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平成大江戸花魁物語 10 

「雪華兄さん……」

「言い訳する気は、毛頭ございんせん。足抜けしたのは確かでございんす。逃げも隠れもいたしんせん。」

「初雪、話しやすい言葉でいいよ。兄さんにわかるようにきちんと説明してごらん、何が有った?おまえはこうまで分別の無い子じゃなかっただろう。辛いこともたくさんあったが、これまで辛抱してきたじゃないか。」

「ご……ごめんなさい。雪華兄さんには良くしていただいたのに……父親が……今日、おれを連れに来るそうです。……誰かにおれの内臓を売ったって……生きてゆくのに支障はないけど、父親がそんなことまでするなんて……」

驚いた雪華は天華の方を見た

「全て、わたしに話をするよう言っておいたはずだが……どこからそんな情報が初雪に漏れたんだ?」

「今、調べていますがわかりません。ただ、父親が今日、初雪を落籍させると言うのは事実のようです。身請けとは別に、お相手に腎臓売買の話も出ていたようで、どうやら誰かからその話を聞いちまったみたいで、こういうことになったみたいです。」

遠くにいた好きな人が、廓の内まで追いかけてきたのだと初雪は泣いた。

「知らせ……があったんです。父親が今日おれを連れに来るって。そうしたら海外に連れて行かれて、もう二度と逢えなくなるって……ずっと、待っててくれるっていったのに、会えなくなるなんていやだ、いやだ……。それだけを胸に、頑張って来たのに。」

「待ってるって言ったのは、お前のいい人かい?」

「あ……い。現の世界のお隣の……お兄さん。ずっとおれのこと、可愛がってくれて……ここに来る前、大人になったらいつか一緒になろうと約束しました。父親が今日、おれを連れに来るのを知って、後を付けて大江戸に入ると知らせてきました。今日会わなかったら……二度と会えないかもしれないから……だから、大きな傷が残る前に……悠さんに逢いたかった。」

「初雪が大事にしている、お猿のぬいぐるみをくれたお人だね。」

「あい。ここへ来る前……ちびのときに……泣いてるおれに、一人でも寂しくないようにってくれたんです。」

初雪はぼろぼろになったぬいぐるみを拾うと抱きしめ、うつむいたきりほろほろと涙をこぼした。

「そのお猿をちょっと、お寄越し。」

「いやですっ、こればっかりは……!あっ!」

天華が奪い取って、雪華に渡したぬいぐるみの中から出てきたものは、決して持ち込んではいけない携帯電話だった。相部屋の六花は気付かなかったが、おそらくこっそりとメールのやり取りなどをしていたに違いない。
開いてじっと見る雪華の目に、涙が盛り上がった。


「切ないねぇ……。お前、好きなお人に逢えたら死ぬつもりだったのかい?」

初雪は唇を噛んだまま、顔を上げなかった。
迸るように嗚咽だけが漏れた。




ヾ(。`Д´。)ノ 「なんつ~、親父だ~~!!ばかちんが~~!!」←書いといて。

(´;ω;`) 初雪「悠さんに逢いたい……」

(´・ω・`) 六花「どうなるんだろう……」

(*´・ω・)(・ω・`*) 雪華 天華 「困ったね~」


本日もお読みいただきありがとうございました。(〃゚∇゚〃) 此花咲耶


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