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隼と周二 愛犬志願 1 

周二くんのおうちの、とらさんのカーペットが、クリーニング屋さんから返って来たの。
うんと高い毛皮の敷物だったので、クリーニング代金は8万円だって。
どうしよ……?
車の修理費もまだ出来ていないのに、汚してしまった責任を取ってクリーニングの代金も借金として、ぼく沢木隼(さわきしゅん)は、背負うことになった。
トラの毛皮の新品を買って弁償しろと、守役さんに言われたけど、高いのは無理だもん。正直、困ってる……
周二くんは、隼が俺のモノになれば、借金はちゃらにしてやると言うのだけど、パパは自分のしでかしたことには責任を持つのが「漢(おとこ)」だという。
だから。
「ぼくは、覚悟をきめました」(`・ω・´)きりっ!←隼

身体を動かせば、カチャリと硬質な金属音がする。
手錠は手首がすれて痛いけど、「めのほよう」にお金をくれると、周二くんのおうちの守役さんが言うので、我慢することにした。
「自分で、出来ます」って言ったけど、聞こえないふりをして、なにやら嬉々として、守役さんが毎日衣服を剥ぎ取ってゆく。
どうしてみんなぼくの洋服を脱がせたがるのだろうと思うけど、これも「めのほよう」のお仕事のうちだって言うから、隼、がんばります。
ちょっと哀しくなって、意味がわかんないと周二くんに言ったら、そりゃ、お前が……と言って突然前かがみになった。
「あ、俺、ちょっとトイレ行ってくるわ。わりぃな、隼。その辺りに繋がれてて」
つながれててって?
「ぼく、犬じゃないもんっ」
真剣な顔で、周二くんが言った。
「隼。犬になったら借金なんてあっという間に払えるぞ」
「ほんとっ?」
「おうっ!あ、やべっ!」
周二くんが居なくなったので、仕方なく守役さんに聞いた。
「松本さん。周二くんのおうち番犬いないの?」
「いや。親父さんは、ドーベルマンを二匹飼ってますよ」
「ん~?おうちにいるなら、もう要らないよね?」
「ねんねさん。そういう意味じゃ、ないと思うんっすけど」

木本さんじゃなく、若い方の守役さんは松本さんと言う名前。
いつもぼくに手錠を嵌める人。
時々さわさわと関係のないあちこちを、検品しますといって触る。
見ただけじゃ判らないから「仕方なくすみずみまで調べているんす」と、松本さんは言う。
もしかすると、商品として「売る」かもしれないから?
パパに逢えなくなるのは悲しいので、なるべく「めのほよう」コースでお願いします。

「ねんね。冷蔵庫におやつ入ってますからね」
「うん」
アイスクリームとプリンが好きだといったら、周二くんの冷蔵庫に、いろいろな種類を食べきれないほど買ってきて入れてくれた。
「きゃあ。すっご~い!」
一度、独りで食べてみたかったコンビニのおっきな「男のプリン」がある。
「(プリン)好き、好き。松本さん、ありがと」
「あ~……、ちょっと、俺トイレ……」
お礼を言ったら、何故だか真っ赤になって松本さんも、前かがみでおトイレに行ってしまった。
う~ん、みんなおトイレ近すぎない?
手が余り動かないけど、でっかいプリンいただきます。
でも、この後これが原因で大変なことになるんだよ。

周二くん、ごめんね。




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