青い小さな人魚 (漆喰の王国) 2
侍女の話によると、隣国の精鋭部隊は、遠征に出たスルタンの留守を狙いすましたかのように攻め入り、後宮の女たちを連れ出したと言う。
薄いヴェールをはぎ取られ肌を晒して震える女たちは、この中の誰が妃なのかと尋ねられても、一人として口を割らなかった。女官たちは皆、優しい王妃が好きだったし、いつか勇猛果敢な太守が遠征先から取って返し助けに来ると信じていた。
苛立った部隊長は、次々に後宮の宝物を運び出すと、女たちの中から見目良いものだけを選び、小舟に乗せ沖へ漕ぎ出た。美貌の王妃もその中に含まれていた。
船の上では一人ずつ甲板に引き出され、中に王妃はいないかと詰問を受けた。さらわれた女たちは、奴隷女のようにすべての衣類を奪われると剥き身で並ばされた。
兵士たちは酒を飲みながら自分が乱暴する女を自由に選んだ。
震えながら順番を待つ女たちの中にいた王妃は、やがてヴェールを落とし進み出た。
「北の国に住む下賤の者たちよ。愚かなそなたたちには、貴人の区別もつかぬのか。」
滑らかな褐色の肌と煌めく琥珀の双眸が、部隊長をじっと見つめていた。青ざめた妃の口角がくっと上がった。
「その方が隊長か。……後宮、3000人の女の中でただ一人、スルタンを落とした、わらわのこの芳しい身体を味わってみたくはないか……?」
波打つ赤褐色の髪が陽を浴びて眩い宝冠となり、妃の身体を覆っていた。
大隊の部隊長が、ゆっくりと腰を上げた。
「気丈な王妃だ。それは、命乞いかな?」
「命乞いなどではない。交換条件だ。わたしの女官に手をつけずに解き放て。」
王妃は共に連れてきた女官たちの解放を望んだが、それは王妃次第だと部隊長はほくそ笑んだ。
「王妃さまには、囚われの身であることをお忘れのようだ。さあ、その強気もどこまでもつかな。喘げば甘い蜜が溢れると音に聞こえたその身体、北の王に成り代わり俺が試してやろう。何、全ては船上で起こったことだ。兵士全員が口をつぐめば良いだけのこと。いずれは身代金と引き換えに、恋しいスルタンの元へ帰れるだろうよ。」
「これから船の中では、子羊のように従順にふるまう事だな。俺を満足させてみろ、東の蛮族の女王。」
艶然と微笑んだ妃は、自ら身体を覆った髪を背中に流すと尖った乳房を露わにし、部隊長の膝に跨った。
背中を反らし喘ぐ王妃の姿に女官たちは泣きながら目を背け、男たちは歓声を上げ群がった。手刺繍の美しい腰布ははぎ取られ、衆人環視の中で、誇り高い王妃は、屈辱の時間を過ごした。
何度も吐精された長い蹂躙の果て、汗と白濁にまみれた王妃は倒れ伏していたが、その虚ろな眼はじっと一点に注がれていた。
自害を恐れた部隊長が、猿轡を手に上半身を抱き起したとき、王妃は隙を見て腰刀を抜いた。
褐色の肌に見惚れていた男は、慌てて手を伸ばしたが間に合わなかった。
「待て!」
船の舳先に駆け上がった王妃はためらうことなく首を掻き切ると、愛する男の名を呼び、空に舞った。
王妃は決して捕虜になってはいけなかった。自分が愛するスルタンの枷になってはならなかった。王妃はスルタンと国を守る為、海原へと身を投じた。
夫の面影に手を差し伸ばし、海中へ落ちて行く妃を、喉元から溢れた大量の血が、まるで細い腰帯のように追った。
それまで散々、粗野なふるまいをしていた敵兵も、健気な王妃の最期に涙を浮かべた。
*****
「……王妃さまは、ご自害あそばしたのですね。」
「人魚よ。王妃は……わたしの為に死んだのだよ……。わたしの名誉を守る為に。」
「マハンメド……お妃さまの最期の言葉を、聞きたい?」
青い小さな人魚は、海鳥に聞いた可哀想な妃の話を知っていた。
スルタンは見上げる青い人魚の目蓋に、優しい口づけを一つ贈った。
「その話は、お前がいつか自由に旅立つ朝に聞かせてもらおう。今は、身体の傷を一日も早く治すことだ。その肌に人の香油が効くだろうか。」
「あの……?スルタンはわたしを、自由にしてくださるおつもりですか?」
「星は空に、花は陸に、魚は水に住む。魚の鰭をもつおまえは、海の底の海神の元に帰りたいのであろ?」
「……帰りたい……です。わたしの海の王国に。あなたの、白い漆喰の王国も美しいと思うけれど、陸の上では誰も……魚のひれを持つわたしを愛してはくれないから……。」
「そんなことはない。」
揺れる水面のような瞳だと、スルタンは思った。
誰よりも愛した、強い意思の宿る今はない妃の黒い瞳とも違う。
王妃の話を聞き涙ぐんだ人魚を腕の中に抱きしめると、甘く心の底が騒ぐ気がした。
(°∇°;) あ……BLなのに、可哀想な王妃と部隊長のあんあんしか書けてないぞ……。
あの……明日は、人魚とスルタンのあんあんです。(〃゚∇゚〃) ←言い切った。
嘘つきは針千本飲まなければいけませんので、がんばりまっす!(`・ω・´) 此花咲耶
ランキングは外れていますが、バナーを貼っておきます。村へ行くとき、お帰りの際にお使いください。
