ハートに紅いリボンをかけて……(後編)
艶めかしい肌は、発光するかのように薄く染まり、ほのかに熱を持って周二を誘っていた。
見えそうで見えない部分のリボンをそっと、指でずらしてみる。リボンの下で無防備な隼のピンクのぞうさんが、ほんの少し頭をもたげて恥らっていた。そこにも細いリボンが掛けられていた。扇情的な姿に周二のマンモスも思わず雄たけびを上げる。
ぱお~……
「や……ん。周二くん、あんまりじっと見つめないで、恥ずかしいよ。ここは、後で……二人っきりの時に解いてね。」
「隼。いいのか?とうとう、腹を決めたのか?高校卒業するまでぱんつ脱がないっていう純愛宣言、お終いにしてしまってもいいんだな?」
「ん……。」
周二の腕の中で、首筋まで桜色に染まった隼がこくりと肯いた。
予期せぬ隼の積極的な行動に、思わず周二の喉がごくりと上下する。
「いつか、周二くんにぼくをあげたかったの。ふしだらだけど……ぼくを貰ってね。」
たぶんそこは、「ふしだら」じゃなくて「ふつつか」だと思うけど、ふしだらな方が好きだぞ、隼。
ピンクのぞうさん以外の紅いリボンを解いて、散々弄った後は、腕によりをかけて煮込んだ紅い麻縄でぐるぐる巻きにしてやるよ。奥の和室の鴨居にぶら下げて、おれの気が済むまでしつこく腰を打ち付けてやる。背後から弄ってやるから、ゆらゆらと片足だけで切なく喘いで見せろ……。しつこく舐めまわした胸がてらてらと、月明りを弾く。
うっ血した紅い乳首は、張りつめてじんじんと疼き、初潮を迎える前の少女の胸のように凝っていた。
「い……やぁ。こんなの、いや。周二くん……優しくしてくれるんじゃなかったの?おっぱ……い、擦れて痛いよ……。息も苦しいよ……。やだ……あぁ……お願い、リボン解いて。イカせて、イカせて……あぁ~ん、達きたいよぉ~……」
「馬鹿。じんじんするのが良いんだろ……ほら。足下ろしてやるよ。白くなっちゃったな。」
「……あ、あぁ……」
血が通い始めた足の痺れが甘い疼きとなって、隼を苦しめていた。固く勃ちあがった小ぶりな隼の持ち物がリボンの固い縛めに苦しめられて震えていた。
ひくひくと身悶えしながら、崩れ落ちた隼が周二の胸に縋る。濡れた頬を転がる涙を吸ってやった。周二は隼の膝に手を掛けた。
「隼……イクぞ。」
「イカせ……て……周二くん。イキたいの……」
妄想三昧、周二至福の一時だった……
*****
そして、バレンタインデー当日、周二はリボンを掛けて現れた隼に絶句する。
するりと脱いだコートの下から現れた紅いリボンの隼……を見た松本が叫んだ。
「おっ、ねんね、ねぶた祭りか?」
「寝……?寝ぶた……ってなぁに?」
「え?たすきがけして祭りで踊る跳人(はねと)……だろ?ラッセーラって山車の横で跳ねる奴。え?俺、何かいけないこと言った?」
隼はくるりと視線を巡らせて、じっと周二を見つめた。
どうせ、こんなオチがあるだろうと密かに内心思っていた周二だった。あのくそ親父が、リボンを掛けた隼を自分に素直にくれてやろうなどと思う訳がない。
リボンを掛けた姿を想像して散々盛り上がった周二の前に、現れたのは文字通りきりりとたすきをかけた隼の姿だった。
周二は長い指を伸ばし、そっと隼の丸い肩に触れた。
「赤いたす……リボン……似合ってるよ、隼。」
「ほんと……う?」
「うん。超和風なんで驚いたけどな。裸エプロンも悩殺的だけど、このたす……リボンもきりりと新鮮でいいな。凛々しくて俺は好きだぞ。」
「好き……?」
「ああ。隼の漢らしさが引き立つもんな。」
「(*⌒▽⌒*)♪周二くん~」
隼も周二に手を伸ばし、そっと頬に触れた。
「バレンタインのプレゼントだよ、周二くん。これまでいろいろ助けてくれてありがと。ぼく、周二くんのことが大好きだよ。ちゃんとお礼の言葉を伝えたかったの。ぼくも甘えてばかりで居ないで、強くなるから待っててね。」
「そっか。だけどな、俺はいつだって、隼が本当は誰よりも強いって知ってるぞ。出会った時から隼はいつだって逃げないで、どんな時も勇気振り絞ってるだろ?」
「ん……周二くん。ぼくは覚悟を決めました……」
見上げる隼の瞳は綺羅と輝いて、周二は思わず、じわりと熱を持った自分の暴れん棒に意識をやった。悩殺的な紅いリボンを想像していたせいで、今一つ固く芯を持っていないアフリカ象が覚悟を決めたと言う隼の声に反応する。
