一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 番外編「契り」と「あとがき」
「なるほど。」
「あ……っん……。」
「決して性急に事を運ばず、百合根を指先で解すように丁寧に指の腹で撫でてやると……ほら、小柱のようにぷくりと色を変えて立ってくるのだ。」
「おお~……確かに。こうすれば、気持ちいいか?深雪。立って来たぞ。」
「うっ……ん。源七郎さんのえっち~。」
「えっちとは、どういう意味だ?」
「あの、おそらく深雪はすごく感じていると、言いたいみたいです。(`・ω・´)」
「そうか、では、冬吾殿。同じように貴殿も擦ってみられよ。柔らかくの。」
「あ……んっ。先輩も……?源七郎さんみたいにするの?」
おれは源七郎に、衆道の手ほどきを受けていた。色々な道具の無い昔は、それぞれに工夫を凝らしていたらしい。テレビや漫画や娯楽というものがほとんどなかった時代、恋人同士がすることは決まっていた。薄くライトを落とし……じゃなく、細い灯明だけで相手の体に執着し零れる吐息だけを頼りに、感じる場所を拾い上げてゆく。
隠微で淫猥な音が、夜の帳の中で聞こえるのはさぞかし艶めかしい情景だっただろう。月明りの中に白く浮かぶ深雪の身体が、薄く汗をかいて輝くさまを見るだけでおれの暴れん棒はずきずきと熱を持って固くなった。
「や~~~ん、先輩っ……。そこばっかり、やっ……ん。」
「これ!深雪殿。、はやる気持ちは分かるが、そこもとはちと言葉数が多すぎる。年弟ならば、どのようなことをされても声を漏らさず我慢をしてみよ。」
「だって、感じちゃうと声出るよ~。二人がかりなんだもの~。」
深雪。そんな可愛い顔しても、源七郎には通じないぞ。こいつは、百年以上ただ一人を思い続けていた堅物なんだから……。
「柳殿。魂魄となった我が言うのはどうかと思うが……。」
「なんですか?」
「実はわたしは、六花とは契ってはおらぬ。」
「ええーーーっ!うっそ。」
傍にいる六花がこくりと頷いた。
「六花は多くの方々と同じように、年を二つ偽り従軍した。実際は元服も終わってはおらぬ。」
「て……一体いくつだったんだ?」
「実際は12歳だった。」
「げっ、ランドセルかよ~!」
二人はそこに並び、深々と頭を下げた。
魂魄となり欲とは無縁の存在になったが、ただ一つ出会えて心残りがあるとすれば、きちんと契っていないことだ。…と、源七郎は膝を進めた。
「深雪殿と冬吾殿が、情を交わすのを見ているだけでよいと思ったのだが……その……元々身体の奥深くで眠っていたのなら、その身体をしばし借り受けるわけには参らぬだろうか。現世に魂魄だけ浮かぶ儚い存在だが、深雪殿のように六花を愛してやりたいと思う。それに、言って聞かせるよりも、体で覚えた方がそこもとと深雪殿にも今後の為になるかと思うのだが、いかが?」
ふと隣を見ると、六花は源七郎の腕を掴み、たとえ叶わぬ夢でもそう言って下さっただけで六花は源七郎さまをお待ちしていた甲斐がありました。…などと、咽んでいる。
もらい泣きする深雪の返事は聞くまでもなかった。
魂魄とおれの波長は当然合っているから、おれさえその気になれば源七郎は出入り自由だった。
背後からおれを包み込むようにして、源七郎はおれの中に入ってきた。感覚で言うとどうなんだろう。車を運転している時に、誰かに「ちょっと運転代わってもらえますか?」と言って、助手席へずれたイメージだ。
源七郎の運転で身体は動くが、同じ車に乗っているし車が振動するたび同じように動きを感じることができる。
六花が入った深雪は、楚々とした風情でその佇まいはまるで別人になった。
余りにも深い想いがやっと念願叶うのを、ここにきて戸惑っているようだ。
「源七郎……さま……。六花は、寄る辺ない露の身となっても、あの日から変わらず源七郎さまをお慕い申しております。」
「うん、六花。今こそ、我物にするぞ。覚悟は良いな。」
「はい。どうぞご存分に、可愛がって下さいませ。」
*****
おれが深雪のために買って来たローションを、白菜種油の代わりに使い、源七郎は時間をかけて六花を高めてゆく。
脱いだガウンの袖口を引き寄せると、きゅとかみ締めて声を殺し、六花はひくひくと震えていた。月明りだけで照明を落とし開かれた六花の下肢がほの白く浮かんでいた。
湯葉を作る時にかき混ぜるように、脇から腹を撫ぜると息を詰めた六花が、ほろと泣いた。
「ああ……源七郎さま、六花は……ずっと……ずっと……。」
源七郎が腿を撫で上げ、屹立した怒張を押し当てた。一瞬の緊張と押し戻す感覚がおれにも伝わった。一度に押し込むようなことはせず、入口に馴染ませるようにじっくりと時間をかけた。鈴口が六花の後孔に擦られる度、身体中の血がそこで沸騰する気がする。
不思議な締め付けに、おれは……源七郎は持って行かれ、まぶたの裏に閃光が浮かぶのを感じていた。双球がせり上がり、吐精の瞬間を告げていた。
