【狂おしい秋・学園の狂騒・1】
周二が、すこぶる不機嫌なのには理由があった。
沢木が隼に、コンタクトを許したのだ。
裸眼が、0,1もない隼の眼鏡は、俗に言う牛乳瓶の底で分厚く、眼鏡を外すとまるで別人と言う少女マンガのような事実だった。
周二の心配したとおり、退院して久し振りに沢木隼が学校に現れたとき、一瞬空気が固まりそしてすぐに熱を持った。
「うっそ!沢木?」
「ええ~・・・っ!あのチビのダサ眼鏡の下って、この顔?」
「なに、なに?超、可愛い!やばいって。」
「人形みたいじゃん、すっげ綺麗。」
噂を聞いて隣のクラスからも溢れて向かってくる級友の声を受け止め切れなくて、隼は困っていた。
「あ・・・のっ。コンタクトにしたんだけど・・・へ、んっかな?」
群がったクラスメイトは、ぶんぶんと顔を振った。
「可愛い~!」
「何で今まで隠してたの?」
「沢木って、フリーだったよね。これならすぐに・・・」
ダンッ!!
激しい音を立てて、机が2,3台勢い良く転がった。
教室の後で、いつもどおり静かにしていたが、男女が群がる恋人が困った顔をするのをほおっておけなかった。
「周二くん・・・」
ざっと視線が寄せられてから、まずいと思ったが仕方がない。
小さくふるふると顔を振って、駄目・・・と合図を送ってきた隼に、ちらりと視線を送って周二は教室を後にした。
(くそったれ、隼は大昔っから、天使だっつーの。)
やだあ、こわ~い、と女子の声が小さく聞こえる。
あいつ、得体が知れないから触らないほうがいいって、そんな声も聞こえてきた。
乱暴だよな、ヤクザみたくね?と続く声に皆が賛同したとき、可愛い声が反論した。
気付いて足を止めた。
「周二、くんはっ・・・乱暴じゃないよっ。がっこじゃ、何も言わないけど、本当はとっても優しいよ。」
「沢木?あいつのこと知ってるの?」
隼は、親しい人以外の人前で話をするのは、余り得意じゃなかった。
それでも懸命に自分を庇おうとするのがいじらしくて、思わず口角があがった。
「うんっ。ぼく、「めのほよう」で放課後・・・あ。」
さすがに、言ってはいけないことだと気が付いたようだ。
両手で口を覆って固まった。
視線が集まって皆、隼が何か言うのを待っている。
「仕方ね~な、もう。」
周二が戻って、沢木の親父に世話になったんだと言い訳しようとした時、からりと前方の扉が開いて全校生徒憧れの樋渡蒼太が現れた。
「失礼。執行部の沢木はいるかな?」
「はいっ、います。何ですか、生徒会長。」
「文化祭での生徒会主催の劇の話だけど、一応ぼくが脚本書いたから目を通しておいて。」
「はいっ。」
脚本を受け取った、生徒会執行部書記の沢木の手元をクラスメイトが覗き込んだ。
周二と隼の通う高校は、一応進学校として一目置かれ、文化祭の完成度も高いといわれていた。
毎年、生徒会が行う劇も、演劇コンクールの本選まで進んだこともある。
もっとも、その時は戦時下を懸命に生きる高校生達の話だったが、生徒会長の持って来た台本にクラスメイトはざわめいた。
「これ、何かの冗談だよな。」
「まさか、うちの学校でこれはやらんだろ・・・」
「タイトル、すげぇ・・・」
作・演出 樋渡蒼太
タイトル・緊縛のラブレレラ
高校生の設定なのに、学園生活皆無でした。
学園祭を書きたいのですが、遥か昔でもう忘れたし・・・遠い目。 此花
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こちらで使用させていただいている美麗挿絵(イラスト)は、BL観潮楼さま・秋企画参加のみのフリー絵です、それ以外の持ち出しは厳禁となっております。著作権は各絵師様に所属します。
(pioさま鼻血ぷぷっの美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。きゅんきゅんの綺麗お子さまです~。隼ちゃん、ついにコンタクトッ!
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