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隼と周二 狂った夏 2 

明日もう一度そこにくる約束をして、二人はやっと許された。
どこか現実とは思えない、今日の出来事。

その日は、周二くんと一緒に帰宅した。
ぼくの手を引いて、黙って周二くんは歩く。
手首には、金属の枷で擦れた薄い傷が付いていて、鈍い痛みが事実だと告げる。
眼鏡をなくしてしまったせいで、ゆっくりとしか歩けないぼくの目に、ぼんやりと対向車のランプが大きく滲んで見える。
「大丈夫か?」
目の前にかぶさって来た級友の心配そうな顔に、自分がいつしか泣いているのだと気が付く。
思わず、両腕を回して縋る。
「んっ、迷惑かけて……ご、めんね……」
何とか、笑顔で感謝を伝えようと思ったけど、上手く笑えなかった。
「あり、がと。周二くんがいてくれたから、ぼ……く、あんまりこわくなかったよ」
「そうか?強いんだな」
余りに白々しい嘘に、散々こわいって泣いてたじゃね~かといって、周二くんはちょっと笑った。
涙が止まらないのは、やっと開放されて安心したせいだと思う。
高級な黒塗り外車に、自転車をぶつけてしまったぼく。
おろおろと狼狽して泣くしか出来ないぼくの代わりに、周二くんが今日はひとまず家に帰れるように、話をつけてくれた。
「隼。もう泣くな」
「んっ」
ぼくをいたわる周二くんの陰が、目の前に重なってきた。
すぐ近くまで来て、やっと周二くんってこんな整った顔をしてたんだと知った。
切れ長の二重の、浅黒い彫の深い顔。
自分の子どもみたいな丸いほっぺたが、恥ずかしかった。
普段、余り言葉を交わしたことも無い級友に窮地から救われて、ぼくは家に帰ろうともせず突っ立ったまま困らせていた。
不安で仕方がなかった。

「あの……あした、どうしよう。周二くん」
小さな子供をあやすように、周二くんが背中をぽんぽんと軽く撫でるように叩く。
「心配すんな。俺が居るから」
「んっ、あり、がと」
抱きしめられて、ほんの少し安堵する。
手の甲で、なかなか止まらない涙を拭った。

***

「あぁ。俺だけど」

その夜、周二は自分をぼっちゃんと呼ぶ剃刀を思わせる男に、連絡をつけていた。
「あのさ、気が変わった。明日、抱くわ」
電話の向こうで男が笑った。
「あ~あ、可哀想に。あのねんねに耐えられますかね」
「そう言うなよ。こっちの方が、耐えられねぇんだって」
今夜のずりねたは、「ねんね」の真っ裸(まっぱ)ですかといわれて、周二は思わず吹いた。
おまえのあだ名は、「ねんね」らしいぞ、隼。
「あ、そうだ。向こうの方から、抱いてくれって言わせるからな。余計な仕込を入れるんじゃねぇぞ。それから、他の奴らに輪姦(まわ)す気はねぇから。あいつは、俺のバシタ(女)にする」
驚いて、坊ちゃん本気ですかと問う声に、思わず「おう」と、真剣に周二は頷いた。

***

周二は風呂上りの自分の物を見つめた。
遊び仲間と比べても、年相応の持ち物だと思う。
「あいつが幼すぎるんだ、隼」と呟いて目を瞑る。
別れたばかりの濡れた幼い泣き顔が、瞼の裏で甘く喘いだ。

邪魔になる両腕は絡め取られて、頭上にある。
やっと生えてきたやわらかい下草に覗く、震える薄い肌色の幼い茎を思い出す。
皮を剥いて紅い鈴口を吸ってやったら、あいつはどんな顔で啼くだろう。

襲い来る快感に囚われて、脳裏の隼の白い肢体が崩れて、泳ぐようにくっとのけぞる。
「ぃやっ、周二、くん」
きっと背中を伝う汗も、溢れる涙と同じに甘い味がするのだろう。
自分の五指が忙しなく気持を追い詰めて、下肢を這う。
腹筋に力を込めて、周二は呻いた。



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