小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・79
このままでいられるわけないって言うのは、自分でもちゃんと分かってる。
大人になる前に、自分で考えて答えを出す。
このまま男のままでいるのか、手術をして女の子になるのか、いつかは答えを出さないと、いけない。
医大生の洸兄ちゃんが、悩み事を独りで抱え込むのだけは止めろよと言う。
何があっても、みぃは僕等の大切なみぃだよ。
みぃが独りで困らないように、ずっと側にいてやるからと、洸兄ちゃんは言う。
だけど、ぼくは誰にも迷惑をかけないで一人で生きることをいつも考えていた。
大人になったら、誰でもお仕事をして独りで食べて行かなきゃならない。
パパだって、いずれ年を取るしぼくも年を取る。
いつまでも、今のままじゃいられない。
結婚も出来るかどうかわからないし、おじいさんになるのか、おばあさんになるのかも、よく分からない。
今のままの毎日が続けばいいなんて、さすがに思わなかった。
なりたいものを見つけたら絶対なれるように、お勉強だけはうんと頑張ったよ。
仕事の選択肢は広く持ってた方がいいと言うのは、洸兄ちゃんの口癖だ。
そして、家出から以降、ぼくは時々成瀬のおじさんと会うようになっていた。
おじさんはいつもぼくのことを、眩しそうに見る。
おじさんの大好きだったママに、よく似ているそうだけど、ぼくは残念ながらママほど華奢でもないし綺麗でもない。
でも、少しでもおじさんが喜ぶなら似ていてよかったと思う。
パパは時々ぼくを叱るけど、おじさんはお兄ちゃん達以上に甘やかしてくれるので、ぼくは成瀬のおじさんのことが大好きだった。
パパは、成瀬のおじさんのことは信頼していているみたいで、一緒に出かけても何も言わない。
成瀬のおじさんは、ママの大好きな人で本当ならみぃのパパになっていたかもしれないと、パパが言った。
どうしてもみぃが欲しくて、パパが無理矢理貰っちゃったんだけどね・・・だって。
土曜日の夕方遅く、成瀬のおじさんから電話があった。
「みぃに、一度逢わせたい子がいるんだけど、時間取れないか?」
いくら何でも遠いから、これからは無理だよと言いかけたけど、電話の向こうで誰かが、なにやら怒ったりわめいたりしているみたいだった。
ぼくに逢わせたい人って、誰なんだろう・・・?
「パパに、行ってもいいかどうか聞いてみるよ、待ってて。」
成瀬のおじさんが、ぼくに逢わせたい人がいるって言うのと伝えると、パパはすぐに駅まで車を回してくれた。
明日の夕方までには帰るからと告げて、ぼくは賑やかな町に向かった。
おじさんの住む町は、昼間と夜ではまるで顔が違う。
夜はさすがに酔った人も多くて色々な人の往来も怖くて、オフィスに独りで行くのは不安だったけど、おじさんが途中まで迎えに来てくれた。
「みぃ!」
手を振るおじさんの側にいるのは、ピンクのキャミソール・ドレスを着た、何だか砂糖菓子で出来たみたいな感じのふわふわの女の子。
「うっわ~・・・可愛い。」
思わず、声に出してしまった。
もしかすると、おじさんの「えっちのお仕事」の子かなぁ。
白いレースのボレロを羽織って、とてもよく似合っている。
いいなぁ・・・ぼくも、あんなの着てみたい・・・って、心の中の白いワンピースのオンナノコが羨ましそうに呟いた。
「こんにちわ。」
「こんにちわ。松原海広です。」
あれ・・・?この子、ちょっと声が低いのかな・・・?
風邪引きさん?
その子は、成瀬のおじさんのところに家出してきた子だって、おじさんが紹介してくれた。
新しい子が出てきました。
「おにゃのこ」かな。仲良くなれるといいね、みぃくん。 此花
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大人になる前に、自分で考えて答えを出す。
このまま男のままでいるのか、手術をして女の子になるのか、いつかは答えを出さないと、いけない。
医大生の洸兄ちゃんが、悩み事を独りで抱え込むのだけは止めろよと言う。
何があっても、みぃは僕等の大切なみぃだよ。
みぃが独りで困らないように、ずっと側にいてやるからと、洸兄ちゃんは言う。
だけど、ぼくは誰にも迷惑をかけないで一人で生きることをいつも考えていた。
大人になったら、誰でもお仕事をして独りで食べて行かなきゃならない。
パパだって、いずれ年を取るしぼくも年を取る。
いつまでも、今のままじゃいられない。
結婚も出来るかどうかわからないし、おじいさんになるのか、おばあさんになるのかも、よく分からない。
今のままの毎日が続けばいいなんて、さすがに思わなかった。
なりたいものを見つけたら絶対なれるように、お勉強だけはうんと頑張ったよ。
仕事の選択肢は広く持ってた方がいいと言うのは、洸兄ちゃんの口癖だ。
そして、家出から以降、ぼくは時々成瀬のおじさんと会うようになっていた。
おじさんはいつもぼくのことを、眩しそうに見る。
おじさんの大好きだったママに、よく似ているそうだけど、ぼくは残念ながらママほど華奢でもないし綺麗でもない。
でも、少しでもおじさんが喜ぶなら似ていてよかったと思う。
パパは時々ぼくを叱るけど、おじさんはお兄ちゃん達以上に甘やかしてくれるので、ぼくは成瀬のおじさんのことが大好きだった。
パパは、成瀬のおじさんのことは信頼していているみたいで、一緒に出かけても何も言わない。
成瀬のおじさんは、ママの大好きな人で本当ならみぃのパパになっていたかもしれないと、パパが言った。
どうしてもみぃが欲しくて、パパが無理矢理貰っちゃったんだけどね・・・だって。
土曜日の夕方遅く、成瀬のおじさんから電話があった。
「みぃに、一度逢わせたい子がいるんだけど、時間取れないか?」
いくら何でも遠いから、これからは無理だよと言いかけたけど、電話の向こうで誰かが、なにやら怒ったりわめいたりしているみたいだった。
ぼくに逢わせたい人って、誰なんだろう・・・?
「パパに、行ってもいいかどうか聞いてみるよ、待ってて。」
成瀬のおじさんが、ぼくに逢わせたい人がいるって言うのと伝えると、パパはすぐに駅まで車を回してくれた。
明日の夕方までには帰るからと告げて、ぼくは賑やかな町に向かった。
おじさんの住む町は、昼間と夜ではまるで顔が違う。
夜はさすがに酔った人も多くて色々な人の往来も怖くて、オフィスに独りで行くのは不安だったけど、おじさんが途中まで迎えに来てくれた。
「みぃ!」
手を振るおじさんの側にいるのは、ピンクのキャミソール・ドレスを着た、何だか砂糖菓子で出来たみたいな感じのふわふわの女の子。
「うっわ~・・・可愛い。」
思わず、声に出してしまった。
もしかすると、おじさんの「えっちのお仕事」の子かなぁ。
白いレースのボレロを羽織って、とてもよく似合っている。
いいなぁ・・・ぼくも、あんなの着てみたい・・・って、心の中の白いワンピースのオンナノコが羨ましそうに呟いた。
「こんにちわ。」
「こんにちわ。松原海広です。」
あれ・・・?この子、ちょっと声が低いのかな・・・?
風邪引きさん?
その子は、成瀬のおじさんのところに家出してきた子だって、おじさんが紹介してくれた。
新しい子が出てきました。
「おにゃのこ」かな。仲良くなれるといいね、みぃくん。 此花
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