SとMのほぐれぬ螺旋・18
目を覆われると、情報を遮断されたように感じて、誰もが途端に不安になる。
次に何をされるのだろうという不安と、甘やかな期待が頭をもたげる。
相手が見えない不安よりも、蒼太が今何を考えてそこにいるのかが気にかかった。
時間と空間が闇の中に解けてゆき、相手の存在を空気の流れと吐息で感じるしかない。
木本の店のお仕置きベッドで、蒼太は四肢を広げられていつも目隠しをされていた。
木本に愛されるときの蒼太は、いつも全身を拘束され、時には耳も口も覆われて、ひたすら一方通行の激しい愛撫に耐え、感じるだけ感じて意識とともに若い精を放出するだけの、感情を持つことを許されない人形だった。
いつも・・・
『慕う事は儚い事だと瞳を閉ざされた』
『求めることは諦めることだと手足をもぎ取られた』
『愛することは虚しい事だと想いを踏み潰された』
そんな手ひどいセクスに慣らされても、経験の無い蒼太は、恋人同士はそうするのが普通だと思っていた。
蒼太の本心は、女々しいといわれても恋うる相手に抱かれて、互いの顔を見ながら睦みひたすら相手を感じることだった。
腕を回して、自分を愛撫し征服する愛しい男の首に、すべてをさらけ出してかきつきたかった。
今、やっとその願いが叶う・・・
情報を遮断されるのは、先が読めなくて恐怖を煽る。
縋れるものが自分に触れる相手の手だけになって、鋭敏になった木本の身体がぴくりと蒼太の指に反応する。
「蒼太・・・?」
「はい。・・・充さん。」
黄膚(きはだ)色の着物の前を割り、木本の胸に蒼太が熱い唇を寄せた。
かりと尖りに歯を立てるのも、拙いながら木本と同じ愛し方だった。
鎖骨の上にも、同じ痛みが降ってきたのに思わず苦笑する。
畳んだ布団に身を預け、身体の中心に跪いた蒼太の指と舌が滑らかに腋かを這うと、全身の産毛がそそけ立った。
赤子のように強く吸い付いた乳首にも、やがて歯が当てられた。
「充さん・・・、充さん・・・」
名を呼びながらずっと、なれない愛撫がゆっくりとぎこちなく円を描くように胸から腹へと滑る。
胡坐をかいた、木本の中心にやわとぎこちなく熱い唇が触れた。
吐息が首をもたげかけた器官の先端にふっと吹きかけられ、そこから何かが浸食する気がした。
こわばった震える指が、懸命に恋人を煽ろうとしている。
「足、もう少し広げてください。」
「こんなくたびれたおじさんのモノ弄ったって、美しくもなんとも無いぞ、蒼太。」
「裏っかわに、賞味期限切れシール付いてるかもな。」
愛撫に懸命な蒼太には、わざと揶揄する木本の声は聞こえていない風だった。
やわやわと蒼太の指が熱い何かで濡らされ、動きが滑らかになっていた。
軽く周辺に口付けを落としながら、蒼太は長い間木本の棹を愛おしんでいた。
「くっ・・・」
まさか触れないだろうと思いながら、つい自分の後孔に意識が行く。
慣れず迷う指に、意識が追い詰められているのが分かる。
「ここ、いいですか?感じますか?」
「ああ・・・」
蒼太は自分で感じる部分を思い起こしながら、時間をかけて双球と茎の裏側付近を丁寧に舌でなぞってゆく。
性急に煽られ、放出するだけの行為ではなく揺らめく炎の中で蒼太が求めたのは、恋人と情を交わすこと。
しばらく逡巡したような気配が漂い、木本が思わず蒼太・・・?と声をかけた瞬間、熱いたぎりに包み込まれた。
蒼太の口腔を感じ、木本の咽喉が喘いだ。
「蒼太・・・。無理するな。」
まるで自分の舌の動きを再現しているような気がする。
木本の決して小さくは無い全体が、深く熱い媚肉に似た奥に包まれてゆく。
最初に蒼太を抱いたとき、とことん追い詰めて、放つ瞬間木本は鞭を使った。
痛みと快感は同じものだと教えて、崩れて泣く蒼太に暗示をかけた。
「痛いの好きだよなぁ・・・蒼太。」
