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パーティ 5 

周二は瞬時に考えを巡らせた。
一歩、外に出ると恐いものなしの周二だが、隼にだけは頭が上がらない。
何しろ、幼稚園のころに一目ぼれして以来、一途にべた惚れなのだ。しかも、隼は見かけに反して中身は相当な漢で、女の子のように扱われるのを喜ばなかった。
今は、休講中だが密かに通信空手を習って鍛えようとしたくらいだ。うっかりCMでも見た日には、ライザ○プに通って、二か月で違った身体を手に入れるとか言い出しかねないので、リビングのテレビは故障中ということになっている。

俯いた隼の顔を上げさせるのは、結構至難の業だ。

「……え……っと~、あ、そうだ。あれだ。王様の隣にいるのは……腕の立つ戦士だろ。ほら、この間見たアニメの、アルスラーンの傍にいた従者のダリューンとか、キシュワードとかもすげぇ強えやつだった。なっ!木本。なっ?漢の中の漢だよなっ。」

振られた木本は、顔色も変えずに答えた。

「そうですね。戦国武将の伊達政宗の後には、片倉小十郎がいましたね。あと、上杉に仕えた直江兼次、秀吉の傍には、竹中半兵衛と黒田如水……強い武将の傍には、常に頭のいい参謀や軍師がいるものです。」
「そうなの?」

隼の視線が、ちらりと木本を見る。

「中国でも、三国志の時代には、劉備玄徳の隣に、孔明と、関羽、そして張飛が。渡世人の清水の次郎長には、森の石松、大政、小政なんぞがいましたね。」
「うふふ~。じゃ、ぼく漢らしく、周二君のお隣に座る~。」

ぴっと親指を立てた周二に、木本は優しい視線を送った。

「むしろ、周二さんにとっては、ねんねはアンティノウスじゃないかと思いますけどね。」
「なんだよ、それ。」
「アンティノウスですか?ローマ皇帝ハドリアヌスのバシタですよ。ナイルで溺れ死んだときには、皇帝はその死を悲しんで、魂を慰めるために町まで作ったんです。」
「……へぇ。スケールのでかい話だな。物知りだな、木本。」
「星座にも、ハドリアヌスが名付けたアンティノウス座ってのがありましてね。木本もガキのころに話を聞いて、そこまで人を愛せるのかと不思議に思ったことがありました。まあ、好きな相手ができた今は、多少なりとも分かるようになりましたけどね。」
「そっか~。星に名前を付けるほど愛してたのか。ここにハドリアヌスってやつがいたら、俺らと話が合いそうだな。」

*****

スケールのでかい愛について、盛り上がっている間に、直は荒木と共に腕を振るった。
心づくしの料理が運ばれてきて、テーブルの上はいっぱいになった。
不思議と心地よい空間に、いつしか直も肩の力を抜いて、隼といろいろな話をした。

「そうなんだ。それでそんな恰好なんだ。おれは、君がどこからか誘拐されてきたのかと思って、最初すごく驚いたよ。」
「パパが、自分のしたことは自分で責任とるのが、大人の漢だっていつも言ってるから、そうするの。」
「そう、えらいね。君の年じゃバイトは、なかなか難しいものね。」
「……ん~?」




エジプトのナイルで死んでしまったアンティノウスの死に関しては、暗殺だとか、自分で身を投げたとか、諸説あります。
皇帝を陥れようとする誰かから、皇帝を守ろうとして罠に落ちたとか思いたいです。
でも、資料集めが大変そうだから、まだちょっと無理なのです。(〃゚∇゚〃)

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