純情男道 8
「大丈夫かい?もうお終いだからな。」
「はい……。」
「怖がらせて悪かったな。お稚児さん、頑張ったなぁ……。ぴぃぴぃ泣いて、すぐに助けを呼ぶと思ったんだがな。おじさんは、ちっとばかりつまんねぇな。泣き喚いたら、本気でこれを挿れてやろうと思ってたんだがな。ほら……。」
「わ……。」
昔、極道内で流行っていた門倉の真珠入りの股間の変形一物に、隼は目を瞠ったが、そのうち真剣に、裏っかわ、どうなってるのかなぁ……と言いながら触り始めた。ぼくも、いつかこうしようかなぁ……などと、恐ろしいことを口走っている。門倉は愉快でたまらないという顔で、隼があちこち触るのを許し、煙草に火をつけた。
「お稚児さん。そこまでだ。それ以上弄られると。こっちがまずいことになりそうだ。」
やがて隼は、不思議そうな顔をして、門倉を見上げた。
「ぼく、周二くんを守れたのかな?」
「門倉さん。ぼくじゃなくて、周二くんの事ばかりずっと気にしてた。どうして?門倉さんの守りたいのは周二くん……?」
「お~、お稚児さんにはわかってたのか?坊の好きな「周二くん」はね、おじさんの大好きな人のお孫さんでね、そりゃあもう、若い頃にとてもよく似てるんだ。年甲斐もなく、いじめてやろうと胸が騒ぐほどね。恐ろしい顔してずっと睨んでたから、頭の後ろに穴が開くかと思ったぜ。」
「周二くんのおじいさんが、門倉さんの好きな人?」
「そんなんじゃないな……。もっと大きな思いだな。病気で亡くなった時には、一緒に墓に入りたいと願ったくらい大事な人だったよ。ここの女将やってる、ばあさんがいるだろ。後を追って死ぬって言ったら、あの人にこっぴどく叱られたんだよ。ふざけんじゃないよ。向こうでどの面下げて、あの人に会うつもりだって、思い切り横面張られてね。同じ墓に入っていいのはあんたでもあたしでもない、向こうで待ってる奥さんだけだよってね。」
「周二くんが、ばあちゃんって呼んでる女将さん?」
「そうだよ、姐さんはお妾さんなんだ。本当は後添えにしてやれれば良かったんだろうが、先代は先妻が身まかる時に女房はお前しかいないから、一生独り身でいるって、約束しちまったんだ。だから、籍も入れてやれねぇが、それでもいいなら傍にいるかって姐さんに話をしてね。それでもいいって、あの人は妾になったんだ。」
門倉はふっと懐かしむような目をした。
「ばあちゃん、かっこいいねぇ。周二くんのおじいさんの事、うんと大好きだったんだ。」
「そうだよ。先代は、男も惚れる位の男振りのいい男だったからなぁ。今の木庭組の親父さんはあの人が母親代わりになって育てたんだ。相当肝っ玉の据わった姐さんだ。坊も好きかい?」
「うん。ばあちゃんとは仲良しなの。隼ちゃんはあたしと似てるねって、よく言ってる。どこが似てるか分からないけど……いつも、ぼくの好きなプリン買っててくれるんだよ。」
「似てる所か、そうだなぁ。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ……って所だろうな。活路を見出すのに我に執着するな、そうしたら見えるものがあるって、先代が口癖のように言っていたよ。」
「ん~……と?」
「ははっ、坊には難しすぎて、わからないか……?ま、おじさんは周二さんの、人をみる目が確かなんで安心したよ。見かけに惚れただけなら、土壇場できっと逃げ出すだろうと思ったからな。4代目が妙な女を連れてるようじゃ、おじさんはあっさり破門されるわけにはいかないなって思ったんだよ。坊はやけっぱちじゃなく、本気で周二さんの為に身体を投げ出す気だったな?」
「はい。漢に二言はないの。ぼくは、いつだって本気で周二くんを守る。空手は7級だけど、どんな事でもできるよ。周二くんもね、どんなに遠くに居ても、ぼくの声だけは聞こえるって言ってた。本物の狼みたいにね。」
「かなわねぇなぁ……。理屈じゃなく、お互い本能で引き合ってるってことか。全く、こんな可愛い面して、まっすぐだな。坊はどんな親御さんに育てられたんだろうなぁ。」
楽しげに門倉は笑い、襖の向こうから木本が声を掛けた。
「門倉さん。その坊ちゃんは例の沢木の倅です。」
「おお~、そうかい。なるほどなぁ……。うっかり掘っちゃったら、殺されてたかもしれねぇな。どうりで肝が据わってるわけだ。」
「パパの事?」
隼も周二もよく知らないが、パパ沢木はある大きな組の親分に気に入られて、ぜひ養子になってくれと言われたことがある。それは別の話になるが、大学生の頃に家庭教師をしていた頃の古い話を知っているらしかった。
大暴れして、やっと落ち着いた周二が、絞り出すように問うた。
「門倉……。お前、隼がどんなやつか確かめたかったのか?俺が一番大事な奴だって言ったから。」
「さあねぇ。あんまり、この坊がいじらしいんで、戴くつもりがほだされただけかもしれません。驚きましたよ。こんな風な形でいて、よく逃げませんでしたね。」
「漢(おとこ)ですから。(`・ω・´)きりっ。」←隼。
「おお、確かにな。ちっこい玉と棹が、ちゃんと付いてた。」
「ぼくも、いつか門倉さんみたいにする。真珠ちんこで、周二くんを抱く。」
「やめろって!あんあん言うのは隼の方だって言ってるのに、何を言ってるんだ。全くもう……はっ?真珠ちんこって何?何言ってるの、おまえ。」
周二はその意味を知り絶句した。
「腕に依りかけて頑張れよ、坊。急所、教えてやるから。」
「うんっ。」
「門倉――!てめぇっ、いい加減にしろよっ!」
門倉の軽口に、周二はブチ切れ、隼は花のように笑った。
(*⌒▽⌒*)♪隼:「真珠ちんこ~~!」
ヾ(。`Д´。)ノ周二:「やめろ~~~!自分のイメージ考えろよっ!隼!」
(`・ω・´)隼:「きりっ!」←漢(おとこ)らしい感じ。
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