「いや・・・いや。違う・・・やめて・・・」
音だけで、余り痛みの無い鞭に精神を打ちのめされ泣き濡れた蒼太が、やっと顔を上げて聞いたのを覚えている。
余りに意外な言葉で、忘れられなかった。
「これが、愛・・?」
確かに蒼太は、そういった。
********************************************
いつもお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチも、励みになっています。
明日も、がんばります。 此花
この作品は、pioさま、chobonさま、けいったんさま、の美麗コラボ絵からインスピレーションを戴きました。
色気の滴るようなとても隠微で濃密で華麗な美麗絵です。pioさまのお宅undercooledさまでご覧になってください。[2]の悲願花です。otherを押して二段目から入ります。この二人の妖艶さにうっとり・・・と眺め入ってしまいます。完成された世界が、これ一枚に内包されています。綺麗です~・・・・駄文くっつけてしまって、それぞれのファンの方のなかにはイメージ台無しと怒る方も、きっといらっしゃると思います。いっそ、ぐ~で殴って。
「あの・・・。は、初めてだから・・・や、優しくしてね。』←ちょっと、可愛く言ってみたり(//▽//)・・・
『慕う事は儚い事だと瞳を閉ざされた』
『求めることは諦めることだと手足をもぎ取られた』
『愛することは虚しい事だと想いを踏み潰された』
切り取ってすみません。素敵詩の一部お借りいたしました、けいったんさまの詩に、強引に愛されていた頃のやるせない蒼太くんの溢れんばかりの心情がありました。
短い詩の中に、どれほどの想いが込められるかで詩の持つ重みが決まる気がします。
反語の使い方に、ため息が出ます。
ありがとうございました。
さすがに全部、持ってくる勇気が無かったです。駄文が目立つと悲しいですもん・・・・(´;ω;`)
次に何をされるのだろうという不安と、甘やかな期待が頭をもたげる。
相手が見えない不安よりも、蒼太が今何を考えてそこにいるのかが気にかかった。
時間と空間が闇の中に解けてゆき、相手の存在を空気の流れと吐息で感じるしかない。
木本の店のお仕置きベッドで、蒼太は四肢を広げられていつも目隠しをされていた。
木本に愛されるときの蒼太は、いつも全身を拘束され、時には耳も口も覆われて、ひたすら一方通行の激しい愛撫に耐え、感じるだけ感じて意識とともに若い精を放出するだけの、感情を持つことを許されない人形だった。
いつも・・・
『慕う事は儚い事だと瞳を閉ざされた』
『求めることは諦めることだと手足をもぎ取られた』
『愛することは虚しい事だと想いを踏み潰された』
そんな手ひどいセクスに慣らされても、経験の無い蒼太は、恋人同士はそうするのが普通だと思っていた。
蒼太の本心は、女々しいといわれても恋うる相手に抱かれて、互いの顔を見ながら睦みひたすら相手を感じることだった。
腕を回して、自分を愛撫し征服する愛しい男の首に、すべてをさらけ出してかきつきたかった。
今、やっとその願いが叶う・・・
情報を遮断されるのは、先が読めなくて恐怖を煽る。
縋れるものが自分に触れる相手の手だけになって、鋭敏になった木本の身体がぴくりと蒼太の指に反応する。
「蒼太・・・?」
「はい。・・・充さん。」
黄膚(きはだ)色の着物の前を割り、木本の胸に蒼太が熱い唇を寄せた。
かりと尖りに歯を立てるのも、拙いながら木本と同じ愛し方だった。
鎖骨の上にも、同じ痛みが降ってきたのに思わず苦笑する。
畳んだ布団に身を預け、身体の中心に跪いた蒼太の指と舌が滑らかに腋かを這うと、全身の産毛がそそけ立った。
赤子のように強く吸い付いた乳首にも、やがて歯が当てられた。
「充さん・・・、充さん・・・」
