波濤を越えて 25
初めて好ましいと思った男に、気持ちが通じた刹那の喜びに、正樹は高揚していた。
思い切って飛び込んだ胸は厚く、注がれる視線はどこまでも甘かった。
フリッツを見上げた正樹は打ち明けた。
「……あなたは僕の初恋の人にとても良く似ています。初めてあなたを見た時、そう思いました。」
「正樹の初恋の男は、どういう人だったの?」
「そこの部屋の片隅に……僕は人形に恋するピュグマリオーンだったんです」
「ん?……これ?ああ、キプロス島の王さまの話ですか」
フリッツは布で覆われた正樹の大切な石膏像を見て、笑いながら同じポーズをとって見せた。
「どう?わたしは軍神マルスに見えますか?」
「並べて見ると、それほど似ていませんね。でも、僕は僕のマルスに会えたと思ったんです。」
正樹は、思い切ってフリッツの腕に触れた。
「ボルケーゼのマルスに、僕はずっと恋をしてきました。毎日何時間も美術室で、顔の輪郭も深い眼窩も高い鼻梁も、形をなぞりながら思いを込めて描きました。見えない腕は、僕を抱くためにあるのだと」
「正樹は怒るかもしれないけれど、わたしのマルスのイメージはボディビルダーのように筋肉が盛り上がっていて、全裸で、長いマントをまとい、刀と盾を持っています……」
「……そして愛人はヴィーナスですか?」
「そうです。そして頭には金色の兜をかぶっています」
「間違いではないですけど、改めて言うと……駄目だ、おかしい……あはは」
正樹はとうとう吹き出した。
フリッツがマルスの格好をして、全裸で立っている姿を想像してしまった。
「僕ね、一度だけフランスのルーブルに行ったことがあるんです。そこでマルスを見た時の衝撃は忘れられません。他にも素晴らしい絵や像はたくさんありましたけど、やっと会えたと思いました。フリッツ、僕はすごく長い間待っていた気がします」
「わたしを?」
「ええ。ずっと待っていました」
正樹の言葉に励まされるように、フリッツは唇を寄せた。瞼に、頬に、唇に……
シャツを脱がされて鎖骨に唇が落とされたとき、正樹は驚いたようにフリッツを見つめた。
「どうしたの?」
「いえ……何だかあなたに触れられると、そこから熱が出るような気がして」
「そう?ここは……?正樹……」
唇と舌が、正樹の知らない場所に触れる。心臓が早鐘のように鳴り響き、騒ぐ鼓動がフリッツに聞こえるのではないかと正樹は心配した。
「あまりあちこち触らないで……心臓が痛くなる」
「どうして?」
「だって……」
風呂上がりのしっとりとした肌は、さらりとした石膏とは手触りが違って、吸い付くようだ。
肌理が細かい正樹の肌は、フリッツを驚かせた。
「どこもかも、まるで天鵞絨(ベルベッド)に触れているような気がする。ずっと触れていた、いよ、正樹」
「みっともないのは、自分でもわかっています。僕は男性的な魅力には欠けているし、あまり見ないでください。できればあの……明かりを消して」
「嫌です。君を目に焼き付けておかなくては……ほら。日本ではもったいないというのでしょう?」
「使い方が違っている気がしますけど……あ」
「どうかしましたか?」
緩くスウェットをずらしたフリッツの、屹立したセクスの先端が覗いているのを見て、正樹は慌てて目をそらした。
本日もお読みいただきありがとうございます。
|д゚) 「あ、目をそらした」←でばがめ、このちん……
思い切って飛び込んだ胸は厚く、注がれる視線はどこまでも甘かった。
フリッツを見上げた正樹は打ち明けた。
「……あなたは僕の初恋の人にとても良く似ています。初めてあなたを見た時、そう思いました。」
「正樹の初恋の男は、どういう人だったの?」
「そこの部屋の片隅に……僕は人形に恋するピュグマリオーンだったんです」
「ん?……これ?ああ、キプロス島の王さまの話ですか」
フリッツは布で覆われた正樹の大切な石膏像を見て、笑いながら同じポーズをとって見せた。
「どう?わたしは軍神マルスに見えますか?」
「並べて見ると、それほど似ていませんね。でも、僕は僕のマルスに会えたと思ったんです。」
正樹は、思い切ってフリッツの腕に触れた。
「ボルケーゼのマルスに、僕はずっと恋をしてきました。毎日何時間も美術室で、顔の輪郭も深い眼窩も高い鼻梁も、形をなぞりながら思いを込めて描きました。見えない腕は、僕を抱くためにあるのだと」
「正樹は怒るかもしれないけれど、わたしのマルスのイメージはボディビルダーのように筋肉が盛り上がっていて、全裸で、長いマントをまとい、刀と盾を持っています……」
「……そして愛人はヴィーナスですか?」
「そうです。そして頭には金色の兜をかぶっています」
「間違いではないですけど、改めて言うと……駄目だ、おかしい……あはは」
正樹はとうとう吹き出した。
フリッツがマルスの格好をして、全裸で立っている姿を想像してしまった。
「僕ね、一度だけフランスのルーブルに行ったことがあるんです。そこでマルスを見た時の衝撃は忘れられません。他にも素晴らしい絵や像はたくさんありましたけど、やっと会えたと思いました。フリッツ、僕はすごく長い間待っていた気がします」
「わたしを?」
「ええ。ずっと待っていました」
正樹の言葉に励まされるように、フリッツは唇を寄せた。瞼に、頬に、唇に……
シャツを脱がされて鎖骨に唇が落とされたとき、正樹は驚いたようにフリッツを見つめた。
「どうしたの?」
「いえ……何だかあなたに触れられると、そこから熱が出るような気がして」
「そう?ここは……?正樹……」
唇と舌が、正樹の知らない場所に触れる。心臓が早鐘のように鳴り響き、騒ぐ鼓動がフリッツに聞こえるのではないかと正樹は心配した。
「あまりあちこち触らないで……心臓が痛くなる」
「どうして?」
「だって……」
風呂上がりのしっとりとした肌は、さらりとした石膏とは手触りが違って、吸い付くようだ。
肌理が細かい正樹の肌は、フリッツを驚かせた。
「どこもかも、まるで天鵞絨(ベルベッド)に触れているような気がする。ずっと触れていた、いよ、正樹」
「みっともないのは、自分でもわかっています。僕は男性的な魅力には欠けているし、あまり見ないでください。できればあの……明かりを消して」
「嫌です。君を目に焼き付けておかなくては……ほら。日本ではもったいないというのでしょう?」
「使い方が違っている気がしますけど……あ」
「どうかしましたか?」
緩くスウェットをずらしたフリッツの、屹立したセクスの先端が覗いているのを見て、正樹は慌てて目をそらした。
本日もお読みいただきありがとうございます。
|д゚) 「あ、目をそらした」←でばがめ、このちん……
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