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小説・若様と過ごした夏・14 

さてと・・・。

田舎の夏祭りは、結構盛大なのね。


きっと他に、何のイベントもないせいだと思うけど。


どこからこんなに人が沸いてくるのって言うほど、大勢夕方から集まってくる。


とうの昔に、財産は切り売りして、他所に土地もない貧乏な篠塚本家なのに、近くの神社の名前も篠塚神社だし、やたらと名前だけは通っているみたいだ。


おばあちゃんなんか、土地の古老からなんて呼ばれていると思う?


「篠塚のお姫様(おひいさま)」よ。


お寺の住職や、この辺りの名士といわれる人たちは、みんなその昔、若い篠塚のお姫様の取り巻きだったらしい。


そんな話を最初聞いたとき、笑っちゃったけどちょっと羨ましい気もした。


だって、女の子って一度くらいお姫様って呼ばれたいじゃない?


出来れば、お姫様抱っこもして欲しいし。


確かにそう呼ばれるだけあって、おばあちゃんは年齢よりも若くて品良く見える。


きっと昔は、美人さんだったのだと思う。


市川雷蔵の話しているときだって、可愛いしね。


世が世ならば、おばあちゃんがれっきとしたお姫様なのは間違いなかった。


鎮守の森の辺りには、夜店がたくさん出ているらしくて、ずいぶん明るい。


普段は、何か出そうで通るのも怖いくらいの暗闇なのにね。


「こんばんわ。」


「あ、真子ちゃん来てたの?

今年もゆっくりできるの?」


毎年来ているから、こっちにも顔見知り程度のお友達はいる。


都会の子達とは違って、まつ毛のエクステも知らない湯上りすっぴんのぴかぴかの笑顔。


なんだか、ほっとする自然の可愛さね。


「あのね。宗太郎君は?」


そうだった。


彼女達のお目当ては、宗ちゃんだった。


どうやら宗ちゃん、ここいらでは王子さま扱いされているらしい。


ぷっ・・・聞くだけで、恥ずかしい。


起きぬけの顔なんて、王子を好きな彼女達には絶対見せられないと思う。


ひどいんだよ~、そうだ今度写メ撮って脅そう・・・


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