こんにちは、あかちゃん・3
新しい命に立ち会う喜びを、何に例えようかと思ったがそれはもう言葉では例えようがなかった。
パパもぼくに似ているといって大喜びで、二人してうれし涙で抱き合うほどの幸せだった。
タイから帰って来たばかりの、成瀬のおじさんは「みぃに、そっくりだ。」といって、こちらも感動の面持ちだった。
成瀬のおじさんは、実はぼくの亡くなったママの恋人だったりする。
もう、写真を見てもぴんと来ない、ぼくと同じ顔の本当のお母さんと、大好きな洸兄ちゃんが、万難を排しこの命を護ってくれた・・・そんな気がする。
正直に言ってしまうと、オンナノコみたいなぼくに似てしまったら、社会的には余り良いことないんじゃないかなと密かに思ったが、この天使はあっという間に周囲を夢中にさせてしまった。
眠っているといっては、皆が覗き込み、起きているといっては、皆が覗き込んだ。
くしゃみ一つに、そこにいた全員(おじいちゃん、ぼく、何故か成瀬のおじさん、ユリアちゃん)がバスタオルを持って走ってきたのには、沙耶さんが苦笑していた。
「一枚で、いいです。」
「じゃ、これ。」
その場の全員がタオルを差し出した。
オムツを替えるのも大騒ぎで、新生児のぴちぴちうんちすら「・・・愛おしいもんだな~。」とパパがしみじみ言って、沙耶さんをどん引きさせた。
でも、実はぼくも「この子は、うんちすら可愛い」そう思っていた。
・・・どうしようもない。
ミルクを飲んだ後の、小さなげっぷ。
小さな手のひらをつつくと反射的に握り返してくる指。
へその緒がなかなか取れないで、ガーゼをばってんに貼ったばんそうこう。
かえるのような、つるつるのおなか。
小さな爪、柔らかな茶色の髪の毛の一本まで、全てがたまらなく愛おしかった。
『命名・松原 洸一(まつばらこういち)』
パパが字画を考え、考えてくれた名前には大好きだった洸兄ちゃんの名前が入っている。
亡くなった人の名前を付けるのは、その人の人生を背負わせる意味があるから良くないとは聞くけれど、きっと洸兄ちゃんが君を護ってくれるよ。
君のパパを護ってくれた洸叔父ちゃんが、いつも傍にいてくれるよ。
甘い匂いのするほっぺたに、祝福を贈る。
『誰よりも、誰よりも、幸せにおなり、洸一。』
みんな、めろめろです。
どんな子に、育つでしょう。どうやら相当の美人さんになりそうです。想像してください。 此花
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