番外編・桃花咲く里の二人
夜明け前。
二人は抱き合って、羽二重の褥の中にいた。
明け方の冷える空気に目覚めた義高は、傍らの大津の中心に手を伸ばし、布の上から優しく弄った。
薄い夜着を通して、とくんと心の臓の跳ねる音が聞こえる気がした。
息を詰める大津の首筋に、義高はそっと唇を当て囁いた。
「起きているな?大津。まだ、わたしが怖いか?」
小さく頭を振ったのがわかった。
手を伸ばしたことは以前にもあったが、義高は大津に泣かれている。
二人で暮らすようになった最初の夜、一糸まとわず寝間に現れた義高を見て大津は顔色を変え、ぺたりとへたりこんだ。
「どうした?大津。」
涙ぐんだきり、頭を振って何も言わない大津を励まして、口を割らせた。
「言いたいことが有るなら、言ってごらん?大津が泣くとわたしも泣きたくなるよ?」
「……義高さまはきっと怒りまする……」
「怒ったりするものか。わたしは大津が何より大切なのだから。」
しばらく俯いて居た大津は意を決し、涙の理由を口にした。
「そ、そのように大きく陽物を膨らませた義高さまは、大津の好きな義高さまじゃないような気がするの……です。………こ……わい……」
「怖いか……そう言われても、こればかりはなぁ……。よしよし、今宵は何もせぬ。こうして懐に抱くだけにしよう。それならばよいか?」
「……はい。」
さすがに、その時は怖いと言われて義高もかなりへこんだ。
密かに甘い時を過ごすつもりで、自ら寝間に器に入れた丁子油まで持ちこんで隠していた苦労も水泡に帰した。
涙の跡を残した胸の中の大津が眠るまで、義高は背中をさすり小さな赤子にするように、寝物語をし歌を歌った。
あれから早、数か月も経つ。
若い義高の我慢は、限界に来ていた。
*****
覚悟を決めた大津は、義高を見上げ凛々しく言い切った。
「……お、大津も、いつまでも子供ではございませぬ。れっきとした大人の男子なのですから……男色の嗜みも、すでに習い覚えて知っております。」
「お?そうなのか?誰かに教えを乞うたのか?」
「あの……義高さまが国許からお連れになった、秋葉さまが色々お教えくださいました。それで、あなたは何もせずに、すべて義高さまに任せておきなさいとおっしゃいました。」
「爺が……?そうか。では……試してみようかな。泣くなよ?」
ぴらと裾をめくれば、覚悟を決めたはずの大津から、きゃあ~……と小さな高い声が漏れた。六尺は気恥しいからと、今も大津は子供の着ける布の少ないもっこ褌でいる。腰で結んだ紐を解けば、薄い下草の中からささやかな男根がふるりと芯を持ち、勃ちあがり始めていた。
義高は先端に軽く唇を付けるとずりあがり、大津の背中に回していた手に力を込めて、細い身体を巻き込んだ。
桜色の二枚貝のような唇を交互に弄り、侵入して舌を吸い上げる。
「ふ……っ、義高さ……ま。」
僅かな喘ぎが、義高に火をつけるなどと思いもよらない大津は、口を貪られながらただ身を預けて義高の胸にかきついている。しかし、童女のようであった大津が髪を切り、見かけだけは細い少年のようになっても、たかだか数か月で中身がそうたやすく変わるはずもなかった。
義高に真っ直ぐに向けられる想いも変わらなかった。
行き場のない寂しい心を抱えた大津を抱きしめて、今のままで良いと義高は告げた。
男子であると分かっても、義高の眼差しは変わらなかった。だから、拙くとも今日こそは応えたいと、大津は健気に決心をしている。
義高に国許から付いてきた老人も、大津の余りの無知に半分呆れながらも指南してくれた。
義高の唇は首筋、鎖骨をなぞりながら下りてゆく。やがて平らな胸元にある小柱を舌先で転がされると、大津は甘い吐息を吐き義高の頭を抱いた。
「あ……あ……義高さま……」
「愛しい大津……」
薄い身体をくまなく愛撫が覆い、大津は蕩けてゆくような心持だった。くすぐるような指先が夜着の中に忍び込み、やがて舌先が大津の芯を捕らえた。
ちろちろと反り返った部分をあやすようにしてやると、大津は息を詰めたまま逃れるようにのけぞった。
そのまま羽二重の褥からずり上がってしまう腰を引き込んで、義高は根元から扱くように吸い上げた。
「あ……義高さま……あ……っ」
肌蹴てしまった夜着の細帯を解くと、義高は緩く抗う大津の手首を一まとめにし、容易く縛めてしまった。
「逃げてはいけないよ、大津。これまでは無理をさせなかったが……今日こそ抱くからね。長く待ったんだ、お前をわたしのものにする……」
「あぁ……」
