青い小さな人魚 (虹色真珠) 4
抗おうにも、両手は固く縛められたまま頭上の環に手鎖と共に繋がれ、ジャラジャラと浴室の壁に木魂するばかりだった。
薄い皮膚が傷ついて、白い肌に筋を作る。水っぽい紅色の液体が、モザイクタイルに散った。
「はなしてっ!……あーーぁっ……!いやーーっ!」
人魚の細く長い哀訴が響いた。
「思うさま泣け、小さな青い人魚よ。」
「そして、余の手に七色の真珠を零せ。」
王さまは冷たく言い放ち、人魚が苦しみながら反応するのを待った。哀れな小さな青い人魚は、凶暴な怒張から逃げようと必死にずりあがろうとする。王さまは残虐な笑みを浮かべて、可哀想な人魚を捕まえると身体の下に引き込んだ。
こうして身体を痛めつけでもしないと、この強情な人魚は涙を見せないだろう。これまでも捕虜は皆、こうして屈服させてきた。
「放して……放して、お願い。わたしを自由にしてくれたら、きっと深い海の底にいる父王さまがあなたにお礼を差し上げますから。たくさんの海の財宝をあなたに差し上げると約束します。決して嘘は申しません……。」
「生憎だな。余の欲しいのは、お前の零す虹色真珠だけだ。」
「……ああ。…それは……、それだけは、王さまにはあげられません……。」と、逃れようもなく、人魚はその場で慄き嘆いた。
「どうして、そんなものを欲しがるの?本当に大切なものは、あんな物などではないはずのに……ああぁーーーっ!あーーーーっ!」
深々と刺し貫かれて、人魚の身体は心を裏切り、とうとう感じてしまった。人と同じように最奥に隠された敏感な場所を、とうとう王さまは見つけた。
乾きかけた下肢の鱗を逆撫でされると、ふるふると全身が痙攣を起こし、王さまの張りつめた器官を締め付けた。
「むっ。人魚とは、このように内部が蠢くのか……。」
王の目の前で少年人魚の平らな下半身の前部が勃ちあがり、体の内部に隱されていた人魚の薄紅色の突起が顔を出した。
桜貝の色の斧足に似た突起は人魚を裏切って勃ちあがり、寂しげに震えていた。
人魚は涙をこぼすことなく静かに耐え、透き通った露がとろりと溢れ落ちそうになるのに、王さまは口を付けた。
「おやめください。今なら、あなたを……許しますから。」
「ふん。お前が余を許すのか?ならば、余は許しを請うのは止めよう。」
人魚が否と王さまの胸を突き、わずかに抗ったが、王さまは行為に溺れ続けた。
「甘い……、人魚の精とはこのような甘露な味なのか。人とは違い、感じると大切なものが内側から出て来る仕組みなのだな。」
王さまは二本の指で人とは違う器官を摘み上げると、ふざけるように二、三度こすり上げた。とろりと、薄青い透明な液体が再びささやかな冠に宿る。
薄紅色の突起を口腔に含み吸い上げると、人魚は大きく息を吸い何かを口にした。
それは、人の耳では聞くことのできない、人魚王子が海神に助けを求める高い悲鳴だった。断末魔の叫びのように、青い小さな人魚は耳を覆い叫び続けた。
パン!パン!……
浴室のガラスが突然びりりと震え、音を立てて粉々になってゆく。
異常に気付き、召使いや奴隷商人が、血相を変えて浴室に押し入ってきた。
「王さま!なんという事を!!あなたは、人魚の精を飮まれたのか!……」
口の端に溢れた人魚の精を、ぐいと拭った王さまの姿に奴隷商人は戦慄の表情を向けた。
「それがどうした。言い値で買ったものをどうしようと、余の勝手だ。」
「おお…なんという事を。お……おしまいだ……この国は…あなたは、もう、おしまいだ。あれほど、王子の事を海に知られてはならないと私がお伝えしたのに……。これから、海神の恐ろしい仕返しが始まる……。」
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
「虹色の真珠」は、明日で終わります。
よろしくお願いします。 ハピエ……ン……? (〃ー〃) 此花咲耶
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