小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・70
「あの・・・。いつか海広を連れてきます。話をしてやってください。」
「あなたは、みぃちゃんが女の子になっても平気?」
目の前にいるたくましい胸板を持ったまゆちゃんは、俺にそう聞いてくるが俺はまだ答えを持っていなかった。
ずっと男の子として育ててきたのに、いきなり女の子だといわれても整理が付かないのが本音だった。
ただ、わかっているのは海広は何があってもかけがえのない俺の子どもで、何物にも変えがたい大切な存在だと言うことだけだった。
みぃの為なら、迷わず火の中に飛び込むことも出来ただろう。
それだけは実証済みだから、自信を持って言える。
「わかりません。だけど、世界中が敵になっても俺だけはみぃの味方でいます。」
「やっだ~!それは、恋人同士の言う台詞よぉ。」
厚い平手で、ばんばんと叩かれた背中が痛かった。
まゆちゃんは、正面から俺を抱きしめて耳元にささやいた。
「いい?何でもいいから、お金で買えないものをみぃにあげてね。」
「それは、一体・・・?」
「そうね、宿題。」
頬に分厚い唇が触れて、言った言葉をどう取れば良いのか成瀬に助けを求めたが、成瀬は一言、まゆちゃんに食われちまえと恐ろしい事を平気で言う。
「やっだ~、成瀬ちゃんったら。いただけるものなら、今すぐにだっていただきたいわよぉ。好みだもん。」
苦笑するしかなかった。
男二人でゲイバーの梯子をした挙句、閉店ぎりぎりまで愛を語らって店を出たという態に見えるだろうか。
宿題を貰って、店外にでたら徹夜明けの目にネオンサインがちかちかと沁みる。
これでスペースマウンテンに乗ったりした日には、俺の中の消化されないで残っているアルコールに火がついて吐くだろうと容易に想像できる。
みぃが、大張り切りで一緒に乗ろうと誘うのは、目に見えて明らかだった。
まずい・・・と思ったが、一目で眠っていないとばれたようだ。
キャラクターが勢ぞろいで出迎える門の前で、俺の酷いクマを見て、朱里が笑った。
「うわ~、なんて顔してんの、周二叔父さん。二日酔い?」
「パパ、大丈夫?頭、痛くない?」
やっぱり、パパのみぃはいい子だなあ・・・と目を細めたら、珍しく腕にぶら下がってきた。
行き交う人の目に俺達親子は、どう映っているんだろう。
「あ、見て。可愛い、あの子。」
恋人同士らしい女の子がすれ違い様、小さくつぶやくのが聞こえた。
彼女の目に、みぃはどう映っているんだろう?
みぃが朱里と一緒に買いに行った洋服は、俺に気を使ったのか、思ったよりもかなり地味目だった。
だが、これまでみぃがお下がりで着ていた色あせた原色のものではなくて、ちゃんと似合っていた。
襟のない白のシャツには肩のところで、細いピンタックが何本も寄せられていて、ふんわりとした短いワンピースに見える。
膝上までの黒いニーハイソックス(?)をはき、同じ黒いデニムのショートパンツ。
後は、小さなベスト・・・こうして眺めてみると贔屓目でもなんでもなく、海広はずいぶん綺麗な子供だった。
驚いたことに、俺はみぃが整った顔をしているなんて、気に留めたこともなかった。
気がついていなかったと、言うべきかも知れない。
緑や青の原色の擦り切れたトレーナーが、海広に似合わないのは感じていたが、お譲りだからそんなものだろうとしか思ったこともない。
これまで、気が付かないで可哀想なことをしてしまったのだろうか。
海広が家を出るまで、何も気が付かなかった馬鹿な親父は、今も何も分かっていない。
ただ、今だけはこの明るい楽しげな笑顔が有ればいいじゃないかと思った。
突然突きつけられた、「女の子になりたい」と言う息子の願い。
まゆちゃんは、まだわからないわよぉと言っていたが、どうなんだろう。
成瀬に聞いたら、なるようにしかならないと言われた。
「お金で買えないものをあげて。」
みぃ・・・何が欲しい・・・?