大津はきっとその瞬間を待っていた。
薄く汗をかいた白い全身を慄かせながら、義高の瞳を見つめていると心が落ち着く。今は眼前の想い人が決して怖くはなかった。
義高のたくましい腕が、大津の膝を割り開いてゆく。羽二重に張り付けられた大津は義高の前に全てを晒し固く目をつむった。
「可愛い大津……全部、わたしのものだ。」
黒曜石の瞳がきつく閉じられると、涙が目尻につっと一筋流れる。義高が甘い涙を舐めとり、大津自身に触れると再び静かに深く口淫し始めた。
「や……ぁ……義高さま……それ以上は……」
義高はその言葉に反応し、直も愛撫を続けた。
「義高……さま……粗相をしてしまいます。……粗相を……ああ、離れて、駄目です、だめ……」
身悶えする大津が逃れるように喘いだ。構わず細茎に舌を絡め扱いてやると、大津はこらえきれずに身悶え、細い悲鳴をあげた。
「ああぁ……っ、いや、義高さま、放して、放して……」
義高は大津を離さなかった。そればかりか直も愛撫を重ね、腹に紅い印を落としてゆく。
紅色に染まった大津の持ち物を、双球ごと舐め上げ扱いてやった。一瞬、強張った大津が我慢しきれずに少量吐精したのを、ごくりと飲み干すと義高は優しく抱きしめた。
大津はひくっと小さな嗚咽を漏らした。
「あ……赤子のように……粗相を……してしまいました。」
顔を覆って恥じ入る大津を、励ますように義高は直も愛撫を続けた。
「心配いたすな。お前のこぼしたのは、甘い蜜だ。決して粗相などではないよ、大津。わたしのことが好きか?」
「はい。大津は殿の下さるかすてぇらよりも、義高さまが好きです。」
「ははっ……やはり、かすてえらか。気に入ったものだな。」
「義高さまが、かすてぇらよりも大津の一番なのです。」
思わず笑ってしまう。このように無垢な大津を、頭を下げて自分に託した家老の事を思うと、ふと気が引き締まった。
「さあ……。ここに丁子油を塗るからね。足を開いてじっとしておいで。」
大津をうつぶせにすると、義高は丸い尻の下へ枕を押し込み最奥を確かめた。薄茶の淡い窪みにぷつりと指を指し込み油を塗りつけてゆく。
大津の菊門は、義高を待って熱を持ち震えていた。自らの刀身にも忙しなくまぶしつけ、先端を宛がうと義高は今こそ静かに身を沈めてゆく。気は急いたが、大津の呼吸に合わせて慎重に事を運んだ。きつい絞りがきちきちと伸びて受け止め、ゆっくりと義高を飲み込んでゆく。
「あ……ああ……ぁ。義高さま……いっ……ぱい……」
身体に負担を掛けないように、背後からそっと義高は大津を抱いた。何度も激しく打ち付けたいと思ったが、抱きしめたまま深い場所で静かに精を放つと、しばらくそのままにし、萎えるのを待ってから引き抜いた。
「大津……いかがした?」
「うっ……うっ……」
大津は肩を震わせ声を上げずに泣いていた。義高は内心、無理をさせてしまったかと慌てふためいていた。
「辛かったのか……?すまない。優しくするつもりだったのだが、わたしはつい腕の中の大津が可愛くて、いつしかそんなことを忘れてしまったようだ。」
「いいえ、うれし……かったのです。大津は女子の形(なり)をしている時、いつか義高さまのお嫁さまになりたいと思っておりました。でも男子(おのこ)は花嫁御料になれないと知って、とても悲しかった。こうして義高さまと一つになれて、大津は嬉しい……大津は日の本一の果報者です。」
「果報者は、わたしの方だよ。出会った最初の時から、わたしは大津が大好きだったんだ。」
「……うれし。」
「風に……桃花の甘い香が混じっているな。」
「はい。」
桃花を胸に抱えて転びそうになった国家老の姫を助けたことが有った。
薄い桜貝のような肌の大姫は、まだ固い蕾だったが、義高の腕の中で微笑む今の大津は、まるで綻んだ満開の桃花のようだと思う。糸手毬をつく紅い着物の市松人形に、寄る辺のない義高は一目で恋をした。
二つ年下のいとけない男の姫に不思議なほど惹かれたのは、神仏が二つに別れた魂を哀れに思い、めぐり合うようにお引き合わせくださったのだと思う。
「おいで、大津。」
黎明の中、二人はかけがえのない半身を求めあうように、もう一度溶け合った。
本日もお読みいただきありがとうございました。(*⌒▽⌒*)♪
初めての大津は義高を見て、泣いてしまったみたいです。
(〃゚∇゚〃) 大津 「きゃあ~♡大津と義高さまのらぶらぶです~♡」
Σ( ̄口 ̄*) 義高 「このように描写されるとは……」
|゚∀゚) 此花 「覗いちゃった~、一人じゃないぞ~」