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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・36 

「可愛い、可愛い、海広くん。」

「本当に、なんて可愛いんだろうね。やっと、手に入ったよ。」

「いい子だからじっとしてるんだよ。」

「じっと静かにしていれば、痛くなんてしないからね。」

「ああ、やっぱり、どこもかも真っ白ですべすべなんだね。思ったとおりだ・・・」

遠くで誰かの声がする。
「やっぱり?」・・・今、やっぱりって言ったの・・・?
気持の悪い何かが、ぴちゃぴちゃと音を立てて、ぼくの首筋を這う・・

や・・めて・・・
ぼく、舐めてもおいしくないよ。
この匂い知っている、誰の髪の臭いだったっけ・・・?
油の匂い・・・

「そんな顔して、独りでいる方が悪いんだよ。海広くん。」

すぽんと、ぼくのトレーナーから両方の腕が抜かれ、そのまま倒された。
背中が床に当たる。

「せ・・・せんせぇ?」

な・・・に?
ぼくに、何をするの?
どうして、服を脱がせるの?

「君が悪いんだよ、海広くん。」

「ぼくを毎日、誘う目で見て。」

ぼくは何か、いけないことをしたの?
先生を、怒らせるような悪いことをしたの?
だったら、ごめんなさい、ごめんなさい。
大きなナメクジが、首筋からぬらぬらと降りてきて、今度はぼくの裸の胸を這ってる。
気持悪いよ・・・。
さわさわと、手が動く。
生暖かい息がふうっと、そそけ立ったぼくを動けないように包み込む。
ぼくは、蜘蛛の巣にかかった蝶々になってしまった。
逃げられないように、ぐるぐる巻きに糸がかけられる。

教室の冷えた空気が、泡だった肌を刺した。

いや、いや・・・放して。
先生がこわい。

ぼくは、薄暗がりの教室の床に引き倒され、天井を仰いで怖くて固まっていた。
かたかたと全身が震えて、かちかちと歯が走って鳴っていた。

「い・・・やあっ!・・・パパ・・・ぁっ」

声を上げようとしたら、何かで目を覆われ、口の中に何かが突っ込まれた。
湿った冷たい手が、身体中をいったり来たりする。
何とかうごめく手から逃れようと身体を捩じったけれど、非力なぼくにはどうしようもなかった。
どんな状態なのか、見えていないから何も分からなかった。

こわい。
こわい・・・
見えないのが、こわい。

何か、ぬるぬるしたものがお尻の下で動物のようにうごめいていた。

気持悪い。

気持悪い。

助けて、誰か・・・

助けて、誰か・・・

パパ・・・

どのくらいの時間が経ったのか分からないけど、すごく長い時間が経ったような気がしていた。
助けを求める言葉は、押し込まれたものに吸われて声になっていなかったと思うけど、その時ガラ・・・といきなり戸が開いた。

「みぃっ、遅くなってごめ・・・っ!?」

服を全部脱がされて、背後から抱きすくめられたまま、剥き身のぼくは恐ろしい魔人に囚われていた。
両手を縛められて倒れこんだきり、声も出せずにずっと泣いていた。

翔兄ちゃんが、固まった。





正義の味方遅い~!
こんな風に理不尽に襲われてみぃくんはこの先、大丈夫でしょうか。ちょっと展開にやりきれなさが残るかもしれません。でも、幸せがまっているので、長い目で見てください。此花
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