露草の記・参(草陰の露)4
本多は養父に連れて来られたばかりの露草の、哀しげな瞳を思い出していた。
いつも物憂く、遠くを見ているような眼差しだった。
*****
天下を取るには各地の情報収集が欠かせぬものとして、下忍を召抱えるよう徳川に進言したのは他ならぬ本多だった。
関ヶ原の後、どうしても配分する恩賞が足りず、豊かな諸藩を巻き上げる足掛かりを作る為、陽忍の使用を決めた。
露草という名の陽忍は、織田に滅ぼされた伊賀忍の幼子で、織田の家臣、蒲生が拾って抱え下忍が陽忍に仕上げたと聞いて居た。
「年は若いが、なかなかの手練れと聞く。露草なるものを連れて参れ。」
養父という男は、なぜか色よい顔をしなかった。
「露草は……まだ、陽忍としては未熟でございます。見目は確かに伊賀随一の母親と同じ面なれど身体の方が仕上がらず、少々手こずっておりまする。」
「そうか。まあ、会ってみよう。早晩、夜伽をさせる。」
本多はすぐに、露草という少年を寝所へ呼び出した。これまでずっと戦一筋だった武将は、屋敷に着た折りふと垣間見た(かいまみた)少年の秀麗な顔に惹かれていた。
その麗々しい美貌に息を呑み、養父が渋るのも無視をして、その夜から閨に呼び入れたものの、どうしたものか露草にはどう扱ってもいつまでも怯えと怖れが消えなかった。
「……お初に御目文字致します……。露草でございます。」
「ふむ、陽忍らしく女言葉を使うか。一通りの仕込みは終わっておるのだな?」
「お……お試しくださいませ。」
「こちらへ参れ。」
「……はい。」
露草は素直に着物を滑らせたが、その後、本多はひどく落胆することになる。
*****
露草は、召し出す度どれほど優しく口を吸ってやっても、身体を固くして野うさぎのように小刻みに震えるばかりだった。
見開かれた瞳はぼんやりと天井を見上げ、何の反応も見せず、正面から本多を見つめることもなかった。包茎(皮かむり)の幼い茎も、どれほど丁寧に擦ってやっても、力なく太腿にぺたりと張り付いたまま、芯を持って潤むことはなかった。
しっとりと吸い付く柔肌は、いつも冷たく相手を拒み青白く粟立っていた。
「今宵も何の反応も見せぬか……。どれほど姿が良くとも、これでは籠絡には使えぬな。」
本多は養父に向かって、この有様では顔を晒す「陽忍」にするのは無理だろうと正直に告げた。
「露草を抱くと、こちらが悪鬼、羅刹になった気がする。あれでは、閨で役に立たぬな。」
「本多さま。も、申し訳もございませぬ。お時間を頂戴いたしまして、必ず。必ず。」
役に立たないと雇い主に告げられた養父は、赤面し苦虫をかみつぶしていた。
きつい媚薬を使うには、露草は余りに幼すぎた。
ヾ(。`Д´。)ノ 養父「この役立たずめが~~!!!」
(´;ω;`) 露草「……だって……」
露草の過去はなかなか大変なのです。(´・ω・`) がんばってね。
本日もお読みいただきありがとうございます。ランキングに参加しております。
どうぞよろしくお願いします。(*⌒▽⌒*)♪
いつも物憂く、遠くを見ているような眼差しだった。
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天下を取るには各地の情報収集が欠かせぬものとして、下忍を召抱えるよう徳川に進言したのは他ならぬ本多だった。
関ヶ原の後、どうしても配分する恩賞が足りず、豊かな諸藩を巻き上げる足掛かりを作る為、陽忍の使用を決めた。
露草という名の陽忍は、織田に滅ぼされた伊賀忍の幼子で、織田の家臣、蒲生が拾って抱え下忍が陽忍に仕上げたと聞いて居た。
「年は若いが、なかなかの手練れと聞く。露草なるものを連れて参れ。」
養父という男は、なぜか色よい顔をしなかった。
「露草は……まだ、陽忍としては未熟でございます。見目は確かに伊賀随一の母親と同じ面なれど身体の方が仕上がらず、少々手こずっておりまする。」
「そうか。まあ、会ってみよう。早晩、夜伽をさせる。」
本多はすぐに、露草という少年を寝所へ呼び出した。これまでずっと戦一筋だった武将は、屋敷に着た折りふと垣間見た(かいまみた)少年の秀麗な顔に惹かれていた。
その麗々しい美貌に息を呑み、養父が渋るのも無視をして、その夜から閨に呼び入れたものの、どうしたものか露草にはどう扱ってもいつまでも怯えと怖れが消えなかった。
「……お初に御目文字致します……。露草でございます。」
「ふむ、陽忍らしく女言葉を使うか。一通りの仕込みは終わっておるのだな?」
「お……お試しくださいませ。」
「こちらへ参れ。」
「……はい。」
露草は素直に着物を滑らせたが、その後、本多はひどく落胆することになる。
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露草は、召し出す度どれほど優しく口を吸ってやっても、身体を固くして野うさぎのように小刻みに震えるばかりだった。
見開かれた瞳はぼんやりと天井を見上げ、何の反応も見せず、正面から本多を見つめることもなかった。包茎(皮かむり)の幼い茎も、どれほど丁寧に擦ってやっても、力なく太腿にぺたりと張り付いたまま、芯を持って潤むことはなかった。
しっとりと吸い付く柔肌は、いつも冷たく相手を拒み青白く粟立っていた。
「今宵も何の反応も見せぬか……。どれほど姿が良くとも、これでは籠絡には使えぬな。」
本多は養父に向かって、この有様では顔を晒す「陽忍」にするのは無理だろうと正直に告げた。
「露草を抱くと、こちらが悪鬼、羅刹になった気がする。あれでは、閨で役に立たぬな。」
「本多さま。も、申し訳もございませぬ。お時間を頂戴いたしまして、必ず。必ず。」
役に立たないと雇い主に告げられた養父は、赤面し苦虫をかみつぶしていた。
きつい媚薬を使うには、露草は余りに幼すぎた。
ヾ(。`Д´。)ノ 養父「この役立たずめが~~!!!」
(´;ω;`) 露草「……だって……」
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