こんにちは、あかちゃん・6
洸一の前ではなるべく、男らしく、父親らしくしようと思ってがんばっては来たけれど、きっと無理がありすぎた。
父親参観日にスーツでネクタイして行ったのに、今日はお父さんのご都合付かなかったんですね、と担任は笑顔を向けた。
髪も思い切って、長めだけど切ったのに・・・。
「あの。松原洸一の父親です。」
「はっ・・・!?あ、あ~っ、すみませんっ!」
いつもそんな風だった。
ぼくは、時々、洸一が向ける全幅の信頼におぼれて、歪(いびつ)な自分のことを忘れてしまうのだ。
『オンナミタイナ父親』・・・きっと、それが世間から見たぼくの姿。
中途半端なぼくに対する苛立ちで、まだ幼い洸一が荒れたのだと思うとぼくは申し訳なさでいっぱいになった。
他所のパパみたいに、キャッチボールもまともにできないし、サッカーも洸一は運動神経が良すぎて、たまに帰ってくる翔兄ちゃんと朱里兄ちゃんじゃないと相手にならない。
運動会の親子リレーも、いつも足の速い沙耶さんが走っていた。
風邪で寝込んだときに、枕元で本を読んだりずっと様子を見ていること、そんな誰にでもできることしかぼくにはできなかった。
もし、ぼくのせいで洸一が、ぼくが受けたようないじめに遭っていたとしたら・・・?
顔の赤い痣が、そのせいだったとしたら・・・。?
クラス中に冷たくされた自分の過去を思うと、自分のことは仕方がないとしてもたまらなかった。
洸一を、そんな目に遭わせたくなかった。
でも・・・どうすればいい・・・?
ぼくに何ができるだろう・・・
キッチンでぼんやりしていると、気持が揺れてどうにもいたたまれない。
沙耶さんと洸一の帰りを待っていたが、じっとしていられなかった。
二人が帰宅したとき、冷蔵庫の缶チューハイ一本でしたたかに酔ったぼくは(体質的に合わないらしい)、泣きながら同じ言葉を何度も繰り返していたらしい。
「ごめんよ・・・洸ちゃん・・・」
「男らしくなくて、ごめんよ・・・洸ちゃん・・・でも、パパは、これ以上は・・・」
「パパ。」
「お布団敷いてくるから、ここにいて、洸ちゃん。」
沙耶さんが、去ってゆくのが見えた。
椅子から落っこちても、ぼくはぼんやりとしたまま、意識の中に見える洸一に向かって謝り続けていた。
「できなくてごめんよ、洸ちゃん。」
「パパ。謝らないで。」
「洸ちゃん・・・ごめんよぉ・・・」
「ぼくこそ、ごめん。」
酔っ払ったぼくの頬に、天使の涙が落ちてくる。
「ぼく、パパのこと好きだよ・・・嘘じゃないよ。世界中で一番好きだよ。」
「こんなに泣かせて、ごめん・・・」
パパが好きだから、パパのこと女みたいって言った相手を許せなくて、片っ端からぶん殴ることにしたのだと言う。
それは、後から沙耶さんが教えてくれた。
「悔しかったんだって。」
何故、相手を殴ったか、パパが理由を聞いたら悲しむ、だから一緒に行くのはママがいいと言い張った。
それが、小さな洸一なりの毅然とした正義だった。
沙耶さん、ぼく達の息子はやっぱり天使だったよ。
ほろほろ涙が零れるのは、アルコールが残っているせいだね、きっと。
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2回で終わると豪語したくせに・・・あら。数え間違いしてました。もう一回あります。 (//▽//)きゃあ。此花
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