流れる星に愛をこめて 1
あまりにぼくらが仲良しだから、神さまがいたずらした
本当の愛を教えてやろうと
流れ星に願いをかけた
星屑の中に、散らばる煌く真実
見つけて
ぼくの本当の気持ち
探して
ぼくの閉じ込めた気持ち
星に願いを
本当の愛を教えて
怖いほど真っ直ぐにぼくを見て
星の宿る瞳に、ぼくを写して
見つけたぼくに、君からのキスを贈って……
流れ星に、キスして
***
本当は心のどこかで、気が付いていた。
いつだって、あいつはぼくの身体目当てなんだ。
そんな悲しい事実に、気が付いていたけど気が付かない振りをしていた。
「なぁ。早く出て来いよ。なぁったら!じらすなって」
浴室のぼくは、シャワーの音で聞こえない振りをする。
出て行ったら、散々いじってなぶって喘がせる気満々だから、やだ。
扉の向こうで誘う甘い声。
「おまえ、いつも長風呂だよな。お~い、倒れていませんか?」
「うるさいっ!」
一緒に入って、全身くまなく洗ってやるというのを必死に回避して、ぼくはここにいる。
でも、今はそれどころじゃない。
今、大変な事態がぼくの身の上に起きていた。
「うっそぉ?ない……なくなってる……!?」
ボディソープを泡立てて大切に洗おうとしたら、ぼくのささやかな分身があるべき所になかった。
「きゃあああぁっ~!」
「みくっ!?どうした、ごきぶりか?!」
扉を開けて入ってこようとする遠流。
「いやっ!入って来ないで!見ちゃ駄目っ!」
「何があったんだ、みくっ!」
「わ~ん!」
何があったじゃないんだ。
あるはずのものが消えちゃったんだよおぉ~~~!!
ぼくは半狂乱で、下半身に向かって叫んでいた。
「みく~っ!?」
「ぼくのオメガ ω とエル Л がいなくなっちゃった~~~~!うわ~ん!」
ぼくの分身にパソコンの記号から、オメガとエルとふざけた名をつけたのは遠流だった。
それは、夕べのことだった。
「みく~、ふたご座流星群観に行こう。な?」
「やです~」
「恋人達は、抱き合って星を観るものって法律、知らないのか?」
「その法律、遠流が作ったくせに。星なんかそっちのけで、ぼくのこと外でいじり倒す気だ。寒いから、外なんか行くのやだ」
「そんなぁ」
図星だったらしく、視線を泳がせた。
「じゃ、星を見る前に、暖かいところでちょっとだけ触っとくか」
「あ、んっ」
「よし。みくってば、本日も、感度良好」
ぼく、柳美久(やなぎよしひさ)の恋人、松山遠流(まつやまとおる)は、本人が言うには、性器フェチだ。
大体そんなフェチが有るかどうかも、知らないけど、ズボンの上からでも相手の形状を把握できるくらい修行を積んでいるらしい。
修行って何?
友人に誘われた飲み会で、離れた席に遠流を見つけて、ぼくはどきどきしていた。
大口の取引先の社員の遠流に、ぼくは密かに憧れを抱いていた。
遠流の丸いとげの無い声っていうのかな。
声フェチのぼくに、甘いバリトンの遠流の声は、思わず涙ぐんでしまうほど好みだった。
聞いていると安心する。
どこか、太古の海で母親の心音を聞いている胎児の気持ちってこうじゃないかと思う。
「おまえさ、すごく俺の好みなんだけど、となりに座っても良いかな?」
耳朶を甘くくすぐる遠流の声に、その日ぼくは舞い上がり、有頂天で頷いた。
この声を、眠るまでずっと聞いていたいと思った。
一方、性器フェチの遠流はズボンの上から見て想像したぼくの分身が、気になって仕様が無かったらしい。
小ぶりで感度がいい。少し左に傾いている。ポジションも左。
それが、遠流の見立てだった。
「って……もう、触るなって!」
「みく~、可愛い」
「ああぁあんっ」
駄目だ、こいつの声は最終兵器のような声なんだ。
ほおって置けば、ずっとぼくの「おちんちん」ばっかり触ってる。
遠流の声で育つ、ぼくのオメガとエル。
他の所も触れよっ!
