輝夜秘(かぐやひめ)
竹取の翁(おきな)は十三年前、月光に導かれるようにして竹藪に分け入り、その子を拾った。
幼い美童が、何故そんな場所に置き去りにされたものか、詳しいことは判らない。
赤子でありながら、輝く美しさに翁は驚きその子にふさわしい名前を付けた。
「珠のように、美しいのう・・・」
「そなたの名は、なよ竹の輝夜(かぐや)じゃ。」
翁の腕の中で、何もわからずすやすやと眠る輝夜は、男子であった。
「輝夜秘(かぐやひめ)」
翁が竹藪で見つけた捨て子は、今や都ではそんなあだ名で呼ばれていた。
育てたらいずれは売り飛ばすはずの貧しい翁は、今は手塩にかけてその子を育てた。
いつかは元が取れるだろうと、ありったけの財産を輝夜秘につぎ込んだ。
翁は年頃になり、ますます輝く輝夜祕を傍らに呼ぶと、いつものように着物を脱いで横たわる様に告げた。
前の茎は清らかでなくては売れないから、幼い童子のころより後孔だけをいじり倒して、さんざんに凌辱している。
見つけた時からすでに光り輝くようだったその子は、翁の望み通り見目良く育ち、ぬば玉の黒髪で身体を隱しそっと身体を横たえた。
「力を抜いて、じっとしていよ。
「や・・・め・・・やめて・・・・」
「父さ・・・ま・・・どうぞ、やめて・・・」
力なく翁の骨ばった指を押し戻し、輝夜は寝所の薄い褥に上気した顔を埋めた。
ふいに立ち上る粗相の香りに、翁は不敵に顔をゆがめた。
「気をやってはならぬと言うたのに。茎に色が付けば、売り物には成らぬではないか、こやつめ。」
「ごめんなさい。お許しください、父さま。」
「・・・打たれるのはいや・・・いや。」
腰から後ずさる輝夜が見つめるのは、翁の手にある竹鞭だった。
願いも空しく、細い竹がしなると、輝夜の白い背中に赤い鞭痕をつけた。
「ああーーっ・・・!」
「こやつめ、まだこの義父を誘うか。」
「いや・・・誘ってなど・・・いやああっ!」
翁は輝夜の泣きぬれた小さな顔を掴むと、ぐいと下肢に押し当てた。
「そら、今宵も教えた通りにするのじゃ。奥へ、奥へと・・・呑みこむようにしてな。」
「満足させれば、久しぶりに魚を食わしてやろう、そら。」
「ぐ・・・っ、ふっ・・・う、えっ。」
鼻をつくすえた匂いに、喉元から吐き気が立ち上り、輝夜は嗚咽した。
泣くまいと思っても、しとどに頬は濡れこの長い地獄が終わる時だけを願っていた。
どれほど請うても、自らの細い茎に触れることは許されず、背後に回されて白く色を変えた両の手をきゅっと握り締めて耐えるしかなかった。
ゆらゆらと、開放を求めて腰が触れるのを、翁は目を細めて眺めていた。
眉をひそめ固く閉じた目蓋から、美しい珠が光を弾いて転がった。
吐息の中に、苦痛だけではない甘い物を認めていた。
「こやつ、熟れたな・・・」
山ほど居並ぶ求婚の貴公子たちに、そろそろ披露目をする時期と、翁はほくそ笑んだ。
長い時をかけて、育て上げた掌中の珠を撫でさすりながら、吐精できない苦しみに喘ぐ茎をなぶってやった。
この美しさならば、いずれ遅かれ早かれ奥の院にお住いの帝のお耳にも輝夜祕の噂は届くだろう。
いつかは、帝の寵愛を受ける輝夜の後見となり、この世の春を謳歌するわが身の姿を想像し翁は高く声を上げて笑った。
「初めは誰が良いかのう。」
背中の痛みと心の辛さに意識を手放しかけたら、知らない誰かが現れて輝夜の手を取り、さあ行こう…と言ってくれる。
「おいで、そなたを永遠に愛するのは、我独りだけだ・・・」
ちいさな胸の奥で、鼓動に隱れてささやく声がするのを、輝夜は知っていた。
本当なのかと問うても決して返事はなかったが、輝夜の内にはいつも誰かの希望があった。
「だれ・・・?あなたは誰なの・・・?」
「時が満ちれば、迎えに参る。その時が来るまで今は、堪えよ…耐えよ・・・」
あやすように優しい声に誘われて、輝夜がぽかりと見開いた目に写るものは、ただ広がる闇ばかりだった。
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魔道士のあとがきを書くつもりでしたが、お絵かきが間に合わず断念しました。
新しいお話はBL的昔話です。
誰もが知っている日本最古のsfです。
しばらくの間、お付き合いください。
ランキングに参加していますので、ひと手間おかけしますが、どうぞよろしくお願いします。此花
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