波濤を越えて 6
「何を言ってるの……できない……そんなこと」
「美術室で胸像のマルス相手に、オナっていたくせに俺にはキスできないの?」
「……してないっ、そんなこと」
「声を掛けなかったら、君はキスをしながら、恍惚とセクスを扱いていたに違いないよ。そうだなぁ……床には、白い精液の溜まりができていて、俺はとても驚きました。言わないでおこうかと思ったのだけど、秘密を一人で抱えるのは辛いんです……って担任に切りだしたら、きっと驚くだろうね。神聖な美術室でなんて不道徳なことをしているんだって、大事になりそうじゃない?学校推薦って、素行に問題があったら取れないはずだよね?」
顔を寄せた柳瀨が首筋を舐めるようにして囁いた。
正樹の顔から血の気が引いていた。紙のように白くなった顔を、ゆっくりと柳瀨に向けた。
「……そんな出鱈目、先生は信じない」
「信じるさ。俺は品行方正な生徒会長で、自他ともに認める学校の顔だよ?君は下級生だし、血統のいい綺麗なだけのお人形さんじゃないか。こういうのは、どちらが正しいかじゃないんだよ。」
柳瀨は耳元に囁いた。
「どちらが優位に立つカードを持っているかだよ」
「……卑怯者」
「なんとでも言えばいい。きっとジャンヌも獄につながれて、そう思っただろうね。ずっと狙っていたんだ。正攻法じゃなくなってしまったけど、結果オーライだ」
怒りで唇が震える。
目まいで、立っていられなくなりそうだ。
「黙っててほしいんだろ?ほら、こっち向けよ、ジャンヌ……」
強引に抱きすくめられ、唇を割られた。
「い……や……」
「噛むなよ?」
抗う声は柳瀨の口腔へと飲み込まれた。
ぬめる舌が、頑なに拒む正樹をせせら笑うように、動く。
「……うっ……うっ」
正樹の怯えた舌に巻き付き、歯列を這うのは、清らかなジャンヌを貶めた民衆のものだ。
救いの手はどこにもなかった。
相手を突き飛ばそうと上がりかけた腕が、やがてだらりと失墜した。
正樹は柳瀨の手に堕ちた。
本日もお読みいただきありがとうございます。
(´;ω;`)ウゥゥ……この役やだ~
(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「頑張れ、正樹」「 代わってよ~ 」「それは無理」
( ノД`)頑張ってね、まあちゃん……←鬼畜~
一昔前の耽美な世界を書きたいのですが、なかなかしっとりと湿度をまとった風景を描くのは難しいです。
語彙力がもっと欲しいです |ω・`)
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