……じゃなかった。
双球をかわるがわる吸ってみたり、すべすべとした表皮を伸ばしてみたり。
そんな研究熱心に執着しなくても、同じもの持ってるじゃないか。
そういうと、まるで研究を妨げられた学者のような真剣な顔をする。
「俺の、こんなに可愛くないもの」
「ちっこくて悪かったなっ!何だよ、もうっ!どうせ無毛症だよっ!ぼくのばっかり触って、もうっ!遠流にはこれしか興味ないの?変態っ!」
「うん。俺、みくのこれが一等好き。命名。オメガωとエルЛな。決定」
「みくじゃない。美久(よしひさ)!あ~~~!!舐めるな~!かじるな~!」
「可愛い、みく~、オメガω~、エルЛ~」
わかった。
こいつは、ぼくなんかどうだっていいんだ。
オメガとエルのないぼくの事何て、きっと好きでもないんだ。
くそ~!泣けてきた……
「やだ~!!もう、こんなのいらない~~っ!」
その時。
周囲を昼間のように明るくして、一際大きな流星が天空を横ぎった。
流れ星に願い事をすると叶う……そんな迷信信じてはいなかったけれど。
神さまは、願いを聞いた。
たぶんあれが原因で、ぼくのささやかなぴんくのぞうさんは、きらりと輝いて消える星屑になった(?)のかもしれない。
え~ん、お星さまのばか~……
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見つけて
ぼくの本当の気持ち
探して
ぼくの閉じ込めた気持ち
星に願いを
本当の愛を教えて
怖いほど真っ直ぐにぼくを見て
星の宿る瞳に、ぼくを写して
見つけたぼくに、君からのキスを贈って……
流れ星に、キスして
***
本当は心のどこかで、気が付いていた。
いつだって、あいつはぼくの身体目当てなんだ。
そんな悲しい事実に、気が付いていたけど気が付かない振りをしていた。
「なぁ。早く出て来いよ。なぁったら!じらすなって」
浴室のぼくは、シャワーの音で聞こえない振りをする。
出て行ったら、散々いじってなぶって喘がせる気満々だから、やだ。
扉の向こうで誘う甘い声。
「おまえ、いつも長風呂だよな。お~い、倒れていませんか?」
「うるさいっ!」
一緒に入って、全身くまなく洗ってやるというのを必死に回避して、ぼくはここにいる。
でも、今はそれどころじゃない。
今、大変な事態がぼくの身の上に起きていた。
「うっそぉ?ない……なくなってる……!?」
ボディソープを泡立てて大切に洗おうとしたら、ぼくのささやかな分身があるべき所になかった。
「きゃあああぁっ~!」
「みくっ!?どうした、ごきぶりか?!」
扉を開けて入ってこようとする遠流。
「いやっ!入って来ないで!見ちゃ駄目っ!」
「何があったんだ、みくっ!」
「わ~ん!」
何があったじゃないんだ。
あるはずのものが消えちゃったんだよおぉ~~~!!
ぼくは半狂乱で、下半身に向かって叫んでいた。
「みく~っ!?」
「ぼくのオメガ ω とエル Л がいなくなっちゃった~~~~!うわ~ん!」
ぼくの分身にパソコンの記号から、オメガとエルとふざけた名をつけたのは遠流だった。
それは、夕べのことだった。
「みく~、ふたご座流星群観に行こう。な?」
「やです~」
「恋人達は、抱き合って星を観るものって法律、知らないのか?」
「その法律、遠流が作ったくせに。星なんかそっちのけで、ぼくのこと外でいじり倒す気だ。寒いから、外なんか行くのやだ」
「そんなぁ」
図星だったらしく、視線を泳がせた。
「じゃ、星を見る前に、暖かいところでちょっとだけ触っとくか」
「あ、んっ」
「よし。みくってば、本日も、感度良好」
ぼく、柳美久(やなぎよしひさ)の恋人、松山遠流(まつやまとおる)は、本人が言うには、性器フェチだ。
大体そんなフェチが有るかどうかも、知らないけど、ズボンの上からでも相手の形状を把握できるくらい修行を積んでいるらしい。
修行って何?
友人に誘われた飲み会で、離れた席に遠流を見つけて、ぼくはどきどきしていた。
大口の取引先の社員の遠流に、ぼくは密かに憧れを抱いていた。
遠流の丸いとげの無い声っていうのかな。
声フェチのぼくに、甘いバリトンの遠流の声は、思わず涙ぐんでしまうほど好みだった。
聞いていると安心する。
どこか、太古の海で母親の心音を聞いている胎児の気持ちってこうじゃないかと思う。
「おまえさ、すごく俺の好みなんだけど、となりに座っても良いかな?」
耳朶を甘くくすぐる遠流の声に、その日ぼくは舞い上がり、有頂天で頷いた。
この声を、眠るまでずっと聞いていたいと思った。
一方、性器フェチの遠流はズボンの上から見て想像したぼくの分身が、気になって仕様が無かったらしい。
小ぶりで感度がいい。少し左に傾いている。ポジションも左。
それが、遠流の見立てだった。
「って……もう、触るなって!」
「みく~、可愛い」
「ああぁあんっ」
駄目だ、こいつの声は最終兵器のような声なんだ。
ほおって置けば、ずっとぼくの「おちんちん」ばっかり触ってる。
遠流の声で育つ、ぼくのオメガとエル。
他の所も触れよっ!
……じゃなかった。
双球をかわるがわる吸ってみたり、すべすべとした表皮を伸ばしてみたり。
そんな研究熱心に執着しなくても、同じもの持ってるじゃないか。
そういうと、まるで研究を妨げられた学者のような真剣な顔をする。
「俺の、こんなに可愛くないもの」
「ちっこくて悪かったなっ!何だよ、もうっ!どうせ無毛症だよっ!ぼくのばっかり触って、もうっ!遠流にはこれしか興味ないの?変態っ!」
「うん。俺、みくのこれが一等好き。命名。オメガωとエルЛな。決定」
「みくじゃない。美久(よしひさ)!あ~~~!!舐めるな~!かじるな~!」
「可愛い、みく~、オメガω~、エルЛ~」
わかった。
こいつは、ぼくなんかどうだっていいんだ。
オメガとエルのないぼくの事何て、きっと好きでもないんだ。
くそ~!泣けてきた……
「やだ~!!もう、こんなのいらない~~っ!」
その時。
周囲を昼間のように明るくして、一際大きな流星が天空を横ぎった。
流れ星に願い事をすると叶う……そんな迷信信じてはいなかったけれど。
神さまは、願いを聞いた。
たぶんあれが原因で、ぼくのささやかなぴんくのぞうさんは、きらりと輝いて消える星屑になった(?)のかもしれない。
え~ん、お星さまのばか~……
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