「……やっと、この日が来たな、隼。」
「周二くん。」
ここで、邪魔が入らぬわけがない。
「ちょっといいっすか、周二さん。沢木の旦那から何やら木庭組宛てに、荷物が届いてるんですが……開けてみますか?」
木本はちらりとたすき掛けの隼を見て、爆笑しそうになったがさすがに耐えた。苦虫をかみつぶした顔で段ボールを開封する。
「東北三大祭りへのご招待、この夏、あなたも参加してみませんか……?なんすか、これ……ああ、ねんね、ねぶたの跳人の格好したのか。」
「あ、ばかっ。木本っ。」
一世一代の、「裸にリボン」が、どうやら的外れと知った隼は、しゅっと漢らしく紅い襷を解いた。
「待てって、隼!」
「なぁに?笑いたければ周二くんだって笑ってもいいんだよ。どうせ、は、跳人だもん。ぼく、お祭りの格好したんじゃないよ……周二くんにリボンを掛けたぼくをあげたかったんだよ……もう、いいもん……周二くんのあんぽんたん。」
「違うって!バレンタインも祭りのうちだって!」
「やっぱり、そう思ったんだ……」
「……あ、間違えた。木本、ドア閉めろっ!」
わたくし、実家に帰らせていただきます~と、お決まりの台詞を残して隼が消える。
「待てって!隼~~!!」
リボンとたすきを同列にしている隼もどうかと思うが、どうやら隼の中ではちょうちょ結びはすべてリボンと呼ぶらしい。
「待てって、言ってるだろ。」
抱きとめるのに成功した周二は、くんと肌に鼻を擦り付け、恋人の甘い匂いを嗅いだ。
「なぁ……。俺は、隼がいるだけでいいんだよ。お前が思ってるよりもずっと、俺は本気で隼の事好きだぞ。紅いリボンもセーブルのコートも何もいらない。俺には中身が一番大切なんだからな。」
「周二くん……。」
「機嫌直せよ、な?隼と一緒に食べようと思って、マンモスイチゴのケーキ買ってあるんだ。せっかくのバレンタインなんだからさ、恋人らしく一緒に過ごそうぜ。」
「ん……。」
マンモスイチゴに懐柔された隼は、蕩ける笑みを周二に送り、恋人の首に手を回した。甘い予感に満ち足りて隼を抱き上げた周二の眼に、様子を見に来た沢木が入る。
「よぉ。」
「げっ。」
「ちっ。つまんねぇなぁ。揉めなかったのかよ。」
「くそ親父……毎回、飽きもせず邪魔ばっかりしやがって。今回は隼になんて言ったんだよ。」
「俺は、お前が喜ぶと思ったんだがなぁ。裸にリボンは気に入らなかったか?まぁ、リボンは俺が用意したんだがな。」
「やっぱり~。気に入るも何も、たすきがけじゃねぇか。中身が隼じゃなかったら、ふざけるなってぶちのめしているとこ……はっ!」
「もういいよっ!周二くんのばかぁ――っ!わああぁ~~~ん……」
大爆笑の沢木を他所に、深く傷ついた隼はそのまま周二の部屋にこもり泣き伏してしまった。
「相変わらず、大人げないですねぇ、沢木さん。」
木本が呆れて、思わず口にしてしまった。
「ふん。本気かどうか、確かめてるだけだ。これも親の義務ってやつだな。大事な一人息子を、赤の他人にそんな簡単にくれてやってたまるか。」
「周二さんも、とんでもない恋人を持ったもんですねぇ。何だかあんまり可哀想で、木本は笑えなくなってきましたよ。」
泣き疲れて眠ってしまった隼を抱き上げた沢木は、頭を抱えてしょげかえった周二に声を掛けた。
さすがにちょっと気の毒になったらしい。
「おい、野獣。ホワイトデーのお返しは、ちゃんとしろよ。……つか、仲良くしろよ。あはは。」
がんばれ、周二。
相変わらずの二人でした。(*⌒▽⌒*)♪
パパ沢木も相変わらずです~
ヾ(。`Д´。)ノ周二「こら~~~!!此花、てめぇ~っ!」
(*/∇\*) キャ~此花「妄想の中で、いい感じになったからいいじゃん~」
(´・ω・`) 隼「ぼく……笑われて、ちょっと悲しかった。」
ナデナデ(o・_・)ノ”(´・ω・`)周二「泣くな、隼。まじで可愛かったぞ。」
(〃ー〃)隼「ほんと……?」
(`・ω・´)周二「世界で一番可愛いとおもってる。」
(〃゚∇゚〃) 隼「ぼく、目指すのはかっこいいだけど、周二くんが可愛いって言ってくれるのは好き。」
(ノ´▽`)ノヽ(´▽`ヽ)「隼~」「周二くん~~~」
( -ω-)y─┛~~~~パパ沢木「やれやれ……」
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