「お金で買えないもの」・・・すごく難しい宿題です。
いつもお読みいただきありがとうございます。拍手もポチもうれしいです。
気が付くとカウンターが回っていて、びっくりしました。←鈍いです。
すごい作家さんがいっぱいいらっしゃって、勿論桁も全然違うのですけど20000hitなんて、想像もして無かったですから思わず、きゃあ~っになってます。
キリ番でこんなの書いてみる?て言ってくださったら嬉しいです。
生意気ですけど、もし良かったらリクエストしてくださると初めてなので、此花はりきります。 あ、でも、くんずほぐれつのR指定のすごいやつは、たぶん無理かも・・・。 此花。←この、いくじなしっ。
にほんブログ村
にほんブログ村
「あなたは、みぃちゃんが女の子になっても平気?」
目の前にいるたくましい胸板を持ったまゆちゃんは、俺にそう聞いてくるが俺はまだ答えを持っていなかった。
ずっと男の子として育ててきたのに、いきなり女の子だといわれても整理が付かないのが本音だった。
ただ、わかっているのは海広は何があってもかけがえのない俺の子どもで、何物にも変えがたい大切な存在だと言うことだけだった。
みぃの為なら、迷わず火の中に飛び込むことも出来ただろう。
それだけは実証済みだから、自信を持って言える。
「わかりません。だけど、世界中が敵になっても俺だけはみぃの味方でいます。」
「やっだ~!それは、恋人同士の言う台詞よぉ。」
厚い平手で、ばんばんと叩かれた背中が痛かった。
まゆちゃんは、正面から俺を抱きしめて耳元にささやいた。
「いい?何でもいいから、お金で買えないものをみぃにあげてね。」
「それは、一体・・・?」
「そうね、宿題。」
頬に分厚い唇が触れて、言った言葉をどう取れば良いのか成瀬に助けを求めたが、成瀬は一言、まゆちゃんに食われちまえと恐ろしい事を平気で言う。
「やっだ~、成瀬ちゃんったら。いただけるものなら、今すぐにだっていただきたいわよぉ。好みだもん。」
苦笑するしかなかった。
男二人でゲイバーの梯子をした挙句、閉店ぎりぎりまで愛を語らって店を出たという態に見えるだろうか。
宿題を貰って、店外にでたら徹夜明けの目にネオンサインがちかちかと沁みる。
これでスペースマウンテンに乗ったりした日には、俺の中の消化されないで残っているアルコールに火がついて吐くだろうと容易に想像できる。
みぃが、大張り切りで一緒に乗ろうと誘うのは、目に見えて明らかだった。
まずい・・・と思ったが、一目で眠っていないとばれたようだ。
キャラクターが勢ぞろいで出迎える門の前で、俺の酷いクマを見て、朱里が笑った。
「うわ~、なんて顔してんの、周二叔父さん。二日酔い?」
「パパ、大丈夫?頭、痛くない?」
やっぱり、パパのみぃはいい子だなあ・・・と目を細めたら、珍しく腕にぶら下がってきた。
行き交う人の目に俺達親子は、どう映っているんだろう。
「あ、見て。可愛い、あの子。」
恋人同士らしい女の子がすれ違い様、小さくつぶやくのが聞こえた。
彼女の目に、みぃはどう映っているんだろう?
みぃが朱里と一緒に買いに行った洋服は、俺に気を使ったのか、思ったよりもかなり地味目だった。
だが、これまでみぃがお下がりで着ていた色あせた原色のものではなくて、ちゃんと似合っていた。
襟のない白のシャツには肩のところで、細いピンタックが何本も寄せられていて、ふんわりとした短いワンピースに見える。
膝上までの黒いニーハイソックス(?)をはき、同じ黒いデニムのショートパンツ。
後は、小さなベスト・・・こうして眺めてみると贔屓目でもなんでもなく、海広はずいぶん綺麗な子供だった。
驚いたことに、俺はみぃが整った顔をしているなんて、気に留めたこともなかった。
気がついていなかったと、言うべきかも知れない。
緑や青の原色の擦り切れたトレーナーが、海広に似合わないのは感じていたが、お譲りだからそんなものだろうとしか思ったこともない。
これまで、気が付かないで可哀想なことをしてしまったのだろうか。
海広が家を出るまで、何も気が付かなかった馬鹿な親父は、今も何も分かっていない。
ただ、今だけはこの明るい楽しげな笑顔が有ればいいじゃないかと思った。
突然突きつけられた、「女の子になりたい」と言う息子の願い。
まゆちゃんは、まだわからないわよぉと言っていたが、どうなんだろう。
成瀬に聞いたら、なるようにしかならないと言われた。
「お金で買えないものをあげて。」
みぃ・・・何が欲しい・・・?
「お金で買えないもの」・・・すごく難しい宿題です。
いつもお読みいただきありがとうございます。拍手もポチもうれしいです。
気が付くとカウンターが回っていて、びっくりしました。←鈍いです。
すごい作家さんがいっぱいいらっしゃって、勿論桁も全然違うのですけど20000hitなんて、想像もして無かったですから思わず、きゃあ~っになってます。
キリ番でこんなの書いてみる?て言ってくださったら嬉しいです。
生意気ですけど、もし良かったらリクエストしてくださると初めてなので、此花はりきります。 あ、でも、くんずほぐれつのR指定のすごいやつは、たぶん無理かも・・・。 此花。←この、いくじなしっ。
にほんブログ村
にほんブログ村
- 関連記事
-
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・77 (2010/09/24)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・76 (2010/09/23)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・75 (2010/09/22)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・74 (2010/09/21)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・73 (2010/09/20)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・72 (2010/09/19)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・71 (2010/09/18)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・70 (2010/09/17)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・69 (2010/09/16)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・68 (2010/09/15)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・67 (2010/09/14)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・66 (2010/09/13)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・65 (2010/09/12)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・64 (2010/09/11)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・63 (2010/09/10)