漂泊の青い玻璃 45
「しっかりしているように見えても、琉生も取った年だな。」
「そうか?僕は一度も琉生をしっかりしていると思った事は無いぞ。」
「え?尊兄にとって、琉生はどういうイメージなんだ?」
「僕にとっての琉生か?最初に遊園地で会った時から変わらないよ。戦隊物が大好きで、お母さんの後に隠れてた。小さくて可愛かったな。」
隼人は呆れた。
「そこで止まってるのか。だったら可愛くて仕方がないはずだな。まぁ、せいぜい甘やかしてやって。じゃね。」
「ああ。明日からはよろしく頼む。また、電話する。」
*****
部屋に戻ると、新しい居間のラグの上で琉生は丸くなって眠りこんでいた。
「琉生。ほら、起きろ。そんな所で眠ってしまわないで、お風呂入ってから寝よう。」
「ん……」
琉生は尊に手を伸ばし、首に手を回した。
「こら、琉生。目が覚めてるんだろ?くすぐっちゃうぞ。」
「あはは……尊兄ちゃん。ごめん……ったら!わあ~」
ふと視線が絡んで、琉生は尊に身体を預けた。
「迷惑かけてごめんね……尊兄ちゃん。」
「謝るのは、こっちのほうだ。えいっ!」
尊は琉生を抱え上げて、そのまま回った。思わず強く抱き付いた琉生が声を上げる。
「ちょっ……!わ~、目が回るって!」
「重いぞ、琉生。」
わざとらしく腰を叩く尊に、年だね~と琉生は笑った。
笑ってはいたが、頬は濡れていた。
「……琉生?どうした?」
「ぼく……もしも……尊兄ちゃんが居なかったら……って考えたら、すごく怖くなったんだ。」
「馬鹿だな……僕はいなくなったりしないよ。琉生は僕にとってかけがえのない……」
期待を込めて見つめる琉生から、思わず尊は視線を外した。
「……誰よりも大事な……弟なんだから。」
「弟……。そっか……。ぼくは、お母さんの連れ子だもん、そうだよね。」
「琉生?」
「……なんでもない。」
「言っただろう?もう我慢するのはお終いにして、言いたいことは言わなきゃ駄目だ。言ってごらん?」
「やだ。尊兄ちゃんは、きっとぼくを嫌いになる……嫌われたくないから言わない。」
琉生は自分の鼓動で、部屋の空気が振動している気がした。
大切な関係を失うような気がして、ずっと秘めて来た思いを口にした事は無かった。
だが、二人きりの今は、もしかすると勇気を出してもいいような気がする。
琉生が誤解してしまいそうなほど、尊はいつも優しかったから……
尊の瞳に映る自分が弟だとしても、傍に居られる安心感が琉生を大胆にしていた。
それは琉生も知らない、秘めた尊の気持ちと同じものだったのだが、琉生は気付いていなかった。
尊はそっと愛おしむように、両手で琉生の顔を包んだ。
「嫌いになったりしない。言っただろう?僕はどんなことが有っても、琉生の味方だよ。約束する。」
くしゃと思い詰めた顔が歪み、涙と秘めた思いが零れてゆく。
「尊兄ちゃんが……好き。誰よりも一番……好き。」
「琉生。僕も琉生が大好きだぞ。」
琉生はふと悲しげな表情を浮かべた。
「違う……んだ。ぼくの「好き」は尊兄ちゃんの「好き」と同じじゃない。だって……ぼくは尊兄ちゃんと……」
「僕と?続きは……?琉生、言って。」
尊は琉生の口から、その先を言わせたかった。
しかし、涙にくれてしまった琉生は、それ以上の勇気を振り絞れずに唇を震わせた。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
あら……ちょっと、甘い空気に……?[壁]ω・)チラッ
ヾ(〃^∇^)ノちょっとだけ~~
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