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Café アヴェク・トワで恋して 14 

ぺたりと座り込むと、整髪剤で完璧に整えた頭を床に擦り付けて、彼らは深く謝罪した。

「因縁つけて、申し訳ありませんでしたっ。」
「許してくださいっ。」

腰かけた松本は冷ややかな視線を向けた。
何処かで見た光景だなぁと、呑気に考えたりしている。

「増本はなんて言ったんだ?」
「……許してもらえるまで、帰ってくるなと言われました。すみませんっ。増本さんのお知り合いだとは露ほども知らなかったんで。二度とこんなことはやりませんから、勘弁してくださいっ!皿洗いでも、床掃除でも、呼び込みでも何でもやります。」
「要らねぇよ。お前らみたいなガラの悪いのが呼び込みなんぞしたら、店に誰も来ねぇだろ。」
「すみません……」
「それよりさ、お前ら、まだ高校出て何年も経ってないだろ?うちの店に難癖付けて来いと、誰かに頼まれたのか?」
「……勘弁してください。ダチを売るような真似はできないっす。」
「そうか、やっぱり誰かの差し金なんだな。まあ、いい。お前らにも、それなりの仁義ってものがあるだろうからな。だが、これからは、大人の付き合いってのも覚えるんだな。うかつに動いてっと、命取りになるぞ。増本には俺から、許してやれって口きいてやるよ。」
「ありがとうございます。」

ちらと、松本は様子を伺う直に視線を送った。

「直。話はついた。こいつらに飯食わせてやってくれるか?賄いでいい。」
「はい。」
「……でも、それじゃあ、申し訳ないっす。」
「そうっすよ、迷惑かけた上に飯まで食わせてもらうなんて。」
「増本に、飯食って来いって言われたんだろ?食って帰れ。」
「じゃあ、ゴチになります。」
「今回の事は、増本に免じて不問にしてやる。俺も直の前で大人げないことはしたくないからな。……だがもう一度同じ事やったら、まとめてなますに刻むぞ。覚えておけ。あいつに何かやったら、ただじゃおかねぇからな。」
「あいつって……」
「お前が手首掴んだ奴だよ。」

耳元でささやかれた浅田と言う男は、返す言葉もなく何度も必死に頷いた。
松本の前で、借りてきた猫のようになった三人のチンピラを、遠巻きに見ていたスタッフも、松本の笑顔に誘われるようにしてホールにやってきた。

「こいつらが謝りたいんだとさ。」
「みなさん。失礼な真似をしてすみませんでした。」

浅田に倣って、他の二人も頭を下げた。

「うちの増本さんと、こちらの店長さんがお知り合いだとは思いもよりませんでした。」
「え?店長って……ヤクザの知り合いがいるの?やだ~。」

由美の質問に、松本は素直に答えた。

「まあな。昔からの知り合いだ。こいつらも、ちょっと誤解したみたいなんだ。知り合いの店で、飯でも食って来いと言われたのを勘違いしたみたいだ。怖い目に遭わせて、悪かったな。」
「ほんと。すっごい迷惑。帰ったお客さんが気の毒だよ。また、来てくれるか心配だなぁ。」
「まあ、そう言うな。大丈夫だろ。」
「姐さん。すみませんでした。」
「でも、姐さん方の毅然とした態度は、かっこよかったすよ。」
「え~!?やだ~。嬉しくないよ。あたし、守ってあげたい女子めざしてんのに、姐さんはやめてよね。」

カタギにしておくのは勿体ないと言われて、なぜか由美は満更でもない風だった。




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