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パーティ 2 

くるりと振り向いて、松本が告げた。

「着いたぞ。」

見上げた三階建ての自社ビルの一階が、組事務所になっていると松本は言う。
想像とは違うごく普通の建物で、思わず安堵した。

「事務所の中、見てみるか?別に大したものはないけどな。テレビで見るような感じだぞ。」
「二階って、住屋になっているんですか?」
「ああ。周二さんと、兄貴と、俺の部屋も同じ階だ。上がればわかるけどな、広いリビングと台所があって、後は普通にバストイレって感じかな。」
「あの、その上は?」
「上は親父が住んでる。昔、襲撃されてから、寝込みがちでな……散弾食らって、一時はやばかったんだ。それで木本の兄貴が、組長代行ってわけだ。親父の部屋には一階の脇の小部屋から直通のエレベーターで行けるようになってるんだ。通いの家政婦が面倒なことに巻き込まれたりしないようにな。」
「襲撃なんて、映画で見たことあるけど、そんなこともあるんですね。」
「直にはぴんと来ねぇだろうな。まあ、親父は人違いで襲われたんだけどな。」
「人違いだったんですか?」

人違いで生死の境をさ迷うような大怪我をするようなことが、現実で起こる世界。
直には想像がつかなかった。

「ああ。撃った本人がそう言ったから確かだ。親父は人から恨まれるような人間じゃねぇからな。893には義理事ってのがあって、葬式とか法事の事なんだが、先代と付き合いのある組の葬儀に出席した帰りに、いざこざに巻き込まれたんだよ。」
「……怖いですね。」
「まあ、そうだな。迷惑な話だ。だけど、道を歩いていても交通事故に巻き込まれたりもするだろう?俺らにとっちゃそんなもんだよ。」
「店長にも、そんなことが起こるかもしれないってことですか?」
「直?」
「そんなの……」

いやだ。やっと見つけた居場所を失くしたくない、一人にしないでくれ……と、直は告げたかったのだが、言葉は窓から覗いた人物の言葉にかき消された。

「松本~。ちんたら何やってんだよ。隼が待ちくたびれて寝ちまうだろ。」
「すみません、周二さん。ほら、直。あれが周二さんだ。」
「あ……あの。本日はお誕生日おめでとうございます。」
「話は後だ。いいから、とっとと上がって来い。」

漆黒の髪の、鋭い目を持つ周二と呼ばれた美青年の発した一言に、直は竦んでいた。
有無を言わせぬ言葉の強さに、ふと不安になる。
もしかすると松本にのこのこついてきた自分は、招かれざる客ではなのだろうか。
そして、松本に促されるようにして室内に入った直は、とんでもない光景をみて思わず後ずさった。

「わ……ぁっ……」

花冠を乗せた栗色の柔らかい髪、薔薇色の頬のとんでもない美少女が、しなやかな肢体に戒めを受けてソファの足元にいた。




本日もお読みいただきありがとうございます。
相変わらずの登場です。

(〃゚∇゚〃) 「覚えていてくれるかな~♡」

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