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純情男道 2 

周二は、マンションの窓から、桜吹雪が盛大に舞いあがるのを見ていた。

「すごい青嵐だな。桜ももうお終いだな、隼。」

「今日、雨が上がってよかったね、周二くん。夜桜の下でパパの作ってくれたお弁当一緒に食べようね。のり巻きも、唐揚げもあるの。でっかいイチゴゼリーもね。」

「おうっ。だけどな、俺はほんとは花よりも団子がいいんだ。お前のぱんつの中のさくら餅を食いたいぞ。」

「や~ん、ぼくは、さくら餅じゃないです~。」

腕の中から笑って逃げた隼は、相変わらず少女のような色めいた顔をダサいめがねの下に隠していた。
春になれば高校二年生にもなるというのに、ひげ一本も生えない沢木隼には、ゆっくりにしか成長できない理由がある。過去の痛ましい事実のせいで、いまだに隼の父親は、舐めるように猫可愛がりしていた。

*****

薄闇の中、雪洞の明かりに照らされて、ほんのりと色づいた夜桜の下に緋毛氈を敷き、周二は隼を転がした。
毛氈に隼の剥き身の白い肌は、妖しく映える。肌蹴た淡い灰桃色の着物の柄は流水紋に枝垂桜。総絞りの辻が花を着崩した隼が、帯を解いて……周二くん、ここ見て……とねだる。

「ほら……もう、こんなになってる。一人で準備できたよ。ね……来て。」

帯を解くと薄く汗ばんだ胸を晒し、二枚の花弁のような唇が震えた。

「着物って着慣れないから、締め付けられてる気がするよ。ね。ここ、跡になってない?」

「ん、ここか?赤くなってるな……。」

背後からそっと汗ばんで、しょっぱい首筋を舐めた。
解いてやった絞りの腰ひもで、さり気なくくるくると手を一つにまとめて、自由を奪われてゆくのに隼はまだ気づかない。周二のいたずらな指先に、身を捩る。
そっと桜の太い枝を選んで紐を掛け、ゆっくりとぶら下げてやる。甘く囁きながら細心の注意を払って反る背筋を指でなぞった……。
夜風に総毛立つ肌は、花弁よりも白くしっとりと冷たい。つま先を中心にして、隼は夜風に弄られるようにくるくると舞った。

「隼……なぁ、胸のここ……緋寒桜の綺麗な紅色だな。」

ちゅっ……音を立てて吸い上げたら、ぷくりと育って、ひときわ鮮やかに色が付いた。

「んっ。だめ。こんなことしたら、手首が痛いよ。周二くん。」

「今日は、ここで「めのほよう」のお仕事しろ。良い眺めだからさ。片足上げても、辛くないか?」

「足なんてあげちゃ、やだ。恥ずかしいから解いて……、縛っちゃやだ……。周二くんが中に出したから零れちゃう……。お腹痛くなるから、やなの。」

涙目でせがむ隼の声は、とろけるほどに甘い。
最奥の淡い影に、周二を誘う場所があった。そっと胸に触れると、腹の薄い筋肉が波打ち、枝を揺らした。

「あっ……あっ、周二くんが触ると、ぼく……変……になっちゃう。き、きびしくなっちゃうから、触っちゃ駄目です~。」

「乱れっちまえ。」

腋窩に鼻先を入れくすぐると、ささやかな持ち物がふるりと揺れる。幼さの残る隼の容に手を伸ばして双球を握り込むと、白い喉がごくりと鳴った。固く閉じた目蓋に薄く涙がにじむ。いやといいながら、細い紅茎は愛撫に応え、緩やかに頭をもたげると、やがて露を浮かべた。
力を込めて握り込み、再び芯を持ちかけたセクスを性急に擦ってやった。

「あぅっ……い、痛くしないで……優しくしてね。周二くん。」

「隼……ああ、くそっ、可愛い。優しくなんて、できねぇっ。もう一回中出しするぞ。」

「あ……んっ……だめ、だめ。」

強引に下肢を押し開き、馴染ませる暇もなく強引に腰を捩じ込んだ。指を濡らしてそっと一節押し込んだら、隼のつつましい花蕾がきゅっと締まる。

「やぁ……っ。」

*****

「周二くん。すぐにお出かけするのに、ぱんつの中に手を入れちゃだめです~。お出かけ前の妄想は、控えめにしてください。」

「……あはは。もうちょっとで挿れる所だったのに。惜しかったな。」

「だめです~。」

人が聞いたら笑うかもしれないが、二人はいまだにプラトニックな関係だった。
散々に開いて喘がせた妄想から現実に引き戻された周二は、赤い顔をしている隼の頬に素早くキスを贈った。

*****

これから皆で訪れる木庭組の別宅は、古い平屋でささやかながら庭が有り、毎年桜の古木が爛漫と花をつけていた。茶事を愛した木庭組の風流な先代が丹精した庭は、四季折々の花が咲き乱れ、季節ごとの催事に使うにはもってこいだった。
周二の最後の節句の祝い(男子の節句は、五歳で飾り物はしまってしまう)には、もう先代は床についていたが、庭の菖蒲を眺めながら、しみじみと古い時代の極道の話をしてくれた。そして、二人の傍らには、いつも強面の門倉が控えていた。

「いいか、周二。極道ってのは堅気さんにだけは絶対迷惑かけちゃならねぇ。日陰者は静かに暮らすんだ。ふりかかる火の粉だけ払ってな。いいな、人間てのは欲かくと、ろくなことにならないからな、ほどほどでいるんだぜ。」

「うん。俺も爺さんみたいな漢気のある極道になるよ。俺、幼稚園でも弱いものいじめ何てしないんだ。それが本物の任侠道ってんだろ?」

「そうさ。強きをくじき弱きを助けるのが男さ。だがなぁ、ここは引いちゃいけねぇと思ったら、相手がどんなでかいやつでも、何が有っても折れるんじゃねぇぞ。死んでも守らなきゃいけないのが矜持ってやつだ。」

「爺さん。俺、幼稚園の年長さんだぞ。もう少し、判るように言えよ。」

「そうだったな。まあ、分かりやすく言えば、こうと決めたら生き方を変えるなってことだ。お前はチビだけど、父親よりもよくわかってるよなぁ。後な、好いた女が出来たら、他の奴が手を出す前にさっさと手籠めでもなんでもいいからやっちまぇ。それがおれの遺言だ。」

「爺さん。むちゃくちゃだぞ。」

「極道ってのはむちゃくちゃだから、世の中の鼻つまみなのさ。なぁ、門倉。」

「はい。」


苦笑しながら聞いていた門倉が、ふっと破顔した。
あれから11年経つ。
門倉宗次の出所の日が近づいていた。





(*⌒▽⌒*)♪久しぶりの妄想王子の周二でした。
隼ちゃんは、やり過ごすのが少し上手になった気がします。さくら餅じゃなくて、本当は「いなりずし」とか「助六」とかっていうのでしょうか。
でも、隼ちゃんのたまたまは、さくら餅っぽい気がします。小さくてピンクでまるっこいのね。

違うっ!■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ

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