柔かい下肢を開いて、六花は源七郎を受け止めていた。
背後からの方が、体に負担がかからないと源七郎は無理をさせる気はないと、六花に告げたが六花は源七郎に抱きついたまま、ずっと涙をこぼしていた。
身体をつなぎ一つになる感激は、源七郎と六花のものだ。精を零すことなく受け止めて、六花は「嬉しい。」と泣いた。
深雪も「ありがとう。」と言って、泣いた。
*******
翌朝、布団の中に深雪は眠っていた。長い間、源七郎とおれに愛され続けて、最後は意識を手放し倒れ込んだ。
源七郎は、無理をさせたと頭を下げたが、深雪は六花と同じに「嬉しい。」と口にした。
氷が温み、風に花の香が混ざる頃、六花は源七郎の腕の中で再び水になった。正しくは、おれの腕の中だけど。
源七郎は、今度は自分が神仙女王の元に行き、同じ身になれるよう頼んでみるらしい。出来れば、共に精霊となり故郷の深い山々を守りたいと源七郎は言った。
「なあ、これきり最後ってことはないな。」
振り返って源七郎は見たこともないほど、満ち足りた顔を見せた。
「様々、ご厄介になり申した。お主が事は、この源七郎かまえて忘れぬ。
まことにありがたき幸せをいただき申した。」
魂は千里を走り、思いは風に乗る。
ひとひらの雪がふる夏に、つかの間の別れをした。
空から初雪が降るころまでの別れだ。……そう、確信していた。
( *`ω´) 三崎深雪:「む~」
(〃▽〃) 柳冬吾:「どうしたんだ、深雪。何も言わないで。」←名前で呼ぶようになりました。
(*/д\*) 深雪:「だって、源七郎さんがおしゃべりしすぎだって言うから、我慢なの……。」
(〃ー〃) 柳:「良いんだよ、深雪はそのままで可愛いんだから。深雪の声も好きだよ。」
(*ノ▽ノ)キャッ深雪:「ほんと~?」
(〃ー〃) 柳:「ああ。」
(*⌒▽⌒*)♪深雪:「先輩~。」
番外編を少しだけ書きました。
それからどうしたのか、少しだけ触れてあります。
現代ものを書きますと、豪語して思いっきり幕末やないか~いの展開になりました。(´・ω・`)
好きな時代の事を書きはじめると、うずうずして当初の予定より話が広がってしまいました。
次のお話は、アンドロイドの予定です。
拍手もポチもありがとうございます。
感想、コメントもお待ちしております。
ランキングに参加していますので、よろしくお願いします。 此花咲耶
- 関連記事
-
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 番外編「契り」と「あとがき」 (2011/09/16)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 28 最終話 (2011/09/16)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 27 (2011/09/14)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 26 (2011/09/13)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 25 (2011/09/12)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 24 (2011/09/10)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 23 (2011/09/09)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 22 (2011/09/08)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 21 (2011/09/07)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 20 (2011/09/06)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 19 (2011/09/05)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 18 (2011/09/04)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 17 (2011/09/03)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 16 (2011/09/02)
- 一片(ひとひら)の雪が舞う夏に 15 (2011/09/01)