こんにちは、あかちゃん・4
どちらかと言うと、思い切り「役立たず」みたいだ。
沙耶さんは、病院から帰ってきてしばらく横になってる方がいいからと言っても、とても横になんかなっていられないわ・・・と眉をひそめて呟いた。
「きゃあ・・・洸ちゃんが、ミルク吐いたぁ!わ~・・・どうしよう。パパ、小児科っ、小児科の電話。」
その横では、パパが受話器を握りしめ、ぼくは赤ん坊をその辺りにおいて電話帳を繰っていた。
「みぃくん。あなたの職業はなんですか?」
腕組みした沙耶さんが、ぼくに冷たい視線を送りぼくはそこでやっと気が付くのだ。
「あぅ~。い・・・医者です・・・」
「乳幼児が、飲んですぐミルクを吐くのは?」
「・・・よく、あることです。」
「お父さんも、受話器しまってくださいね。パパと一緒におじいちゃんまでおろおろしちゃって、困った人たちでしゅね~、洸ちゃん。」
洸ちゃん・・・と、沙耶さんは名前を呼ぶ。
でも、パパ(おじいちゃん)と、ぼくと、成瀬のおじさん、ユリアちゃんは「天ちゃん」と呼んでいた。
「洸ちゃんは天使みたいだから、いっそテンシって呼んでもいいかな。」
ある日、思い切って打ち明けたら、沙耶さんはいくら何でもそれはだめよと、あきれ果てた。
「どこかで、この子のこと、どうしてテンちゃんって呼んでるんですかって、聞かれたら、どう返事するの?」
「あ・・・の。天使みたいに可愛いから・・・じゃ、だめ?」
「だめ!どこの世界に、自分の子供を天使だなんて呼ぶ親がいるの。もし、居るなら逢ってみたいわ。」
沙耶さん以外の、その場に居た人間(いつもの4人)が「はい。」と手を上げた。
「でもなあ、沙耶さん。」と、すかさずパパも反論。
「客観的に見ても、この子は、ほかの子と比べても本当に可愛いぞ。」
がんばれ、パパ!
「いくらおじいちゃんでも、他所の子と比べてはいけません。どこも自分の子が一番可愛いんですから、失礼です!」
正論に、パパ(おじいちゃん)はぐぅの音も出さず撃沈した。
「でもさ、乳母車で散歩に行っても、すぐに人が見に集まってきてさ。この子ってほんと可愛くて、天使みたいですね~って言われるしな。」と、援護射撃はしょっちゅうやって来ては連れ出そうとする成瀬のおじさん。
日々、洋服や玩具のプレゼント攻撃を受けている。
はっ!まさか洸ちゃん、狙われてる・・・?
「洸ちゃんには、羽なんか付いてませんよね~。」
沙耶さんは常識的に見て、だめなものはだめと意地になっていたけど、その後しばらくすると諦めて「もう・・・テンちゃんならいいわ・・・」と折れてくれた。
手先の器用なユリアちゃんが、テンちゃんの全てのベビー服の背中に、薄い羽を作って縫い付けてしまったから。
「だって~、洸ちゃんはユリアの天使だもん。ほら、似合う~、テンちゃん~。」
きゅうと抱きしめられたお礼に、テンちゃんはよだれでペタペタの手で、ユリアちゃんの綺麗な顔を撫でていた。
「や~ん、テンちゃん、ユリアのこと好きみたい~。」
「こいつ、面食いだな。」
「や~ん、成瀬さんったら。」
「きゃっ。」
相変わらずの、ばかっぷるだったが、テンちゃんが初めて声を上げて笑った。
「きゃあっ!今の聞いたーーー!?」
光につつまれている気がする。
洸一を中心に、世界が回っていた。
幸せな、幸せな時間。
このまま、時が止まればいいのにと思います。
でも、子どもは成長してゆくし天使のままではいられません。
後、二話続きます。お読みいただければうれしいです。
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