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小説・若様と過ごした夏・16 

そこらへんに落ちてる木っ端で、宗ちゃんは見事に暴漢を追い払った。


・・・ことになるんだろうな~・・・


あ~あ、彼女達の目がハートになって、若様の宗ちゃんを見つめてる・・・


ある意味、正真正銘、本物の王子様なのは、違いない。


「すごいね、宗太郎君!」


「かっこいい~、さっきの隣の中高一貫校の、高校生の剣道部だよ。」


高校生・・・ということは、さっきのタトゥはシールだな。


宗ちゃん・・・後は口先三寸でがんばってくれたまえ。


宗ちゃん、君は今王子様と言われるのにふさわしい行動を(うっかり)取ったのだ。


宗ちゃんは、若様が抜けて、ちょっとふらついていた。


「・・・あいつ、何だか真子が絡まれた瞬間憑いてきた。」


「今は?」


「離れた。」


打ち合わせしなきゃね。


「ごめんね。俺、皆がいたから良いところ見せようと思って、張り切りすぎみたいだ。」


そう言うしかないよね・・・うん。


「足首ひねったみたいだから、宗ちゃん、連れて帰るね。」


「・・・浴衣もこんなだし。」


露骨にがっかりした女の子を残し、わざと大げさに足を引きずる宗ちゃんに肩を貸して、ゆっくり家に向かった。


「ごめんね。絶対、今度誘うから。」


・・・宗ちゃんが足首ひねったというのは、大嘘だった。


だってね。


そうでも言わなきゃ、剣道部相手の立ち回りは王子様伝説になって、一人歩きするのは目に見えていた。


「いつまで、寄っかかってんの?」


角を回って、あたしは宗ちゃんを押しのけた。


「若様。」


「いるんでしょ?」

若様は、ちょっと困ったような顔をしてあたしの前に現れた。


あ、しっぽが下がってる・・・


「・・・わたしは、いけないことをしたのか?」


「違うの、助けてもらった御礼を言おうと思って。

若様、どうもありがとうございました。」



ぱっと明るい顔になって、若様はちょっぴり恥ずかしそうに笑った。


「兄上の代わりに、武芸は仕込んでもらったゆえ、剣はいささか使えるのじゃ。」


「これね、若様にお土産と思ったんだけど、お礼になっちゃったね。」


あたしは若様に(正しくは宗ちゃんに)お土産に買ってきたりんご飴を渡した。


「おお~!真子。これは甘くて、美味じゃのう。」


可愛い若様は、口の周りを真っ赤にしてうれしそうだった。

食べるの、下手すぎ・・・



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