禎克君の恋人 21 (挿絵付き)
「おお~っ、おいしそうだ~。」
小さなテーブルに、禎克の母親の心づくしが並べられた。
「今日ね、合宿の打ち上げだったんだよ。しばらく家を空けてたから、ぼくの好きなものを作ってくれたみたいだ。先に食べる?」
「ううん、ドーラン落とすよ。見られて困るすっぴんじゃないしね。待ってて。」
*****
ひょいと唐揚げをつまみ食いした大二郎は、大げさに驚いて見せた。
「うまっ。さあちゃんのお母さん、料理上手~。」
「大二郎くんが褒めてたって言っておくよ。多分、近いうちに湊と一緒に来ると思うから。ぼくは、インターハイのゲーム次第でどうなるか分からないけど。」
「さあちゃんとは……もう、さよならってこと……?」
すん……と、化粧を落としたばかりの大二郎が鼻を鳴らし、うつむいてしまった。
「大二郎くん……?」
「やっと……会えたのに……。もう、お別れだなんて……。」
「……やだよ……ぅ……」
膝に置いた手に、ぽとりと涙が落ちた。
「おれっ、チビの時からずっと、さあちゃんの事忘れなかったんだよ。ひらがな覚えるのも掛け算の九九覚えるのも遅かったけど、さあちゃんの事だけは忘れなかった……。」
「うん。仲良しだったね。ぼくも覚えてた。」
「さあちゃん。舞台見ておれに惚れた……?」
「うん、すごかった。お父さんのことも心配だし、色々大変だったと思うけど、そんなことおくびにも出さずに頑張って、えらかった。ぼくも、試合頑張らなきゃって思ったよ。あ、大二郎くんのファンの人と同じこと言ってるな。」
「さあちゃん……ご褒美にキスしよ。」
ふわりと禎克の膝に舞い降りた、浴衣の大二郎がしゅっと自分の帯を抜く。
「ん……っ……」
二度目の大人のキスに、禎克はたじろぎながらも何とか応えた。強引なキスが嫌じゃないと言ったらおかしいかもしれないが、禎克は手を回し腕の中に華奢な大二郎を捉えた。
子どものように、頑張った褒美にキスをせがむ大二郎を、可愛いと思う。
どんどん深くなってゆくキスに、身体の平衡感覚がおかしくなってゆく。いつしか、大二郎が覆いかぶさって、禎克の両頬に手を当て押さえつけ、深く舌を吸った。忙しなく大二郎の手が禎克のジャージの下に潜りこむ。
大二郎が触れた場所から、熱が移ってくるようだ。
「さあちゃん……もっと。もっと、キスして。おれのこと、好きになって……。」
「んっ。」
禎克は、全身で自分を欲しいと訴える、大二郎の満たされない隙間を埋めてやりたかった。この小さな肩に背負ったものの大きさを、今は禎克も少しは理解できる。
しばらく互いに口腔を貪っていたが、気持ちを裏切って腹が鳴った。
ぐ~…………。
色気が食い気に負けてしまった。
「あははっ……さあちゃんのお腹が、鳴ったよ。」
「今のは、ぼくじゃないぞ。」
「お腹すいたねぇ。やっぱり、ご飯にしようか。キスじゃお腹膨れないよね。」
羽織っていた浴衣を滑りおとして大二郎は何も身に着けていなかった。
何を気にする風でもなく、大二郎はそのままで禎克の膝の上に座った。
「おれ、さあちゃんの膝で食う。」
「え~……。」
(*⌒▽⌒*)♪ちょっと、一休み~的な?
逃亡しないで、続きも頑張ります。
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