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隼と周二 大人の階段上ります 4 

夕陽の射す熱い部屋。
心の底から、内に沈められた重く暗いものがふわりと浮かび上がろうとする。
これに囚われてしまったら、ぼくは心の内側にある白い部屋の住人になって、もう周二くんのいるこっちの世界には戻れない。
幼いぼくは心も身体も傷ついて、誰もいない音も意識もない世界に住んでいた。
内側から鍵をかけて、全てを拒絶して、膝を抱えて長い時間そこで暮らしてた。
何度も何度も部屋の外で泣きながらパパが呼ぶから、余りに辛そうに呼ぶから、あの日ぼくは仕方なく白い部屋の扉を開けたんだ。
「隼!」
扉を開けたのは正気に戻った時だと思う。
最初に視界に入ったのは、誰よりも強いぼくのパパが、顔をくしゃくしゃにしてぼろぼろ泣いている顔だった。
髭は伸びて頬はこけて、まるで「おばけ」みたいな酷い有様のパパの姿だった。
「周二、くん」
扉の向こうに周二くんの顔を見つけて泣いたのは、今度はぼくだった。
「あ~、もう信じられない」
周二くんは、呆れていた。
「何だって、こんな襲ってやるオーラ全開のヤツに、簡単にやられそうになるかな~」
人の耳には聞こえない犬笛のように、ぼくの声の周波数に周二くんは反応した。
らしい。
「隼、俺のこと呼んだろ?そんな気がした」
「うっん。周二くん、たすけ、てって……」
げしげしと、周二くんがしつこく足元の会長を蹴っていた。
周二くんの渾身のとび蹴りの下敷きになって、生徒会長は『げっ!!』と言ったきり、かえるさんになって這いつくばっていた。
ぼくは、周二くんの懐の中でよしよしと宥められながら、涙にくれていた。
「だって……ふっ……えっ……えっ、周二くんが、放課後来な、くていいって、言ったから。だから、放課後、急に暇になってっ。ひ……っく。しゅう、じくん、いじわるだっ……たよ」
周二くんは何だかすごくうれしそうな顔になって、しゃくりあげるぼくをもう一度ぎゅうっと抱きしめた。
「そっか。俺が来なくていいって言ったから、隼は悲しくなったのか」
「う、んっ」
「独りがさびしかったのか?」
「んっ」
「隼は、そんなに俺が好き?ん?」

見上げた目に優しい顔が滲んで見えた。
手を伸ばして返事の代わりに、頬を寄せてこすりつけた。
この気持は、きっとパパを「好き」とはちょっと違う気がするから、直ぐに返事が出来ない。
先輩の手は嫌だったけど、周二くんの長い指はとても優しいからぼくに、さわって。
頭を寄せた周二くんが、縋ったぼくの胸にある薄い突起に気が付いて、きゅと摘んだ。
「あっ」
何もないけど周二くんが舐めると、ぼくのおへその辺がぞくっとして、ちょっとぷくりと大きくなる気がする。
女の子じゃないから、触っても平気なはずなのに乳首、触られると、変、変になるんだよ。

「あんっ」
「おっ!隼のぴんくのちっこいやつ、ちょっと背伸びしてるぞ。可愛い~!」
周二くんがやわやわと、ぼくのおちんちんの裏側で小さく縮こまっている青い胡桃を揉みあげた。
「そうっと優しくするから……ね?」
踏まれて気絶している生徒会長を枕にして、周二くんがぼくを注意深く横たえた。
ぼくは天蓋つきのベッドで眠るお姫さまみたいに、両手を胸の上で組んで王子さまの口付けを待っていた。

パパ。
ぼくは、覚悟を決めました。
とうとう大人の階段を上る時がきたみたい。
独りで大人になるぼくを、許してね。

「んっ、んっ……」
周二くんが、ぼくに深く舌を差し入れて来て、ぼくはそれをおずおずと追いかけた。
舌先がわざと焦らすように、口腔内を逃げる。
頭の後ろを大きな手で支えられて、ぼくは両の手を周二くんに回した。
銀糸が顎に細く伝う、初めて求めた大人の接吻。
「キスって、甘かったんだね」
あぁ、どこかで、赤色灯が回ってる。



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