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BL観潮楼様・夏の企画「狂った夏・2」 

フリー絵、ぴお
BL観潮楼様・夏の企画「夏―心を焦がす恋―」


「狂った夏・2」



明日もう一度そこにくる約束をして、二人はやっと許された。

どこか現実とは思えない、今日の出来事。

その日は、周二くんと一緒に帰宅した。
ぼくの手を引いて、黙って周二くんは歩く。
手首には、金属の枷で擦れた薄い傷が付いていて、鈍い痛みが事実だと告げる。
眼鏡をなくしてしまったせいで、ゆっくりとしか歩けないぼくの目に、ぼんやりと対向車のランプが大きく滲んで見える。

「大丈夫か?」

目の前にかぶさって来た級友の心配そうな顔に、自分がいつしか泣いているのだと気が付く。
思わず、両腕を回して縋る。

「んっ・・・」

「迷惑かけて・・・ご、めんね・・・」

何とか、笑顔で感謝を伝えようと思ったけど、上手く笑えなかった。

「あり、がと。周二くんがいてくれたから、ぼ・・・く、あんまりこわくなかったよ。」

「そうか?」

余りに白々しい嘘に、散々こわいって泣いてたじゃね~かといって、ちょっと笑った。

涙が止まらないのは、やっと開放されて安心したせいだと思う。
高級な黒塗り外車に、自転車をぶつけてしまったぼく。
おろおろと狼狽して泣くしか出来ないぼくの代わりに、周二くんが今日はひとまず家に帰れるように、話をつけてくれた。

「隼。もう泣くな。」

「んっ・・・」

ぽつりと呟く周二くんの陰が、目の前に重なってきた。
すぐ近くまで来て、やっと周二くんってこんな整った顔をしてたんだと知った。
切れ長の二重の、浅黒い彫の深い顔・・・。
自分の子どもみたいな丸いほっぺたが、恥ずかしかった。

普段、余り言葉を交わしたことも無い級友に窮地から救われて、ぼくは家に帰ろうともせず突っ立ったまま困らせていた。

「あ・・した、どうしよう。周二くん。」

小さな子供をあやすように、周二くんが背中をぽんぽんと軽く撫でるように叩く。

「心配すんな。ずっと俺が居るから。」

「んっ・・・あり、がと。」

手の甲で、なかなか止まらない涙を拭った。




「あぁ。俺だけど。」

その夜、周二は自分をぼっちゃんと呼ぶ剃刀を思わせる男に、連絡をつけていた。

「あのさ、気が変わった。」

「明日、抱くわ。」

電話の向こうで男が笑った。

「あ~あ、可哀想に。あのねんねに耐えられますかね。」

「こっちの方が、耐えられねぇんだって。」

ずりねたは、今日の「ねんね」の真っ裸(まっぱ)ですかといわれて、思わず吹いた。
おまえのあだ名は、「ねんね」らしいぞ、隼。

「あ、そうだ。」

「向こうの方から、抱いてくれって言わせるからな。余計な仕込を入れるんじゃねぇぞ。」

「それから、他に輪姦(まわ)す気はねぇから。」

驚いて本気ですかと問う声に、居ない相手に思わず「おう」と、真剣に周二は頷いてしまった。



風呂上りの自分の物を見つめた。
遊び仲間と比べても、年相応だろうと思う。
あいつが幼すぎるんだ。
隼・・・と呟いて目を瞑る。
別れたばかりの濡れた幼い泣き顔が、瞼の裏で甘く喘いだ。
邪魔になる両腕は絡め取られて、頭上にある。
やっと生えてきたやわらかい下草に覗く、震える薄い肌色の幼い茎を思い出す。
皮を剥いて紅い鈴口を吸ってやったら、どんな顔で啼くだろう。

襲い来る快感に囚われて、脳裏の隼の白い肢体が崩れて、泳ぐようにくっとのけぞる。

「やっ、周二、くん・・・」

きっと背中を伝う汗も、溢れる涙と同じに甘い味がするのだろう。
自分の五指が忙しなく気持を追い詰めて這う。

腹筋に力を込めて、周二は呻いた。


狂った夏3へ続きます。

観潮楼

続編・・・なんて、嬉しい社交辞令を頂いてしまったので、生意気にもうかれぽんちに書いて見ました。
BLは、美しさと隠微に満ちたファンタジーの世界だと思います。
本屋さんで、お勉強しようと思ってBLコーナーに行ったのですけど、お嬢さんが大勢立ち読みしていらして逃げ帰ってしまいました。
根性なし、此花。
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pioさまに、美麗挿絵お借りいたしました。
ありがとうございました。
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6 Comments

此花咲耶  

No title

るかさま

きゃあっ、どうしましょう。
そんな嬉しいお言葉頂いた日には、うかれぽんちに続編即行思いつきそうです。
皆様に、コメントいただいて、すっかり舞い上がっています。
ありがとうございました。
エチ修行、がんばりますっ!←あ、でも方法が分かりません・・・^^;

2010/07/27 (Tue) 23:22 | REPLY |   

るか  

続編続編!!

わーい、続編!!
社交辞令なんかじゃないですよ!
面白い~~。え、終わり??このあと続くよね??ね??
と、画面に向かって呼びかけてしまいました。
続続編は~~?
楽しみにしています!

2010/07/27 (Tue) 21:47 | REPLY |   

此花咲耶  

No title

pioさま

「僕の背に口付けを」でもっていかれてました。
自分のコメント欄に、お二人のお名前があるなんて此花、何と言う望外の幸せ者でしょう。
隼くん、実は作者の力量不足で上手く輪姦せない気がして、命拾いしました。
皆様方のように、あんなことや、こんなことが出来るようにがんばります。
美麗挿絵に負けないように、がんばります。・・・あぁ、土俵の上にも上がれそうにないです・・・

2010/07/27 (Tue) 16:12 | REPLY |   

此花咲耶  

No title

kikyouさま

きゃああっ!
お名前を拝見して、本物?ねぇ本物?って、誰もいないのに振り向いて問いたいくらいです。
前話どころか、すみません、毎夜の読み逃げ確信犯です。
昨夜も紅蓮と一緒に泣きました・・・
ご挨拶にもいけない、小心者でどうもすみません。

コメントありがとうございました。
続編、がんばります。

2010/07/27 (Tue) 16:05 | REPLY |   

pio  

わああ~

隼くんまわされずにすんでよかった~。
周二くんのワルぶりとと隼くんのかわいさの対比に
ぞくっときますな~。(・▽・;)
「抱いてくれ……」
気になる。気になるぅ~。。。ヨダレ。

ありがとうございました。

2010/07/27 (Tue) 15:32 | REPLY |   

kikyou  

こんにちは

始めまして「天使の箱庭」のkikyouと申します。

前話を読んだ時「面白い!」と思ったのですが
読み逃げしてしまいました^^;

続編読めて嬉しいです。
思ってもいない展開の前編、そしてこの後どう進展していくか楽しみです。

又寄らせてもらいますネ。

2010/07/27 (Tue) 15:16 | EDIT | REPLY |   

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