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Category: 大人の階段上ります  1/1

隼と周二 大人の階段上ります 1

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いつも朝、下駄箱のところで周二くんと視線を絡ませる。通りすがりに、ぼくは小さく周二くんにだけ聞こえるように「おはよ」とささやく。周二くんは片方の口角だけを上げて、ほんの少し精悍な顔を歪めて微笑とも皮肉とも付かない表情を浮かべる。それが毎朝の日課だった。でも、その日は違っていた。通りすがりに、いつもどおり小さな声をかけると、乾いた返事が返って来た。「今日、来なくていいから」「えっ?」返事があったこと...

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隼と周二 大人の階段上ります 2

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ぱたぱたと、生徒会長の後を追った。ぼくは生徒会執行部の書記を務めている。書記は余り話をしなくてもいいから、先生に薦めらるまま仕方なく引き受けた。ぼくは一応数字に(だけ)は強いので、生徒会の予算に関しては執行部の誰よりも詳しい。だからだろうと思う。先生方がおっしゃるには、生徒会長は我が校始まって以来の知能指数で、飛び級可能なほど頭脳明晰らしい。全国模試もトップクラスの、類希な優秀な生徒会長だそうだ。...

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隼と周二 大人の階段上ります 3

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非力なぼくは、力の限り抗っても、あっさりと陥落して上着とシャツを失った。解かれた二人分のネクタイでカーテン止めに、十字になるように張り付けにされた。学校でぼくは何をされてるんだろう。尊敬する先輩に、あっさり裏切られたような気持で悲しくなった。「……なんで、こんなこと?」先輩は、ぼくに周二くんと一緒にいた女の子がしていたような事をさせるの?女の子の代わりをさせるの?だから、こんな風に扱うの?先輩も、獣...

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隼と周二 大人の階段上ります 4

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夕陽の射す熱い部屋。心の底から、内に沈められた重く暗いものがふわりと浮かび上がろうとする。これに囚われてしまったら、ぼくは心の内側にある白い部屋の住人になって、もう周二くんのいるこっちの世界には戻れない。幼いぼくは心も身体も傷ついて、誰もいない音も意識もない世界に住んでいた。内側から鍵をかけて、全てを拒絶して、膝を抱えて長い時間そこで暮らしてた。何度も何度も部屋の外で泣きながらパパが呼ぶから、余り...

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隼と周二 大人の階段上ります 5

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長いキスの後、周二くんはちらと時計を見た。「あ~っ、やべっ。約束の時間があるから、行くわ、俺」「あ、待って。待って」ぼくを手放した、周二くんの腕がふわりと羽ばたいて離れた。庇護を求める雛鳥のように、思わず声が出た。「いっ、いっちゃ、やだっ!」「え?隼?行っちゃいやって?まじか~隼~っ!!くそぉ~っ、たまんねぇっ!」用事があるのに、わざわざ引き返して助けてくれた周二くんに、ぼくは甘いわがままを言った...

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