Café アヴェク・トワで恋して 11
尾上に責められている気がしていた。
それでも、そういわれても仕方がないと直は思う。
「……うん。何も気が付かなかったんだ。鍵をかけるときに、次からは電源もきちんと確認するようにするよ。尾上くんもみんなも心配かけてごめんね。」
「直くんが悪いわけじゃないよ。誰にも迷惑なんてかけてないじゃない。荒木さんと二人で、朝早くから頑張ってたんでしょ。ご苦労さまだよ。」
「ありがと、由美ちゃん。ボードにランチメニュー書いておいてくれるかな。メインは牛肉コロッケを出すから。」
「わかった。小鉢は?」
「ポテサラときんぴらと、雷こんにゃく、生野菜はサニーレタスとパプリカと生ハムなんだ。」
「それに、キャロットケーキが付くのね?」
「うん。」
「おいしそう~」
「仕込んでいるから、みんなのも焼くからね。」
「やった~!」
スタッフの女の子たちは、すっかり直のケーキのファンだ。
「あ、そう言えば、キャロットケーキって、生クリームとミントの葉を飾るんじゃない?」
「そうだけど……ミントがないから、何かで代用しようと思ってるんだ。間に合わせで、アラザンでも飾ろうかと思ってた。」
「ステンドガラスの所と、テーブルに挿してあるグリーンって、確かミントだよ。摘んでこようか。」
「尾上くん、ありがとう。だけど、あれがミントだって、よく気が付いたね。おれ、すっかり忘れてた。」
「いや……だってホールは、おれたちのほうが直くんよりも詳しいからさ。」
「じゃあ、おれ、荒木さんとスーパーに細かい買い出しに行ってくるから、後のことはお願いします。産直市から、荷物が届いたら、冷蔵庫にお願いします。」
「了解。」
直が荒木と買い物に出かけたのち、尾上は振り返ると女性スタッフに話かけた。
「あいつ。いつまでたってもとろいよな。いまだに皿は割るし、要領も悪いし。」
「え……?尾上。なんでそんなこと言うの?直くん、頑張ってるじゃない?料理に関してはとろくなんてないよ。むしろ、凄いって思うけどなぁ。」
「尾上くん。直くんにちょっと冷たいんじゃないの?直くんがあんたに何かした?」
怒ったようにそう言われて、尾上は話の方向を変えた。
「いや……だから、俺たちにできることは、なんでも手伝ってやらなきゃなって話だよ。年は食ってるけど、あいつ危なっかしいだろ?なんか、ほっとけないっていうか……さ。」
「そっか。確かに、守ってあげたい感じあるよね。直くん、おとなしくって可愛いし、見るからに小動物の感じだもの。」
「直くんには、店長がついてるから、大丈夫だよ。それよりも、尾上は直くんの事より、自分の事でしょ?大学の単位大丈夫なの?いくらお兄さんがお金を出してくれるって言ったって、いつまでもすねかじりじゃダメだよ。」
「まあね。兄貴もいろいろ大変みたいだし、おれも早く独り立ちしなきゃな。」
ぐいとひとつ背伸びをして、尾上はミントの葉を摘みに店内に戻った。
一枚ずつ柔らかい葉を摘まんで、浅い硝子の皿に並べる、その表情は硬かった。
本日もお読みいただきありがとうございます。
何やら怪しい、尾上の様子。
|д゚) どうなのかな~……
それでも、そういわれても仕方がないと直は思う。
「……うん。何も気が付かなかったんだ。鍵をかけるときに、次からは電源もきちんと確認するようにするよ。尾上くんもみんなも心配かけてごめんね。」
「直くんが悪いわけじゃないよ。誰にも迷惑なんてかけてないじゃない。荒木さんと二人で、朝早くから頑張ってたんでしょ。ご苦労さまだよ。」
「ありがと、由美ちゃん。ボードにランチメニュー書いておいてくれるかな。メインは牛肉コロッケを出すから。」
「わかった。小鉢は?」
「ポテサラときんぴらと、雷こんにゃく、生野菜はサニーレタスとパプリカと生ハムなんだ。」
「それに、キャロットケーキが付くのね?」
「うん。」
「おいしそう~」
「仕込んでいるから、みんなのも焼くからね。」
「やった~!」
スタッフの女の子たちは、すっかり直のケーキのファンだ。
「あ、そう言えば、キャロットケーキって、生クリームとミントの葉を飾るんじゃない?」
「そうだけど……ミントがないから、何かで代用しようと思ってるんだ。間に合わせで、アラザンでも飾ろうかと思ってた。」
「ステンドガラスの所と、テーブルに挿してあるグリーンって、確かミントだよ。摘んでこようか。」
「尾上くん、ありがとう。だけど、あれがミントだって、よく気が付いたね。おれ、すっかり忘れてた。」
「いや……だってホールは、おれたちのほうが直くんよりも詳しいからさ。」
「じゃあ、おれ、荒木さんとスーパーに細かい買い出しに行ってくるから、後のことはお願いします。産直市から、荷物が届いたら、冷蔵庫にお願いします。」
「了解。」
直が荒木と買い物に出かけたのち、尾上は振り返ると女性スタッフに話かけた。
「あいつ。いつまでたってもとろいよな。いまだに皿は割るし、要領も悪いし。」
「え……?尾上。なんでそんなこと言うの?直くん、頑張ってるじゃない?料理に関してはとろくなんてないよ。むしろ、凄いって思うけどなぁ。」
「尾上くん。直くんにちょっと冷たいんじゃないの?直くんがあんたに何かした?」
怒ったようにそう言われて、尾上は話の方向を変えた。
「いや……だから、俺たちにできることは、なんでも手伝ってやらなきゃなって話だよ。年は食ってるけど、あいつ危なっかしいだろ?なんか、ほっとけないっていうか……さ。」
「そっか。確かに、守ってあげたい感じあるよね。直くん、おとなしくって可愛いし、見るからに小動物の感じだもの。」
「直くんには、店長がついてるから、大丈夫だよ。それよりも、尾上は直くんの事より、自分の事でしょ?大学の単位大丈夫なの?いくらお兄さんがお金を出してくれるって言ったって、いつまでもすねかじりじゃダメだよ。」
「まあね。兄貴もいろいろ大変みたいだし、おれも早く独り立ちしなきゃな。」
ぐいとひとつ背伸びをして、尾上はミントの葉を摘みに店内に戻った。
一枚ずつ柔らかい葉を摘まんで、浅い硝子の皿に並べる、その表情は硬かった。
本日もお読みいただきありがとうございます。
何やら怪しい、尾上の様子。
|д゚) どうなのかな~……
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