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流れる星に愛をこめて 【おまけ】 

手の甲に筋が浮くほどシーツを握りしめて、ぼくは硬直していた。
期待と不安に心臓が締め付けられるようで、きりきりと胸が痛かった。

「遠流。ぼ、ぼく……どうしたら、いい?」

初心者マークのぼくには、どうしていいか、まるでわからない。

「みく。そんなに固くならないで、力抜いて楽にしてて」
「うっ……んっ」
「だいじょうぶ、痛くしないからね」
「んっ」

あぁ……どうしよう。
とうとう、ここまで来てしまった。

「初めて」に力んで石のようになってしまったぼくの身体を、遠流が羽根で撫でるように軽く触れる。
遠流の優しい指が、何もない滑らかなぼくの下半身を、確かめるように滑ってゆく。
甘く掠れた自分の物じゃないような声が、切れ切れに小さく寝室に響いて、ぼくは自分が発した喘ぎ声に赤面した。
いたたまれないほどの羞恥に、涙が零れそうになる。

「あ……っ、あんっ……」

抑えようとしても、遠流の気持ちを知った今は、そっと指が触れた所から熱が生まれる。
気持ちが解れ、咽喉からありえない艶めいた声が漏れてゆく。
ぼく、どうなってしまうんだろう。

遠流の指先が行方を求めて探るように、最奥のいけない場所に近づくたび、ぼくのおなかは激しく波打ってぞくりとうねり,、浮いた汗を光らせた。
耳朶に甘くとろけるぼくを呼ぶ遠流の声にすっかり翻弄されてしまって、身体中が柔らかく滴る濃厚な蜂蜜で覆われてしまうような気がする。

「声、聞かせ……てっ、遠流ぅ、名前、呼んで……あっ、あっんっ!」

遠流の声をせがんでしがみ付くぼくの下肢を広げると、膝を折り、遠流は指を曲げてオメガエルを呼んだ。

「オメガエル……ほら。ここに、おいで」

ベッドをぎしと音を立てて、遠流が身体を滑らせると枕元でじっといい子にしていた、ぼくの分身オメガエルが嬉しげにぴょんぴょんとやってくる。
ちっぽけなオメガエルを優しく手のひらに掬って、遠流は唇を寄せた。
オメガエルの丸い先ちょを、舌でくすぐり割ると、やわやわと全身に指を添わせた。
照れたオメガエルの肌色は直ぐに反応して、薄く紅を刷いたような悩ましい色になる。

「いい子だね。可愛い色に染まってる、オメガ、エル、みく。今度、お星さまが流れたら、ちゃんとここに帰るんだよ」

元の有るべき位置に下ろされて、こくとオメガエルはうなずき、遠流に軽く甘噛みされてひくりと震えて跳ねた。
遠流がぼくとオメガエルに交互にキスを落とし、エルの先端を咥え舌を絡めると、エルはとうとうヒクヒクと痙攣を始め、やがてぐったりと腹の上で弛緩した。

「達っちゃったの?エル」

ぼくが声をかけたら遠流は満足げに軽く頷いて、恍惚と余韻に浸っているオメガエルに嫉妬するほど優しい眼差しを落とした。

「初めてなのに出さずに達っちゃうなんて、すごいなエル。みくのここに帰ってきたら、きっとすごいぜ。」

エルの乱れた反応は、遠流にもかなり刺激的だったらしい。
ぼくの分身に手を伸ばしながら、胸を這う遠流のセクスはすっかり屹立して、ぼくの腹や腿に幾度となくぴしぴしと当たった。

「みくも、エルみたいに感じて。ここ、感じる?」
「うっん……」

ぐりぐりと胸を悪戯され、ぼくは息を詰めた。
首筋から滑り胸に下りた唇が、ささやかな尖りを育て、摘みあげようとする。
かすかな明かりに、ぼくの乳首がぬらぬらと光っているのを認めた。

「ここ、好き?みく、どうして欲しいか、言って」
「や……んっ」

ぼくの大好きな遠流の声に、薄い身体は反応し震えていた。
屹立する分身が気持ちを伝える方法なのに、あるべき場所からオメガエルを失ったぼくが遠流に伝えるのは、たどたどしい言葉しかなかった。
思いを伝えきれないもどかしさに、思わず顔を覆って泣いた。

遠流……。
ああ、遠流
さっきまでのオメガエルの、赤裸々な痴態は本当はみんなぼくのものだ。
遠流に愛されて、いびつなぼくは幸せだったけど、今は、オメガのように全身で伝える術を持たないのが悲しい。
オメガとエルは、言葉足らずの不器用なぼくの気持ちを精一杯理解して、そこにいた。
全身で遠流を求めて、つま先立ち(?)で懸命に屹立していた。
語る部分の無いぼくのために、遠流に愛して欲しいと懸命に伝えるオメガエル。

