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波濤を越えて 26 

悪戯なフリッツが、怖気づいたのに気が付いて覗き込んでくる。

「どうしました?可愛い正樹」
「な……んでもないです」
「どきどきしてる?正樹の心臓はとても正直だね。部屋の空気が震えている」

背後から抱きしめてきたフリッツに、薄いパジャマのズボンの上から、持ち上がった容を軽く撫でられて、正樹はひどく狼狽し取り乱した。

「あの……もう、眠りましょう。僕も明日は仕事ですし、あなたも疲れているでしょう?薄い布団しかありませんが、使ってください」
「眠る前に、あなたのここにキスをしたい」
「ひゃ……あ」

その一言で、全身桜色になった正樹が身を捩り、精いっぱいの勇気を振り絞ってフリッツの頬にキスを贈った。フリッツは正樹の腕を捉えた。
正面から懐にきゅと正樹を強く抱きしめて、薄い布団を爪先で広げると二人で転がった。

「可愛い正樹……」
「だめです。だめっ……」
「わたしを嫌いですか?先程は待っていたと言ったのに……悲しいです」
「そうではなくて、どうしていいかわからないから。きっと僕は、あなたを失望させてしまいます……」
「無理をさせる気はありません。正樹……正直になって。わたしを欲しいと言ってください」
「フリッツ……僕はあなたが……んっ」

言葉はフリッツの口腔にのみ込まれた
先走りを正樹の尻の付け根の窪みに擦りつけ、逃げようとする正樹の細い腰を捉えた。

「あっ……あっ」

背後から素股を使い、腰を使いながら正樹のセクスを掴んで上下に擦ってやると、切なげな吐息が漏れる。
決して肉感的ではないが潤んで赤くなった誘う目に、フリッツは欲情した。
幼く見える東洋人の青年は、緩やかに弄られているだけではぁはぁ……と紅色に屹立した自身を揺らし、フリッツは煽られて吐精した。

「……ん……むっ……!」
「フリ……ッツ……あぁ……」

引き寄せて唇をむさぼると、ぎこちなく必死に応えようとする。舌を絡ませて吸い上げただけで、正樹は何も知らない処女のように息をつめた。
拙い方法しか知らないのだろうと思うと、堪らなくいじらしく愛おしさが募る。この美しい男が、地球の果てで自分をずっと待っていたと思うだけで背筋を快感が這いのぼって来る。
何よりも、誰よりも特別な存在になるのではないかという、かすかな予感がした。

安らかな寝息を立てて眠る正樹の額に、小さく音を立ててキスをする。
背後から擦りつけただけの疑似セクスに、二人は満ち足りていた。

卵の中で抱き合って眠る双子の雛のように、互いの鼓動だけを聞いていた。




本日もお読みいただきありがとうございます。
フリッツは無理をさせませんでした。
……(*´▽`*)


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