タンデムシートで抱きしめて 6
恐怖に歯の根が走り、寒くもないのにカチカチと鳴った。おにいちゃん…この人は何?知らない人……。
何をしようとしているの…嗅がされた薬品で頭はぼうっとしたままだった。聞いたことの無い音楽がどこかで鳴る。携帯電話…?
「…ああ、俺。うまくいったよ、真佑子。お前の言うとおりだ、俺の好みどんぴしゃだ。ああ、可愛いなぁ…これから味を見る。黙ってろって。ああ…酷い目になんて合わせないさ。俺が、気持好くなるだけさ…けけ…っ。」
吐きそうになっているぼくの顔を捕まえて、その人・・・人ではなかったかもしれないけど、ぼくにキスをした。歯を食いしばって、顔を左右にぶんぶん振ろうとしたけど逃げられなかった。
ぼくは、熟した桃の様に頭からがぶりとかじられてゆく。植木鉢の底に張り付いているぬらぬらとしたなめくじが、頬を這う。
涙でぐちゃぐちゃになって震えるぼくの唇をこじ開けて何かが入ってくる。気持ち悪くて思いっきり噛んだら、そいつは叫んで飛びずさった。
「この野郎っ!優しくしていればつけあがりやがって!許さないぞ!」
ほっぺたを多分思いっきり殴られたんだと思う。真っ白になった頭に火花が散った。
「怖がらせるだけでいいと言われたけど、犯ってやる!くそガキ。もう二度と、大好きなお兄ちゃんに逢えなくなっても良いんだな。」
足首を捕まれて、ぼくは「いや、いや…」と、一生懸命ふるふると頭を振った。
「おにいちゃんに逢えなくなるのはいや!」
叫んだはずだけど、自分の声は聞こえない。ぼうっとした視界に「変質者」の顔だけが大きく写る。
「おにいちゃん…助けて。」
あ、声が出た。
「おにいちゃーーーん!」
「黙れ!」
思い切り打たれて、鼻血がたらたらと胸に零れて散った。
「じっとしていないと、もっとぶつよ。おにいちゃんと会っても、誰か分からないような顔になりたい?つぶれたトマトみたいになってもいいのかな。」
いやいや…と顔を振る。怖くて、どうしていいかわからなかった。
「じっとしてる?約束できる?」
こくりと頷いた。
「じゃあ、そこに立って。」
公衆トイレの便座に、ぐらぐらする頭で何とか立った。半ズボンは奪われて、かわいそうなぼくのおちんちんがしょんぼりと搖れる。
「ああ…可愛い。」
恐ろしい指が、ぼくの中心で揺れるちっぽけなものを摘み上げた。
「あ~ん…いただきます。」
「ひ…ぃ…っ。きゃぁあーーーーっ!」
ありえない位、高い悲鳴が漏れた。
*****
…その時、どんどんとドアを叩く音がした。同時に電話も鳴って、男は慌てて飛びついた。
「なんだよ、真佑子。いいところで。はぁっ…?逃げろって、どういう…?げっ!」
ステンレス製のドアがガンガンと外から叩かれ、メキと内鍵を留めたねじが歪んで鈍い金属音を立てた。
「航太!そこにいるのか!航太!!」
「おにい…ちゃ…あーーーん…、おにいちゃーーーん!」
「今すぐ、ここを開けろ!航太に何かしたらただじゃおかないからな!まじコロすぞっ!」
蒼白の男は卑屈な笑みを浮かべ、ぼくの膝を掴んだ。思わず、思いっきり蹴りを入れたけど、腰が抜けて力が出ないよ…助けて、仮面ライダーフォーゼ。
「何もやってない!まだ、何もやってない!くそうっ、まだ何もやってないんだーーーーっ!どいつもこいつも邪魔ばっかりしやがってーーー!」
男は半狂乱になって、ぐるぐるとトイレの中を走り回った。
公園の管理者を見つけ、鍵を手に入れたおにいちゃんの友人が駆け付けてドアを開けた時、男は自分のズボンを脱ぎ捨てた間抜けな格好でぼくの細い膝頭を掴んで思い切り開き、襲い掛かろうとしていた。ぼくの目の前で、ライダーキックはダブルで決まり怪人はあっけなく沈んだ。
「航太っ、大丈夫か!!無事かっ!?」
「お、お、…おにいちゃん、ふぇ…っん。」
「遅くなってごめん。約束の場所に、航太はちゃんと来たのにな。」
「うわ~~~ん…、おにいちゃん~~…」
待ち合わせのベンチの側に、ぼくのランドセルと上履きケースが、投げつけたように転がっていた。何でも大切にする航太が、ベンチの上ではなく足元にひっくり返しておくわけはないと思ったおにいちゃんは、すぐさまお友達に招集をかけてくれた。
トイレの入り口で、脱げた靴を見つけたんだ、間に合って良かったと、おにいちゃんはくしゃくしゃの顔でぼくを抱きしめた。
「なんともないんだな?どこも痛くない?」
お友達が冷静に、僕のあちこちを調べた。
「無事で良かった。本当に良かった。航太…。」
ぼくは、ゆっくりと手を伸ばしおにいちゃんの首に回しかけたが、その手は下ろすしかなかった。ぽたぽたと涙が落ちて、小さな水たまりを作った。
「航太…?どうした、、どこか痛いのか?」
「…ぼくは…もう、おにいちゃんの所にお嫁にいけなくなりました…。」
「どうして?助けに来るのが遅くなったから、おにいちゃんのこと嫌いになったのか?」
どっと堰を切って溢れる涙の下から、ぼくは精一杯冷静に答えた。
「もう、綺麗じゃなくなってしまったもの。汚れてしまったら白いドレスのお嫁さんにはなれないんだよ…だ、だから、ぼく…もう一生、どくしんで過ごすの。さ…さよう…なら、おにいちゃん…。え~ん…。」
ぼくの拒絶の言葉を聞いて、お兄ちゃんは悲しそうな顔を向けた。
ヾ(。`Д´。)ノ 亜紀人:「こら~!航太に何さらしてくれとんじゃ、ぼけ~かす~!」
(`・ω・´) 此花:「だいじょぶ!ハピエンでっす!」
(〃゚∇゚〃) 航太:「らぶらぶ……?」
(`・ω・´) 此花:「このちん、ハピエンしか書いたことない。」←
■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ
お読みいただきありがとうございます。
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