小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・77
「ぼくは、四之宮君のこと、小学校の時から本当に大切な友達だと思ってる。」
「好きか嫌いかって聞かれたら、すごく大好きだと思う。きっと、お友達の中では一番大好きだよ。」
四之宮君は真っ赤な顔をして、頷きながら、ぼくの話を真剣に聞いてくれた。
「四之宮君は、ぼくのことどんな風に好き?」
「どんな風って・・・可愛いとか?好きじゃなきゃ、キスなんてしないだろ。」
四之宮君は、熟れたトマトみたいに耳まで真っ赤だった。
何かぼくも、どきどきする。
「でも、本当のこと言うとさ。」
四之宮君は、松原のことすごく可愛いと思うけど、つきあいたいかどうかは自分でも分からないんだと、言いはじめた。
「だって、松原は男だからさ。」
ちょっと心に風が吹いた。
オトコダカラ・・・?
お腹がきゅうっとなる。
「そうなんだ。じゃあ、ぼくたち、親友でもいいのかな?」
「親友?恋人にはならないの?」
「うん。」
あのね。親友と言う言葉はちょっと変かもしれないけど、心の友って書くんだよって言ったら、四之宮君はだったらいいよって言ってくれた。
ぼくは、四之宮君には恋人よりも、何でも話せる大事な友達になって欲しいと、懸命に告げた。
親友なんて呼べるのは、この先もきっと四之宮君だけのような気がするからって。
ぼくには全ては話せないこともあるけど、四之宮君はすごく優しい笑顔で、包んでくれる。
松原は女よりなよなよしているし、内股で歩くし、非力で体力もないけど、芯はしっかりしてるって褒めてくれた。
「そうかなぁ?でも、その言い方じゃ、あんまり褒められてる気がしないんだけど・・・。」
四之宮君は、真面目な顔で頭を振った。
「褒めてるよ。だって、松原は上級生に毎日いじめられても、ちゃんと学校に来たじゃないか。それだけでもすごいよ。」
それはね、本当は大好きなパパに、心配かけたくなかっただけ。
そういえば、いつの間にかいじめが止んだのはどうしてかなと思っていたけど、四之宮君が教えてくれた。
ぼくの知らないところでクラスの代表が、先生抜きで、いじめについて何度か話し合いをしたらしかった。
ぼくが気に入らない担任を学校から追放したと言うありえない根も葉もないデマや、もっと酷い噂も、誰が言い出したんだと言う話になったらしい。
家で聞いた大人たちの話を、持ち寄ってつなぎ合わせてゆくと、6年生の噂話の方がおかしいんじゃないかという事になったらしい。
オンナノコミタイナ松原が、そんなことするわけがないよと、何人かが言ってくれたみたい。
何か、それを聞いたときはすごく嬉しかった。
ずっと一人ぼっちだったけど、ほんの少し味方がいたような気がする。
そして、ぼくの方が被害者だったという真相はいつの間にか、みんなの知るところになっていた。
どこまで皆が知っているかは、よく分からないけど、ともかくいじめは解決した。
言い訳しないところが、超・男らしかったと女子にも言われて困ってしまったけど、いわれのないみんなの誤解が解けたのは、すごく嬉しかった。
だって、大勢の中で独りで居続けるのは、本当に悲しかったから。
ぼくは、初めて嬉しくてちょっと泣いた。
いじめが解決しました。
うんと長い間、悲しい目に合っていたみぃくん。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。拍手もポチもうれしいです。ほんの少し、ランキングが上がってきました。どきどき(//▽//) 此花
にほんブログ村
にほんブログ村
- 関連記事
-
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・84 (2010/10/01)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・83 (2010/09/30)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・82 (2010/09/29)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・81 (2010/09/28)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・80 (2010/09/27)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・79 (2010/09/26)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・78 (2010/09/25)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・77 (2010/09/24)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・76 (2010/09/23)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・75 (2010/09/22)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・74 (2010/09/21)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・73 (2010/09/20)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・72 (2010/09/19)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・71 (2010/09/18)
- 小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・70 (2010/09/17)