる風だ。
「ぼく……本当のことを言うと、こういう事って初めてなんです。沢木の事だって、ちょっと困らせてやろうと思っただけで。最近、いつも沢木は同級生の方ばかり見てたから、一人がつまらなくて……」
「やきもちやいちゃったのか、お前。」
「はい。沢木は、入学したときから頭がいいだけで付き合い下手のぼくを慕ってくれて、だから、いつかは上手くいくと思っていたのに……許してください」
「謝る相手が、違うだろう?」
「うっ、うっ。木本さん……」

木本は、実は何の経験もないらしい樋渡蒼太の髪を掴むと、顎を上げさせた。
「誰も、お前を虐めたりしないよ。うんと大切に可愛がってやるから、蒼太、お前の初花、貰うぞ」
ふる……と、蒼太の唇が震える。
さすがに利口な生徒会長、これから自分が散らす初花の意味は知っていた。
男同士、身を繋ぐことの不自然さに恐怖していた。
「こ、わいです。木本さん。や、優しくし、て、んっっ」
「駄目だ、俺。本気でやっちまいそうだ、蒼太。」

木本はションベン小僧とバカにしていた年代の少年に、惹かれそうになっている。
タラシで有名な木本が、失った恋人と同じ名前に惹かれるのは無理もなかった。






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