Resident of the miniature garden<箱庭の居住者>
そこにいるのは、息をのむほど端整な人達ばかりだった。
それぞれが美しい一輪花となり、華やかに個性を持って咲き誇っている、そんな気がした。
彼らが佇む空間は、まるで天使が造った完璧な箱庭のように見えた。
ぼくは跳ね上がった心臓の音が、周囲に聞こえるのではないかと心配しながら、周りを見渡し胸をきゅっと押さえた。
広い部屋の中には英国風アンティークの家具が配置され、いまどき珍しい大きな手巻きの置時計がゆっくりと時を刻んでいる。
人々が、洒落た器に盛られた料理に手を伸ばすその所作すら、計算された動線のように美しい。
まるで光に包まれた午餐の風景を描いた一枚の絵画のようだと思った。
思わず、ほうっと…息をついた。
外から名を呼ばれると、そこから数人が消えてゆく。
柔らかな薔薇色の頬を持った青年が、小さく呟いた。
「ぼくが呼ばれるのは、今度はもう少し先かな。早く「あのかた」に呼んでいただきたいのだけれど・・・」
「あのかたって、誰ですか・・・?」
つい、言葉の端を捉えたぼくに向かって、天使の微笑みを持った青年が小声で告げた。
思わずうっとりと見とれてしまって、ぼくは言葉を天上の音楽のように聴いていた。
「新しい世界に通じる、秘密の扉の鍵は「あのかた」だけが持っているんだよ。」
「えっと・・・そういえば君は、新しい子かな?」
ずいと正面から覗き込まれて澄んだ瞳に驚き、ぼくは言葉を失ってこく・・・と、頷いた。
「そう・・・。君も、幸せになるために来たんだね。」
光に溶ける優しい微笑を浮かべた人が、そっと手を伸ばし僕の頬に触れた。
きっと僕は硬直したまま、耳まで真っ赤になっていたと思う。
ずっと眺めて居たかったけど、その人は背の高い誰かに声をかけられて、満ち足りた輝く笑顔を向けると思い人の腕を取った。
自然に影が重なるように、二人は抱き合い深い大人のキスをした。
絡む視線だけで、どれだけ相手を愛しているか分かるような、完結した世界。
ぼくも、いつかはあんな風に誰かと出会って恋をし、安らげる永遠(とこしえ)の愛を知りたいと思う。
胸の奥が痺れ、未知の感情が溢れるような気がした。
ふくいくと淹れたての珈琲の香りが、鼻腔をくすぐる・・・。
「これ、何杯目だっけ?」
「あ、二杯目です。」
「いつも、いい香りだね。」
「ありがとうございます。」
椅子をすすめてくれた人が、周囲と語り合いながら近づいてくる。
壁際の椅子に座る僕の膝に、そっとカップを乗せてくれた。
「あまり、苦いのは駄目でしょう?」
「あ、はい。」
「カフェ・ラテにしておいたよ。君はまだ・・・何も知らないんだね。」
「何を・・・?」
返事に困ったぼくの背後から、そっと誰かが小さく耳元にささやいた。
「ほら。「あのかた」が君に名前をくださるよ。行っておいで。」
漆黒の髪に、濡れた黒曜石の瞳の人はくすり・・・と笑う。
華奢だけど、凛とした強いまなざしの怜悧な美貌の人が、ぼくに呼ばれたことを告げた。
その向こうには、猛禽類の鋭さを持ってぼくを射るように見つめる人がいた。
「君も、うんと優しくしてもらいなさい。」
「ぼくたちのように・・・ね。」
その後、その人が交わす言葉は聞こえなかった。
彼もまた、二人だけの世界に行ってしまったから・・・
ぼくは、「あのかた」に逢える緊張に指を震わせて、重い扉をノックした。
空気に混じる薄い煙草のフレーバー・・・
「新しい子だね。待っていたよ。」
・・・ぼくは、その人の名前を知っていた。
おずおずと眼前に立ち、すべてを晒した。
ぱさりと、足元に衣擦れの音がする。
「ここに、おいで。」
「恥ずかしがらないで、僕にみんな見せて。」
「さあ・・・君をどうやって可愛がってあげようかな。」
視線がぼくの中心を熱くさせる。
耳元に僕の「名前」が告げられた。
これからぼくは、この人の意のままに生きてゆく。
アダムが楽園で神様に愛されたように、ぼくの肋骨からただ一人の愛する人を創ってください。
ぼくの震える薄い唇が、創造主の名を呼んだ。
「kikyouさん・・・」
おこがましいと思いながら、ブログ開設一周年を迎えられた大好きな作家さんにあてて書きました。・・・今回も言い訳から入る、情けない此花。(だって、小心者だも~ん・・・(´・ω・`)どきどき・・・)
駄文でごめんなさい。でも、一生懸命書きました。
多くの方に愛される場所で、きっと新しい天使が生まれる時はこんな感じ…と思いながら書きました。
一人のファンとして、これからもたくさんの愛おしい天使に逢いたいです。
いつかは此花も多くの方に愛される、白い羽をもった天使のような少年を書きたいです。
気持だけ受け取っていただければと思って、そうっとアップします。
「kikyouさま、ブログ一周年おめでとうございます!」 此花
|ω・`) ご本人には…あとで言う~・・・
ヾ(。`Д´。)ノ彡「早、ご挨拶に行けやっ!あんぽんたんっ!」←誰・・・?
- 関連記事
-
- 獅子の背に花散る (2011/07/14)
- お礼ss 夕暮れの色鉛筆 (2011/05/10)
- Resident of the miniature garden<箱庭の居住者> (2011/02/04)
- 無限の森の王子さま (2010/11/10)
- 「三年目のしるし」 (2010/10/12)
- 「一輪花・桔梗」 (2010/10/11)