薄いヴェールをはぎ取られ肌を晒して震える女たちは、この中の誰が妃なのかと尋ねられても、一人として口を割らなかった。女官たちは皆、優しい王妃が好きだったし、いつか勇猛果敢な太守が遠征先から取って返し助けに来ると信じていた。
苛立った部隊長は、次々に後宮の宝物を運び出すと、女たちの中から見目良いものだけを選び、小舟に乗せ沖へ漕ぎ出た。美貌の王妃もその中に含まれていた。
船の上では一人ずつ甲板に引き出され、中に王妃はいないかと詰問を受けた。さらわれた女たちは、奴隷女のようにすべての衣類を奪われると剥き身で並ばされた。
兵士たちは酒を飲みながら自分が乱暴する女を自由に選んだ。
震えながら順番を待つ女たちの中にいた王妃は、やがてヴェールを落とし進み出た。
「北の国に住む下賤の者たちよ。愚かなそなたたちには、貴人の区別もつかぬのか。」
滑らかな褐色の肌と煌めく琥珀の双眸が、部隊長をじっと見つめていた。青ざめた妃の口角がくっと上がった。
「その方が隊長か。……後宮、3000人の女の中でただ一人、スルタンを落とした、わらわのこの芳しい身体を味わってみたくはないか……?」
波打つ赤褐色の髪が陽を浴びて眩い宝冠となり、妃の身体を覆っていた。
大隊の部隊長が、ゆっくりと腰を上げた。
「気丈な王妃だ。それは、命乞いかな?」
「命乞いなどではない。交換条件だ。わたしの女官に手をつけずに解き放て。」
王妃は共に連れてきた女官たちの解放を望んだが、それは王妃次第だと部隊長はほくそ笑んだ。
「王妃さまには、囚われの身であることをお忘れのようだ。さあ、その強気もどこまでもつかな。喘げば甘い蜜が溢れると音に聞こえたその身体、北の王に成り代わり俺が試してやろう。何、全ては船上で起こったことだ。兵士全員が口をつぐめば良いだけのこと。いずれは身代金と引き換えに、恋しいスルタンの元へ帰れるだろうよ。」
「これから船の中では、子羊のように従順にふるまう事だな。俺を満足させてみろ、東の蛮族の女王。」
艶然と微笑んだ妃は、自ら身体を覆った髪を背中に流すと尖った乳房を露わにし、部隊長の膝に跨った。
背中を反らし喘ぐ王妃の姿に女官たちは泣きながら目を背け、男たちは歓声を上げ群がった。手刺繍の美しい腰布ははぎ取られ、衆人環視の中で、誇り高い王妃は、屈辱の時間を過ごした。
何度も吐精された長い蹂躙の果て、汗と白濁にまみれた王妃は倒れ伏していたが、その虚ろな眼はじっと一点に注がれていた。
自害を恐れた部隊長が、猿轡を手に上半身を抱き起したとき、王妃は隙を見て腰刀を抜いた。
褐色の肌に見惚れていた男は、慌てて手を伸ばしたが間に合わなかった。
「待て!」
船の舳先に駆け上がった王妃はためらうことなく首を掻き切ると、愛する男の名を呼び、空に舞った。
王妃は決して捕虜になってはいけなかった。自分が愛するスルタンの枷になってはならなかった。王妃はスルタンと国を守る為、海原へと身を投じた。
夫の面影に手を差し伸ばし、海中へ落ちて行く妃を、喉元から溢れた大量の血が、まるで細い腰帯のように追った。
それまで散々、粗野なふるまいをしていた敵兵も、健気な王妃の最期に涙を浮かべた。
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「……王妃さまは、ご自害あそばしたのですね。」
「人魚よ。王妃は……わたしの為に死んだのだよ……。わたしの名誉を守る為に。」
「マハンメド……お妃さまの最期の言葉を、聞きたい?」
青い小さな人魚は、海鳥に聞いた可哀想な妃の話を知っていた。
スルタンは見上げる青い人魚の目蓋に、優しい口づけを一つ贈った。
「その話は、お前がいつか自由に旅立つ朝に聞かせてもらおう。今は、身体の傷を一日も早く治すことだ。その肌に人の香油が効くだろうか。」
「あの……?スルタンはわたしを、自由にしてくださるおつもりですか?」
「星は空に、花は陸に、魚は水に住む。魚の鰭をもつおまえは、海の底の海神の元に帰りたいのであろ?」
「……帰りたい……です。わたしの海の王国に。あなたの、白い漆喰の王国も美しいと思うけれど、陸の上では誰も……魚のひれを持つわたしを愛してはくれないから……。」
「そんなことはない。」
揺れる水面のような瞳だと、スルタンは思った。
誰よりも愛した、強い意思の宿る今はない妃の黒い瞳とも違う。
王妃の話を聞き涙ぐんだ人魚を腕の中に抱きしめると、甘く心の底が騒ぐ気がした。
(°∇°;) あ……BLなのに、可哀想な王妃と部隊長のあんあんしか書けてないぞ……。
あの……明日は、人魚とスルタンのあんあんです。(〃゚∇゚〃) ←言い切った。
嘘つきは針千本飲まなければいけませんので、がんばりまっす!(`・ω・´) 此花咲耶
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