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caféアヴェク・トワの住人たち 7 

直の部屋に駆け戻った松本は、合鍵を使って入るとあちこち手がかりを探し始めた。

「これじゃ、まるで空き巣じゃねぇか。」

やがて、引き出しの奥に、輪ゴムで止められた数枚の葉書を見つけた。

「あった!これだ……!」

流麗な筆文字で相良怜子と書いてある差出人は、直の祖母らしく、孫を心配する優しい文章が綴られていた。

『 直が元気そうで安心しました。私の方は喘息も落ち着いて元気にしております。心配しないで直はやりたいことを頑張ってください。貞夫さんは、まだいろいろ言っていますが、いつかはわかってくれますよ。しっかりね。 』

『 送ってもらったお菓子は、とても優しいお味でした。直が頑張っているのは嬉しいけど、無理はしないでね。 』

「良いばあちゃんじゃねぇか。なぁ、直。」

松本はすぐに荒木と木本に電話を入れると、身支度を整え、そこに直が居るという確証のないまま葉書の住所に向かった。

*****

ローカルの電車を乗り継ぎ、喧騒とは関係ない静寂な時間が流れる初めての町に降り立った。

「すっげぇ、田舎だな。」

駅で聞くと、バスが出ていると言うことだったが、調べると二時間待ちだったのでタクシーで行くことにした。
当てはなかったが、訪ねる先に直が居る。
そう思うだけで、足取りは軽かった。
数台しか止まっていない、タクシー乗り場に足を運ぶ。

「運ちゃん。この住所へ行きたいんだが、わかるか?」
「えっと……、ああ、わかりますよ。45分くらいかかりますが、走っていいですか?」
「ああ。」
「お客さんも、陳情ですか?」
「いや。何故だ?」
「先日もお客さんを乗せたんですよ。県会議員の相良さんの家でしょう?大きな工場も経営してるし、面倒見もいい。すごい人なのに偉ぶらないで気さくな人らしいですよ。」
「そうなのか。家を訪ねるのは初めてなんだが、有名なんだな。」
「地元の名士ってやつですからね。企業誘致にも熱心だから、よその市に比べると若い奴の仕事もそこそこあるんですよ。」
「やり手なんだな。」
「次は副知事だろうって、うちの社長が言ってました。」

他愛のない話をしながら、静かに車は田舎の町を走ってゆく。
やがて周囲ののどかな風景に溶け込んで、まるで城のように見える豪勢な日本家屋が現れた。

「ここですよ、お客さん。」
「すげぇ家だな、おい。あ……」

代金を払うために、前のめりになった松本の視界に入ってきたのは、玄関先で箒を持ってふとこちらを振り向いた直の姿だった。

「直っ!?」
「あ、お客さん、お釣りあります。」
「いい!取っといてくれ。」

え~、いいんですかと嬉しげな運転手の手には、相応の代金よりはるかに多い金が握られていた。
車から降りてきた松本に驚いて、箒を手放して逃げようとした直を捕まえた。

「逃げるな。」
「……店長……、何も言わずに出てきて……すみません。」
「謝るのは俺の方だ。ともかく無事で良かった……直。あちこち探したぞ。」

捕えた直は、静かに腕の中で松本を見上げた。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
とうとう松本は、直を見つけました。
何処にも行くところがなかった直は、実家に戻っていたみたいです。

(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「直。無事で良かった。」「店長……」

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