パーティ 4
この格好だと、ふしだらという言葉のほうが似合う気がするが、あっけらかんと明るく笑う姿は、聖堂の天井に描かれた神の御使いのようで、ついつられて直も笑顔になる。
「可愛い……」
「そうだろ?」
「はい。とても。店長に話は聞いていたんですけど、想像以上で驚きました。」
「お前の事も、松本に聞いてるぞ。いろいろあったらしいが、頑張ってるそうじゃないか。良かったな。」
松本がどこまで話をしたのかわからないが、大事な人たちに自分の事を話していると聞いて、うれしくなる。
「松本はお前の事を気に入っているようだな。直って名前だろ?毎日聞かされて、こっちは耳タコだ。」
「わ……ぁ……失敗ばかりしてます……」
首筋まで染まった直を見て、周二は愉快そうに口角を上げた。
野生の肉食動物の隙を見せない精悍な表情が、それだけで別人のように柔和になる。きっと、心を許したものにだけ見せる顔なのだろう。
少女のような優しい面差しの少年を見つめる瞳は、慈愛に満ちていた。ほんとは性欲に満ちているのだが、直にはそう見えた。
直は、ほっと息をついた。
想像していたよりも穏やかな空間だ。もっと、語気も荒く乱暴な人たちを想像していた直には、少し拍子抜けだった。
「松本が、お前の事を隼に似てるって言ってたから、楽しみにしていたんだが、顔が似ているわけじゃないんだな。お前も整った面だが、隼とは系統が違う。」
「似てないです。おれ、あんな綺麗な子初めて見ました。」
「お前、嘘つけないタイプだろ?そのくせ、一度決めたら退かない。中身は結構頑固だ。」
「そうかもしれません。」
「似てるとしたら、きっとそこだな。」
周二と呼ばれた男は、ついと直の傍に寄った。
思わず身構えてしまう。
「……びびんなよ。頼みてぇことがあるだけだ。」
「なんですか?」
「あのさ、松本はずっと木本の下で頑張って来て、やっと芽が出た所なんだ。今が大事な時だから、よろしく頼むな。」
「おれの方こそ……です。店長には、いつも助けてもらってばかりです。できることがあるなら、精いっぱい恩返ししたいです。あの、実際は毎日迷惑ばっかりかけて……出来ることは、まだまだ少ないんですけど。」
周二はふっと破顔した。
「傍にいりゃいいんだよ。それだけで、松本の力になる。あいつにやっとまともな支えができて、親父も木本も喜んでるんだ。」
「はい。」
「俺には隼がいる。おまえも松本の特別な存在になってやれ。」
「はい。」
松本の大切な人に認めてもらったようで、直は嬉しかった。
「直!」
「はい。」
「荒木が料理手伝えとさ。」
荒木は先に来て、料理をしていたようだ。
「すぐ、行きます。」
「ぼくも~。」
「隼はいい。くそ親父がめんどくせぇからな。」
「油が飛んでも平気なように、エプロンする。」
「そうじゃなくてさ。今日は俺の誕生日だろ?」
「うん。11月29日。良い肉の日だもん。」
「肉の日はいいから、傍にいろって言ってるの。俺の誕生日くらい、王様でいさせろ。王様の横に隼がいないと、おかしいだろ?」
「変な周二くん。王さまの隣にいるのは女王さまだよ……」
「あ、やべ……」
隼の大きな瞳が揺れる。
本日もお読みいただきありがとうございます。
周二の誕生日……って、どこかで書かなかったっけ……?(´・ω・`)
すっかり忘れてしまっています……ごめんね。
(*つ▽`)っ))) 「ぼけたのかしら。やだわ~」←笑えねぇ……