実るほど、愛の花咲く稲穂かな・3
BL観潮楼秋企画【実るほど、愛の花咲く稲穂かな・3】
俺達を、空港まで軽トラックで迎えに来た遠距離恋愛の相手、穂(みのる)は、可哀想に少しやつれていた。
遥の言うとおり、大学で飼育していた牛豚が伝染病の兆候が出たとかで、全頭、刹処分が決まったらしかった。
「おまえ、やつれたな・・・飯、食ってないんだろ?」
そういうと俺の胸に頭を預けて、少し泣いた。
「望(のぞむ)が叱ってくれたから、俺、泣いてる場合じゃないと思ってがんばったよ。ありがと、望。」
「穂(みのる)。口蹄疫?・・・って、そんなにひどいのか?」
「うん・・・」
たちまち俯いて、睫毛に露が宿りぽたぽたと零れる涙で、俺のシャツは濡れた。
こいつは昔から、どんな生き物にも、めちゃくちゃ優しかった。
次いでに、俺みたいなろくでもないやつにも優しかったけど。
「美代子ね・・・黒豚なんだけど・・・。口蹄疫で、おっぱいにひどい水泡ができてたんだ。」
「そうか・・・。」(ごめん、興味ない)
「子豚がね、おっぱいを飲もうとすると、水泡が破れるでしょ?痛むはずなんだ、すごく、血が滲んでるし。」
「でもね・・・美代子、痛くても子豚に一生けんめいおっぱい飲ませてんですよ。次の日、子豚も自分も刹処分決まってるのに・・・俺、何もできなかった、うわあぁあん、美代子ぉ、ごめんよぉ・・・。」
「みんな、助けてやれなくて、ごめんよぉ・・・うわぁ~~~ん。」
「穂(みのる)・・・辛かったな。」(子豚よりも、おまえが可愛いぞ)
そんな悲しい思いをしている恋人に、おれはバカ野郎と怒鳴ったのだった。
「ごめんな。もっと早くに来てやりたかったけど都合がつかなくて。」
俺の胸元で洟をすすっていた穂が、顔を上げた。
「そういえば、ここまでくるの大変だったよね。新幹線は通ってないし。運賃相当かかったでしょ?」
頼りになる遥が、ぽんと穂の肩を叩いた。
「隣村で、農協が花嫁の募集してたんだ。俺ら、幸い名前「遥(はるか)」と「望(のぞむ)」ってどっちにも取れる名前だろ?大嘘こいて花嫁募集に申し込みましたっ!当然、往復運賃無料ですっ!ありがとう農村。」
穂は呆然としていたが、そのうち猛然と怒り始めた。
「ひどいっ!俺と言うものがありながらっ。なんでそんな合コンに申し込んだんだよ、望。腹立つ。」
「あのぉ、穂(みのる)くん、そこは腹立てないで笑い飛ばす所よ。男の俺らが花嫁になるわけないだろうよ。」
遊びですむから笑っていなさいと、遥は陽気だった。
「だって、遥はともかく俺の望ってば可愛いんだもの。誰かの目に留まって、田舎の土地成金の息子に目を付けられて・・・ねぇ、望、俺のことほんとに好き?絶対、お金持ちに転ばない?」
「ばっか。好きじゃなきゃ、こんな僻地にまで来るか。」
「望~・・・俺も好き~。」
遥は呆れていた。
実際、誰がどう見たって遥の方がいい男なのは間違いないのに、穂には俺のほうがよく見えるらしい。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
甘い会話とは裏腹に、次の日参加した合コンで、二人は浅はかな考えに頭を抱えることになった。
穂が心配するのも無理はなかった。
頭がぐらぐらするほどの、イケイケ農業青年実業家と土地成金主催の合コンだった。
のどかな感じで、続きます。
主人公は、一応三人です。
大丈夫かなぁ、視点ずれまくりのような気もしないでもないです。 此花(自分に優しいタイプです)
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こちらで使用させていただいている美麗挿絵(イラスト)は、BL観潮楼さま・秋企画参加のみのフリー絵です、それ以外の持ち出しは厳禁となっております。著作権は各絵師様に所属します。
