小説・約束・10
田舎で友人になった勝次が、熱心に若旦那様にあって話がしてみたいと言うので、良平は父親のもとに連れてきた。
同じ年の勝次は、頬を上気させて緊張していたが、一生懸命ずっと知りたかったことを質問していた。
「日本で誰が一番えらいのか、知りたいんだって?」
「はい。父ちゃんは、天皇陛下の次にえらいのは、佐藤の殿様だって言うんだ。」
「えらいってどういうことなのか・・・。ずっと知りたかったけど、学校の先生は東条元帥が偉いって言うし、よくわからないんだ。だって佐藤の殿様以外、会ったことないんだもの。」
父はにこにこと笑っていた。
「そうか、勝次は頭が良いんだな。会って話をしてみなければ、誰が偉いか決められないってことだな?」
勝次は、ちゃんと話をしてくれる大人に初めて会ったという顔で大きくうなずいた。
「会ってみて、自分で考えて決めるというのはすごいことだよ。」
父は真剣に感心していた。
「じゃあね、そうだなあ・・・もし勝次の父ちゃんが佐藤の家の米を作らないとしたら、田んぼはどうなると思う?」
「え~と、草ぼうぼう・・・?」
「そうだよ。勝次の父ちゃんのおかげで佐藤の家のものは、ご飯が食べられる。しかも勝次の父ちゃんは米作りの名人だから、飯がすごく美味いんだ。」
「わたしはね、勝次の父ちゃんみたいな男をえらいと思うよ。」
「そんな。お医者様の若旦那様の方がえらいに決まってるのに。」
勝次は、すごく照れていたがうれしそうだった。
「それは違うよ、勝次。お医者ってのはね、学校で色々教えてもらうんだ。そりゃあ、勉強はとても難しいけどね。」
「勝次の父ちゃんは、誰にも教えてもらわずに米を作っている。それはすごいことだよ。」
「わたしは、早くに親を亡くした勝次の父ちゃんが一人でがんばってきたのを知ってるんだ。
傷痍軍人になって足が悪くなったのは、決してお父さんのせいじゃない。」
殆どが供出米として軍米になる刈り取りが進む、田んぼを見ながら父は明るく語った。
「だから、誰が偉いとか、偉くないなんて事はないんだ。佐藤の家で働いてくれる者はみな、わたしはえらいと思うし、好きだな。」
「勝次も、父ちゃんのようないい男になれよ。」
同じ年の勝次は、頬を上気させて緊張していたが、一生懸命ずっと知りたかったことを質問していた。
「日本で誰が一番えらいのか、知りたいんだって?」
「はい。父ちゃんは、天皇陛下の次にえらいのは、佐藤の殿様だって言うんだ。」
「えらいってどういうことなのか・・・。ずっと知りたかったけど、学校の先生は東条元帥が偉いって言うし、よくわからないんだ。だって佐藤の殿様以外、会ったことないんだもの。」
父はにこにこと笑っていた。
「そうか、勝次は頭が良いんだな。会って話をしてみなければ、誰が偉いか決められないってことだな?」
勝次は、ちゃんと話をしてくれる大人に初めて会ったという顔で大きくうなずいた。
「会ってみて、自分で考えて決めるというのはすごいことだよ。」
父は真剣に感心していた。
「じゃあね、そうだなあ・・・もし勝次の父ちゃんが佐藤の家の米を作らないとしたら、田んぼはどうなると思う?」
「え~と、草ぼうぼう・・・?」
「そうだよ。勝次の父ちゃんのおかげで佐藤の家のものは、ご飯が食べられる。しかも勝次の父ちゃんは米作りの名人だから、飯がすごく美味いんだ。」
「わたしはね、勝次の父ちゃんみたいな男をえらいと思うよ。」
「そんな。お医者様の若旦那様の方がえらいに決まってるのに。」
勝次は、すごく照れていたがうれしそうだった。
「それは違うよ、勝次。お医者ってのはね、学校で色々教えてもらうんだ。そりゃあ、勉強はとても難しいけどね。」
「勝次の父ちゃんは、誰にも教えてもらわずに米を作っている。それはすごいことだよ。」
「わたしは、早くに親を亡くした勝次の父ちゃんが一人でがんばってきたのを知ってるんだ。
傷痍軍人になって足が悪くなったのは、決してお父さんのせいじゃない。」
殆どが供出米として軍米になる刈り取りが進む、田んぼを見ながら父は明るく語った。
「だから、誰が偉いとか、偉くないなんて事はないんだ。佐藤の家で働いてくれる者はみな、わたしはえらいと思うし、好きだな。」
「勝次も、父ちゃんのようないい男になれよ。」
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