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Café  アヴェク・トワへようこそ 14 

「直は、あの蜥蜴野郎といつまで一緒にいたんだ?」
「3年間です……」

相良は自嘲気味に打ち明け、松本はその長さに驚いた。

「そんなに長く辛抱したのか。直……良く逃げ出して来たな。一度、暴力の闇に引き込まれた奴は、なかなか抜け出せないものと相場は決まっている。家の扉が開け放されていても、外へは出られなくなるものなんだ。強かったんだな。」
「おれ……強くなんてないです。今でも誰かが後ろから近づくと、恐怖がよみがえって来て全身が震えます。だから、お店でもいっぱい迷惑をかけてしまって……。」
「そんなことはいいんだよ。」
「でも……金をむしり取られている間は、まだ良かったんです。黒崎は……残酷でした。黒崎は……おれを……」

相良の肌が、言葉と共に青ざめた気がする。

「大丈夫か、直?」
「はい。黒崎は……サディストだったんです。」
「……だろうな。」

雑誌の取材を受けた黒崎は、したたかに酔って帰宅した時、直に襲いかかり強姦したという。
突然、床にたたきつけられ、逃げる間もなかった。
呆然自失となった直の頭上で、黒崎は薄ら笑いを浮かべてうそぶいた。

「おい、何て面してるんだよ。こうなることは分かっていたんじゃないのか?警察に被害届出してもいいぜ。男に犯られましたって、調書書いて来いよ。あーははっ……!なんだよ、その被害者面。おまえが女みたいな面で誘うから悪いんだぜ。いっそのこと、ちょん切って女になっちまうかぁ?可愛がってやるぞ。」
「……ううっ……」

泡立てたメレンゲを腹の上にぶちまけると、潤滑油代わりにして、酷薄な黒崎は蹂躙を繰り返した。
逃げようとすると、したたかに殴られた。

「じっとしてろっ!」
「やっだ……あーー……っ……ぁ……」

視界に入った天井の明かりが前後するたび、狭間へ押し入った黒崎が抽送を繰り返しているのだと、ぼんやりと理解する。
強く頭を打ったせいで、意識は朦朧としていた。
凶暴な茎が限界まで挿入されては、引きずり出され、再び貫かれた。
狭い内部をおぞましい異物でかき回されながら、相良は天井を見つめたまま抵抗もできなかった。

痛みで意識を失うまで、凌辱は続いた。
最悪の朝、ぱりぱりに乾いた身体中の卵白を洗い落とし、床の掃除をした。
涙も出なかった。

一度、強姦してしまうと黒崎は相良の所有者のように、ますます傍若無人にふるまった。

「黒崎から受ける暴力で、おれは少しずつおかしくなって行きました。」
「直……」

薄く微笑む直が、消え入りそうで悲しい。

「時々カフェで働く以外は、おれは人格のない人形のようになって、息だけをしていました……。辛いとも痛いとも、考えられなくなってきて、ご飯も食べられなくなってきて、いっそ、このまま死んだほうがいいと思うようになって……」
「直……助けてやれなくて、ごめんな。」

松本は、黙って冷えた相良の体を抱きしめた。

「何で、俺はそこにいなかったんだろうな。」
「店長……」

ふと、松本の脳裏をある考えが掠めた。

考えたくはないが、もしかすると、サディストの黒崎に相手を手に入れる間違った方法を教えたのは、自分たちではないだろうか。
性癖に悩む顧客の相談に乗ったのは一度や二度ではない。サディスト、マゾヒストの彼らもまた、パートナーを欲していた。
しかし、健全な相良が受けた暴行は、何一つ快楽をもたらさないで、本人の心に消えない傷だけをつけた。
髪を伸ばし始めたのも、そのころだった。
女みたいな顔で誘ったと何度も繰り返され、前髪で顔を隠した。
人の目が見られなくなっていた。




本日もお読みいただきありがとうございます。

(´Д⊂ヽ「くそぉ……これが直の虎馬なのかよ。あのくそ野郎~」←トラウマの字が違うぞ、松本。

(´;ω;`)「店長~……くすん……」

悲しい直の過去。これからは、松本が幸せにするはず。

(`・ω・´)「任せろ!」

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