「好き、好き……遠流、ぼくも愛して……いっぱい愛して……」

首に巻きつけた腕をはずして、遠流の指が涙を掬う。
この上もなく優しい微笑を浮かべた恋人が、そっとオメガを手にとった。

「ほら。みくも一緒に愛して。俺の大切なオメガに、みくもキスして。俺のエルも勃ってるだろ、よく見てやって。愛おしくて堪らないよ、みく」

ぼくはおずおずとオメガに幼いキスを贈り、勃ち上がったエルは健気に力み、零すまいと頑張っていた。

「エル……いいよ。もう、達ってもいいよ」

口付けを落としたら、エルは身悶えてふるふると小さく痙攣を繰り返した。

「我慢しなくていいよ、オメガエル。ほら、ここに達って……」

甘い遠流の声に促されてエルは反応し、とうとう小さく息を詰めるように、とろりと遠流の手のひらに吐精した。
泣きそうなオメガエルを愛し、崩れそうなぼくを引き寄せて、遠流はそっと大切に下肢に潜り込む。
長い時間をかけて、きつい絞りを広げてゆく。

「はっ……はぁ……何?そこ……に何するの……遠流?」
「みくの、気持ちいいこと。俺が好き?みく」
「あ、あぁ……遠流……す……」

エルの吐き零した少しの精と、準備されたとろみのある液体を遠流は指先に絡める。
ぼくの狭い場所はひくついて、ぷつりと差し込まれた遠流の指先を飲み込んだ。

「う……んっ、す、すき……あっ……ああっん」

淫らに溢れたぼくの嬌声に、遠流は、やばい……と呟いた。

「何にもないお人形さんのくせに、みくは、いっぱい感じてるんだ。ほら、俺の指がここに当てただけで、奥に呑まれて行く」
「遠流、ああ、いやぁ遠流……っ……」
「何か、俺、子ども相手にすごくいけないことしているみたいだ。みく、じっとしてて」

くちゅ……と聞こえた淫猥な水音に、思わず全身の産毛がそそけ立った。
まるで他人の身体のような気がしていた。
強くだきしめられたら、ふわりと緊張が解けてどこかに流れてゆく気がする。
オメガとエルがじっと見守る中で、ぼくはゆるゆると解されて、遠流の穿つセクスの波に一気に攫われた。
大きな波になった遠流が、全身で小船になったぼくを蒼い水底へと抱え込んでゆく気がする。

「あっ、ああっ……どこかへいっちゃう。遠流……遠流、いやだ、離さないで」

切ない顔の遠流が、ふっと息を吐いてぼくの頬に触れた。

「どこへも行かないよ、みく。ずっと一緒にいる。」

押し寄せるぬるい波に、ひたひたと満たされてゆくぼくの下肢に、そっと巻きつくようにエルが触れた。
オメガの重みを腹に受け止めて、ぼくらは一つになってゆっくりと満ち足りてゆく。
ぼくの強張った足先が空をかくのと同時に、内側に熱く溢れた遠流を感じた。
ぼくと遠流の体で作られた、丸く充実した空間に満天の星が降り注ぐ。

一瞬、身体を固くした遠流が息をつき、そのままぼくの上に流星となって落下した。

「みく。可愛い、みく。オメガとエルと、ずっと一緒にいよう。もしも、いたずらな星が願いを聞き届けてくれなくても、俺はみくの全部が好きだよ」

遠流はぼくの欲しい言葉を呪紋のように唱えた。

「丸ごと好きだよ。言葉で言って欲しいなら、何度でも言うから。オメガとエルも、みくもみんな可愛い。俺の……みく」
「遠流……」

目じりを伝う溢れる涙を、温かいと感じた。
力尽きて倒れこんだぼくを抱き締めて、遠流は傍らのオメガエルに微笑みかけた。

「いっぱい愛してもらえてよかったね」

頷くオメガエルと、その隣のお友達。
でっかいお友達が見てる。
初めて見た時よりもずいぶんと、おっきくなってる。
きっとぼく達の愛し合う姿を観て、興奮しちゃったんだ。

君を仲間はずれにしてごめんよと、宥めるように、エルがエ〇ザイルの肩を抱いた。
今度は君を感じさせてあげるよ、ほら、こっちを向いて。
恥ずかしがらないで、ぼくがキスしてあげる、ちゅっ。

わ~~~!今のアテレコ、違うっ!

「ばかっ!エルッ、離れなさいっ!ふしだらな行動は許しませんっ!」

エルは離れたけど小さく「ちっ」と、うそぶいたような気がする。まさかね……?

何の解決もしていない難題は、そこに山積していたけど、遠流はぼくの頭を抱えると、重ねて深く口を吸った。
強く吸い上げられたぼくは、潤んだ目の中に何があっても動じない恋人の姿を認めた。
ぼくが、何よりも欲しかったもの。
ぼくだけを愛してくれる、遠流。
ぼくの全てを受け入れてくれる、恋人。

「とお……る」
「みく。今度こそ流れ星にお願いしような。全てが元に戻りますようにって」
「んっ」

胸を這う遠流の頭を抱いた。
満たされた思いに、目じりにつっと溢れる温かい涙。
何で川にいるとき、ぼくの体に戻ってきますようにって、願わなかったんだろう……

目の端に、楽しげにエ○ザイルの「チューチュートレイン」を踊る二人(?)が見える。
そういえばエ○ザイルって、何人だっけ……?踊ってる姿が可愛い。

「ねぇ、遠流。あの子たちが大勢で踊っている所、ちょっとだけ、見てみたい気もするよね。きっと、可愛い……あんっ」

遠くで、願いをかなえる星が流れた。



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