ハートに紅いリボンをかけて……(前編)
人と関わることが苦手で、口下手。年齢よりも幼く見える高校生。
父親(沢木淳也(じゅんや)の職業は刑事、溺愛されている。
同級生の木庭周二と恋人同士。
ひどい近視と乱視で、ダサいメガネをかけているが、素顔は絶世の美少年。
過去に誘拐されて、心身に深い傷を負った。
木庭 周二(こば しゅうじ)
沢木隼と子供のころに出会い、ずっと思っていた。高校で出会い、昨年秋にやっと恋人同士になった。
隼の父親に、いつも恋路を邪魔されている。
スカウトされて、モデル業も行っている。木庭組4代目だが、組は今実質木本という男が才覚をふるっている。
隼には甘く、いまだに一線を越えられない、不憫な高校生。
朝、鏡に向かって身支度をしながら、どこか思い詰めた顔の隼に気が付いた沢木が声を掛けた。
「どうした、隼?何かあったのか?出かける前に暗い顔してたら、幸せが逃げるぞ。」
ん~と少し困ったような顔を向ける。
「バレンタインデー、どうしようかなって思ってるの……。パパの事件の時も、周二くんに、いろいろお世話になったでしょ?ぼくね、きちんとありがとうって言ってないから、お礼の気持ちを伝えたいの。」
「ああ、そうだな。あいつに世話になったよな。」
「うん。どんな時でも、漢(おとこ)には、けじめって必要だと思うもん。親しき仲にも礼儀ありだよね。」
「そうか。隼は、そんなこと考えてたのか。大人だなぁ。」
「うん。お礼の品物って何がいいかなぁ。」
隼の父親、沢木は、事件に巻き込まれて大怪我をし、先日退院したばかりだ。
失踪している時も、入院している時も、隼は周二の家に厄介になっていた。周二の家は極道で、正直、沢木に引っかかるものがないとは言えないが、有事の時には、周二なら命がけで隼を守るだろうと言う確信があった。
なんだかんだとうるさく言いながら、沢木は常にまっすぐに隼を見つめる周二を信頼していた。
「で、野獣は、隼に何か欲しいと言って来たのか?」
「ううん。それがね、周二くんは何もいらないって言うの。ぼくが何処にもいかないで傍に居て笑っていればいいって。」
「へぇ。」
野獣に似合わぬ殊勝な物言いに、沢木は吹きそうになった。年がら年中、隙さえあれば隼の貞操を狙っているくせに、どういうことだ。
「この前のバレンタインデーにね、ぼくチョコレートで守り本尊を作ったんだけどね、周二くんは勿体無いからって、冷凍庫に入れたきりまだ食べてないんだよ。その時にね、指先に怪我したからもう怪我しないでくれって言うの。チョコが食いたけりゃ、俺が作ってやるからって。」
「そっか。愛されてるな、隼。」
「でもね、ぼくは周二くんに何かしてあげたいなって思うの。ありがとうの感謝を込めて、周二くんが喜ぶようなことってないかなぁ……」
パパ沢木の悪戯心に火がついた。
「そうだなぁ。あの野獣が喜びそうなことと言ったら、あれしかないかな。」
「……あれ?なぁに、パパ。」
沢木は隼の耳元に、何事かささやいた。
「きゃあ~。」
「ぼくは、花束じゃありませんよ~。でも、周二くん、喜ぶかなぁ。」
「泣いて喜ぶだろ。」
隼は花のように笑う。
少女めいた隼の見た目は相変わらずだったが、季節が巡る度、ゆっくり成長していた。
*****
放課後、隼はいつも通り周二の部屋で「めのほよう」の仕事でまっぱになっていた。
実際は、隼に借金など無いのだが、周囲も面白がって返済しろと炊きつけ、隼は毎日周二の前で「めのほよう」という名のアルバイトにいそしみ上着を取った。
説明しよう。(`・ω・´)
……「めのほよう」と言うのは、周二の父親の黒塗り外車に、隼が自転車で傷をつけたというのが始まりだった。
その後、もう手に入らないと言う、高級なトラさんカーペットをちびって汚し、だめにしてしまったから、そっちの弁償もすることになっていた。
責められた隼は、父子家庭だからパパに心配かけたくない、自分でしでかしたことには自分で始末をつけるのが漢(おとこ)だからと自分で全て弁償すると決めたのだった。
だから毎日、放課後は隼を観賞する「めのほよう」のアルバイトの時間になっている。
裸になって、手錠と首輪を嵌められて、悩ましい姿でベッドサイドにつながれている。
松本は、時々目で見るだけじゃ分からないからと言って、周二の目を盗んでは隼をさわさわと「仕方なく」検品したりもする。
借金が払えないときは、隼はおちんちんを「売る」ことになっている……らしい。
隼は周二が最後には丸ごと全部、おれが買い取ってやるからなという、適当なでまかせを信じていた。隼は盲目的に周二の事を信じていたし、周二も隼をどんなことが有っても手に入れたいと欲していた。二人には深い絆が有った。
そして今日、隼は頬を染めて周二の耳元にささやいた。恋人は甘い予感に揺れる。
「周二くん。あのね、バレンタインデーには、ぼくにリボンを掛けてプレゼントします。」
「え?!まじっ?」
「まじでっす。パパもそうしろって……」
「ついに、くそ親父が認めたのか……?そうか、とうとうこの日が……」
ぶ~……
「きゃあ~っ。周二くんが大変。」
隼のまっぱなど、毎日見慣れているはずなのだが、想像しただけで周二は弧を描くほど大量の鼻血を噴いた。角度を変えれば七色の虹が見えたかもしれない。
とらさんのカーペットは、すでに何度目かのクリーニングでよれよれになっていた。
|゚∀゚)お、お久しぶり~ふでっす。
此花、生きております。
沢山のコメントをいただいたり、お返事したり、hpのお片付けしてたりしたら、あっという間に時間が経ってしまって今頃になりました。
隼と周二のバレンタインです。
お楽しみいただければ幸いです。
この前、パソコン前でおしょうゆをこぼして、USBが香ばしくなってのですが、実はペンタブもおかしくなってたみたいです。。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。←自分に腹が立つ~~~
なので、新しいのを買いました。まあ、小さいのだし、そんなにお高くないけど……一万円ちょっと……本代が飛んでゆきました。
気をつけよう、このちん……あんぽんたんすぎ。(´・ω・`)
大河の八重の桜にきゅんきゅんしています。会津のお話書きたいなぁ……
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