素敵絵・カロリーハーフchobon様よりお借りいたしました。ありがとうございます。
俺達を、空港まで軽トラックで迎えに来た遠距離恋愛の相手、穂(みのる)は、可哀想に少しやつれていた。
遥の言うとおり、大学で飼育していた牛豚が伝染病の兆候が出たとかで、全頭、刹処分が決まったらしかった。
「おまえ、やつれたな・・・飯、食ってないんだろ?」
そういうと俺の胸に頭を預けて、少し泣いた。
「望(のぞむ)が叱ってくれたから、俺、泣いてる場合じゃないと思ってがんばったよ。ありがと、望。」
「穂(みのる)。口蹄疫?・・・って、そんなにひどいのか?」
「うん・・・」
たちまち俯いて、睫毛に露が宿りぽたぽたと零れる涙で、俺のシャツは濡れた。
こいつは昔から、どんな生き物にも、めちゃくちゃ優しかった。
次いでに、俺みたいなろくでもないやつにも優しかったけど。
「美代子ね・・・黒豚なんだけど・・・。口蹄疫で、おっぱいにひどい水泡ができてたんだ。」
「そうか・・・。」(ごめん、興味ない)
「子豚がね、おっぱいを飲もうとすると、水泡が破れるでしょ?痛むはずなんだ、すごく、血が滲んでるし。」
「でもね・・・美代子、痛くても子豚に一生けんめいおっぱい飲ませてんですよ。次の日、子豚も自分も刹処分決まってるのに・・・俺、何もできなかった、うわあぁあん、美代子ぉ、ごめんよぉ・・・。」
「みんな、助けてやれなくて、ごめんよぉ・・・うわぁ~~~ん。」
「穂(みのる)・・・辛かったな。」(子豚よりも、おまえが可愛いぞ)
そんな悲しい思いをしている恋人に、おれはバカ野郎と怒鳴ったのだった。
「ごめんな。もっと早くに来てやりたかったけど都合がつかなくて。」
俺の胸元で洟をすすっていた穂が、顔を上げた。
「そういえば、ここまでくるの大変だったよね。新幹線は通ってないし。運賃相当かかったでしょ?」
頼りになる遥が、ぽんと穂の肩を叩いた。
「隣村で、農協が花嫁の募集してたんだ。俺ら、幸い名前「遥(はるか)」と「望(のぞむ)」ってどっちにも取れる名前だろ?大嘘こいて花嫁募集に申し込みましたっ!当然、往復運賃無料ですっ!ありがとう農村。」
穂は呆然としていたが、そのうち猛然と怒り始めた。
「ひどいっ!俺と言うものがありながらっ。なんでそんな合コンに申し込んだんだよ、望。腹立つ。」
「あのぉ、穂(みのる)くん、そこは腹立てないで笑い飛ばす所よ。男の俺らが花嫁になるわけないだろうよ。」
遊びですむから笑っていなさいと、遥は陽気だった。
「だって、遥はともかく俺の望ってば可愛いんだもの。誰かの目に留まって、田舎の土地成金の息子に目を付けられて・・・ねぇ、望、俺のことほんとに好き?絶対、お金持ちに転ばない?」
「ばっか。好きじゃなきゃ、こんな僻地にまで来るか。」
「望~・・・俺も好き~。」
遥は呆れていた。
実際、誰がどう見たって遥の方がいい男なのは間違いないのに、穂には俺のほうがよく見えるらしい。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
甘い会話とは裏腹に、次の日参加した合コンで、二人は浅はかな考えに頭を抱えることになった。
穂が心配するのも無理はなかった。
頭がぐらぐらするほどの、イケイケ農業青年実業家と土地成金主催の合コンだった。
のどかな感じで、続きます。
主人公は、一応三人です。
大丈夫かなぁ、視点ずれまくりのような気もしないでもないです。 此花(自分に優しいタイプです)
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素敵絵・カロリーハーフchobon様よりお借りいたしました。ありがとうございます。
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