名を呼びながらずっと、なれない愛撫がゆっくりとぎこちなく円を描くように胸から腹へと滑る。
胡坐をかいた、木本の中心にやわとぎこちなく熱い唇が触れた。
吐息が首をもたげかけた器官の先端にふっと吹きかけられ、そこから何かが浸食する気がした。
こわばった震える指が、懸命に恋人を煽ろうとしている。
「足、もう少し広げてください。」
「こんなくたびれたおじさんのモノ弄ったって、美しくもなんとも無いぞ、蒼太。」
「裏っかわに、賞味期限切れシール付いてるかもな。」
愛撫に懸命な蒼太には、わざと揶揄する木本の声は聞こえていない風だった。
やわやわと蒼太の指が熱い何かで濡らされ、動きが滑らかになっていた。
軽く周辺に口付けを落としながら、蒼太は長い間木本の棹を愛おしんでいた。
「くっ・・・」
まさか触れないだろうと思いながら、つい自分の後孔に意識が行く。
慣れず迷う指に、意識が追い詰められているのが分かる。
「ここ、いいですか?感じますか?」
「ああ・・・」
蒼太は自分で感じる部分を思い起こしながら、時間をかけて双球と茎の裏側付近を丁寧に舌でなぞってゆく。
性急に煽られ、放出するだけの行為ではなく揺らめく炎の中で蒼太が求めたのは、恋人と情を交わすこと。
しばらく逡巡したような気配が漂い、木本が思わず蒼太・・・?と声をかけた瞬間、熱いたぎりに包み込まれた。
蒼太の口腔を感じ、木本の咽喉が喘いだ。
「蒼太・・・。無理するな。」
まるで自分の舌の動きを再現しているような気がする。
木本の決して小さくは無い全体が、深く熱い媚肉に似た奥に包まれてゆく。
最初に蒼太を抱いたとき、とことん追い詰めて、放つ瞬間木本は鞭を使った。
痛みと快感は同じものだと教えて、崩れて泣く蒼太に暗示をかけた。
「痛いの好きだよなぁ・・・蒼太。」
「いや・・・いや。違う・・・やめて・・・」
音だけで、余り痛みの無い鞭に精神を打ちのめされ泣き濡れた蒼太が、やっと顔を上げて聞いたのを覚えている。
余りに意外な言葉で、忘れられなかった。
「これが、愛・・?」
確かに蒼太は、そういった。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチも、励みになっています。
明日も、がんばります。 此花
この作品は、pioさま、chobonさま、けいったんさま、の美麗コラボ絵からインスピレーションを戴きました。
色気の滴るようなとても隠微で濃密で華麗な美麗絵です。pioさまのお宅undercooledさまでご覧になってください。[2]の悲願花です。otherを押して二段目から入ります。この二人の妖艶さにうっとり・・・と眺め入ってしまいます。完成された世界が、これ一枚に内包されています。綺麗です~・・・・駄文くっつけてしまって、それぞれのファンの方のなかにはイメージ台無しと怒る方も、きっといらっしゃると思います。いっそ、ぐ~で殴って。
「あの・・・。は、初めてだから・・・や、優しくしてね。』←ちょっと、可愛く言ってみたり(//▽//)・・・
『慕う事は儚い事だと瞳を閉ざされた』
『求めることは諦めることだと手足をもぎ取られた』
『愛することは虚しい事だと想いを踏み潰された』
切り取ってすみません。素敵詩の一部お借りいたしました、けいったんさまの詩に、強引に愛されていた頃のやるせない蒼太くんの溢れんばかりの心情がありました。
短い詩の中に、どれほどの想いが込められるかで詩の持つ重みが決まる気がします。
反語の使い方に、ため息が出ます。
ありがとうございました。
さすがに全部、持ってくる勇気が無かったです。駄文が目立つと悲しいですもん・・・・(´;ω;`)
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